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嘘はお見通し(ショートショート)【音声と文章】

山田ゆり
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「あ、違う、訂正しなきゃ」
「でも、ま、いっか。どうせバレないし。」



ここは歯科医院。

以前、かぶせた歯が取れてしまい、のり子はかかりつけ医に行った。

口のレントゲンを撮り、先生からのお話があった。
「今、飲んでいる薬はないですね?」
「取れたところはしみたりしないですね?」
先ほど記入した問診票を見ながら先生はテンポよく次々に聞いていく。

のり子は先生の「ですね?」にすぐに「はい!」と応える。
それは掛け合いのようなテンポだった。


問診票が終わり、「ナイトガードは毎日されてますね?」と聞かれた時も合いの手を打つかの如く「はい!」とつい、言ってしまった。

その瞬間、「あ、違う。最近、ナイトガードをしないことが多い。」と思った。
「でも、私がナイトガードをしているかどうかなんて、分かるわけないから、ま、いっか。」
のりこは1秒間の間にそう自分と対話した。


すると、先生は顔の構造の図を手に持ちのり子に見せながら説明を始めた。

「これは通常の人のあごの骨。ほら、ここが綺麗に丸くなっているでしょ?
そして、この山田さんのレントゲンを見ると、ここ、ここのカタチがとがっているでしょ?
これは顎に異常に力が加えられているからなんです。だから、寝る時はナイトガードをしっかり付けてくださいね。」


先生は事前にレントゲンを見て、私がナイトガードをつけないで寝ていることが分かっていたのに、毎日つけていますねと聞いてきたのである。

その時、つい、のり子は「はい」と言ってしまった。
すぐに訂正すれば良かったがつい、のり子は魔が差してしまった。
嘘を言ってもどうせバレないだろうと思ったからだ。


しかし、専門家には嘘がお見通しだった。


先生の説明が終わるまで、嘘をついてしまった自分が恥ずかしくて先生の説明が頭に入らなかった。
自分は平気で噓をつくとても嫌らしい人間だと思った。

嘘をつくつもりではなかったが、はずみで「はい」と応えてしまい、それをすぐに撤回しなかった自分が恥ずかし。

すぐに訂正すればいいものをつい、魔が差して知らんぷりしてしまった自分。
誠実そうなふりをして、平気で嘘をつく人だと思われたかもしれない。



嘘はやっぱりいけない。


それがバレてもバレなくても、自分の気持ちが晴れない。
間違った時は「間違いました」と言える勇気と素直さを持とう。



お会計の際、次回の予約を決める時、のり子は相手の話をきちんと聞いて、しっかり考えてからお応えをした。

はずみで間違った返事をしないように気を付けようとのり子は自分に言い聞かせた。











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嘘はお見通し(ショートショート)

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