画像1

死に顔に対する二つの思い【音声と文章】

山田ゆり
00:00 | 00:00
※note毎日連続投稿1515日をコミット中!
1439日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、どちらでも短い時間で楽しめます。





おはようございます。
山田ゆりです。


今回は
死に顔に対する二つの思い
をお伝えいたします。



3か月間の化学療法で顔はパンパンにふくれあがっていた。
はぁはぁと苦しそうに息をしていた。

何とかしてやりたかったが
私は「その時」を待つしかなかった。

やがて息が静かになり医師が近寄り
両手に持った機械を胸に当て電気ショックをかける。

バン!
身体ははじかれたように上下した。
そんな強い電源をあてたらかえって命を奪うのではないかと素人の私は思った。

もう一度電気ショックをかけた。
同じく体はその強いショックに反応したが心臓の線はすぐに直線になった。

「〇時〇分です。」
医師が腕時計を見ながら時間を告げた。


電気ショックをあてたことも
腕時計を見ながら時刻を告げたことも
ドラマで見るものと同じだった。


舞台は、今から33年前の病室。



終わった。
弟の3か月の闘病は終わった。
そして28歳1か月の弟の人生に幕が引かれた。

私は首に下げていたタオルに口を当てて声を殺して泣いた。

これまで私は病室では一度も涙を流さなかった。
泣かないと決めていた。

しかし、もうそれは要らない。
思いっきり泣いてもいい。

しかし私は声を殺して泣いた。



それまで、夜に廊下の行き来がざわざわしだし
その内に「ワーッ!」と泣き出す声を聞き
不安な夜を弟と何度も過ごしてきた。

あぁ、今日も誰かがお亡くなりになったのだ。
ご遺族の方の泣き声はしーんと静まりかけた真夜中の病室に
聞こうとしなくても聞こえてきていた。

そんな思いをいくつもの夜、経験していたから
弟が亡くなった時、声を出してはいけないと思い、
タオルに私の思いを受け止めてもらった。

弟への思いと入院されている皆様への心づかいがそうさせた。


その後、献体をされるかどうかを聞かれた。
そんなこと、亡くなってすぐに言われても私は答えられず、
信頼できる親戚の方に相談した。

そして、弟だったらどうしただろうかと考えた。
弟の献体で未来の医療が少しでも良い方向に向かうのだったらきっと弟も喜ぶだろう。
私は献体をすることを決断した。

一時間くらいだろうか。
やがて献体から弟は帰ってきた。

その時の弟の顔を見た私はショックだった。



野球で鍛え上げられた体はあの瞬間まで
薬の副作用で膨れ上がっていた。

しかし、献体が終わりキャスターに横たわっている弟の顔は、
元気なころの、シュッとした目鼻立ちがはっきりした顔になっていたから。

もしかして、まだ生きているのに
私は弟の体にメスを入れることを医師に許したのか。
心の中は騒めいた。


その後、弟の遺体は自宅に戻った。
布団に寝ている弟の顔は
元気だったころの顔だった。
3か月間闘病していた時のむくみは全くない。


私は弟が亡くなった悲しみもさることながら、
もしかして生きる可能性があった弟を
私の決断でそれを奪ってしまったのではないだろうかという罪悪感でいっぱいだった。



弟が不治の病で入院してから亡くなるまで
私は弟の病室に寝泊まりして弟と一緒に過ごした。

と、言えば美談に聞こえるが
私は献体から戻ってきた時のあの驚きは
もしかして弟の最期を私が決めてしまったのではないだろうかという罪悪感が当分の間付きまとった。




亡くなった方のお顔を一目見たい。
そのお気持ちでたくさんの方々が最後の姿を見にやってくる。

お顔を見ることができた人は
綺麗な顔に会えて安堵する。


死に顔は生きている人に
「最後にこんなきれいなお顔の姿に会えてよかった」と思わせてくれる。
私も以前はそうだった。


しかし、弟の時だけは
複雑な思いで弟の死に顔を見た。



綺麗だと思う気持ち。

もしかしてもっと生きられたのではないか、
その可能性を私が奪ったのではないだろうかという罪悪感。



何度も弟の顔を見る。
弟が答えてくれそうな気がした。


でも答えはでなかった。



いつもの愛おしい弟の姿がそこにあった。






今回は
死に顔に対する二つの思い
をお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。



◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。

私は愛されています
大きな愛で包まれています

失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています

.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+


◆◆無料メールマガジンはこちらから◆◆
http://yuuki2.com/l/u/Z4bGUPjaVPxU6Dk5

この記事が参加している募集

サポートありがとうございます💖サポートされたお金はプリンターのインク購入に使わせていただきます🤣60代ですが毎日noteを執筆中です😄素敵なnoterさんへ恩送りさせていただきます🎁kindle書籍も出版しています📚