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国際ブッカ―賞にノミネート:ノーベル文学賞に繋がるか?金井美恵子は?(令和6年3月29日付「日高新報」掲載ブックレビュー

割引あり

国際ブッカ―賞という文学賞をご存じだろうか。イギリスの文学賞である。選考の対象となるのは英語以外の言語で書かれて英語に翻訳された作品である。昨年ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセはノルウェー人の劇作家でこの賞を受賞した。つまり原作はノルウェー語というわけである。この賞を取るとノーベル文学賞の可能性が高いということだ。この国際ブッカ―賞に金井美恵子がノミネートされた。つまり、ノーベル賞も取る可能性が出てきたというわけだ。
 日本人作家でノーベル文学賞の可能性があるのは村上春樹はもちろん小川洋子、川上未映子、そして金井恵美子と云われる。
 今年1月、国際ブッカ―賞のまずロングリストが発表された。このロングリストは12,3名がノミネートされるのでロングの名が付く。さらにこの3月、ショートリスト5,6が発表され、5月に受賞者が決定。ショートリストに金井美恵子が入ったとはまだ発表されていないが、もし金井美恵子が国際ブッカ―賞を受賞したならノーベル賞を受賞する可能性も出てくる。
 金井美恵子にとってノーベル賞を取るのに有利な条件がある。それは文体である。ここ何年かのノーベル文学賞の特徴を見るとウイリアム・フォクナー的な文体の作家が多く受賞しているのである。フォクナー的文体とは何か。それは英語表記の小説なら、ページが英文字のブロックの塊として表現されていることである。つまり句点や改行がまったくなく延々と文章が続いている文体がフォクナー的文体なのだ。そこで、この「プラトン的恋愛」からそのフォクナー的文体を紹介してみたい。一部を抜粋する。
 -(本当の作者)に対して抱いていたわたしのひそやかなイメージは、無意識の自惚れと願望を反映して、前にも書いたように、美しいという形容詞をともなうものだったがそれがあまりふさわしくなかったことを知ってしまったからといって、(どうふさわしくないかということを細かく説明するのはわたしの趣味だはないばかりか、無作法というものだ)落胆した顔を見せるのは(本当の作者)に対して失礼というものではないだろうか。-
 ひとつの文章がこれほど長いのである。これを英訳すれば間違いなくブロックの塊になる。
 さて、本作品であるが、本文のところにも出てきた(本当の作者)という人物から手紙が作者に届くところから始まっている。
 -あなたの名前で発表された小説を書いたのはわたしです。-
 つまり手紙の送り主が(本当の作者)というわけである。

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