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和歌山県日高町の中尾秀樹です。元高校教師で在職中に直木賞作家藤本義一氏の文筆家養成所「…

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和歌山県日高町の中尾秀樹です。元高校教師で在職中に直木賞作家藤本義一氏の文筆家養成所「心斎橋大学」に通っていました。そこで「月に10冊は読むように」と云われて実践に努めています。詩心のある作家が好きです。今読んでいるのは塩田武士著「存在のすべてを」。よろしくお願いいたします。

最近の記事

エミリ・ブロンテ「嵐が丘」世界三大悲劇翻訳比較:「日高新報」令和6年4月19日付け掲載

「嵐が丘」は世界三大悲劇として有名な小説である。(他は「リア王」と「白鯨」)。 寒風吹き荒れる丘に建つ屋敷(嵐が丘)の主人に拾われた主人公のヒースクリフ。屋敷の娘キャサリンに恋い焦がれながらも若主人の虐待に耐え忍んできた。そこへ持ち込まれたキャサリンの結婚話。絶望のうちに屋敷を去るが、やがて大富豪となって復讐のために嵐が丘へ戻ってきたという話。 その名作が日本では昭和7年より翻訳されてきた。その数なんと14作品。海外物はその翻訳によりかなり差異が見られる。今回は世界文学史上も

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    • 「あなたのための短歌集」木下龍也著ブックレビュー:令和六年四月12日付「日高新報」掲載

       あなたは誰かのために何かをしたことがありますか?。またあなたは誰かからあなたのために何かをしてもらったことがありますか?。そしてそれは文学として。 ここにあるのは誰かのためにではなく、あなたのためだけに作られた短歌なのです。歌人の木下龍也が、全国から寄せられた読者からの手紙に応えた短歌集です。 その幾つかを紹介します。 「まっすぐ生きたい。それだけを願っているのに、なかなかできません。まっすぐ生きられる短歌をお願いします」  ー「まっすぐ」の文字のどれでもが持っているカーブ

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      • 国際ブッカ―賞にノミネート:ノーベル文学賞に繋がるか?金井美恵子は?(令和6年3月29日付「日高新報」掲載ブックレビュー

        国際ブッカ―賞という文学賞をご存じだろうか。イギリスの文学賞である。選考の対象となるのは英語以外の言語で書かれて英語に翻訳された作品である。昨年ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセはノルウェー人の劇作家でこの賞を受賞した。つまり原作はノルウェー語というわけである。この賞を取るとノーベル文学賞の可能性が高いということだ。この国際ブッカ―賞に金井美恵子がノミネートされた。つまり、ノーベル賞も取る可能性が出てきたというわけだ。  日本人作家でノーベル文学賞の可能性があるのは村上春

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        • 史上最高の投手サチェル・ペイジ「2000勝投手はこうして誕生した」佐山和夫著ブックレビュー・令和6年3月22日「日高新報」掲載

          野球において最も偉大なピッチャーは誰かと問われて、サチェル・ペイジと答えることができる人はかなりの大リーグ通である。2000勝もの勝ち星を上げノーヒット・ノーランも100回を超えている。この数字は大リーグだけのものではないが、戦前に存在した黒人リーグとオフシーズンに諸外国を回ったその合計数である。この勝ち星の理由は、黒人リーグでは、ほぼ毎日投げていたからである。しかも1日1試合とかではなく2試合の日もあれば3試合の日もあった。オフシーズンにはメキシコ、キューバ、ハイチ、ドミニ

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          妖気と魔性の世界・坂口安吾著「桜の森の満開の下」ブックレビュー(令和6年3月15日付「日高新報」掲載)

           花見という風習が世間に広まったのは、江戸時代以降のことである。  関西で花見の名所といえば吉野山や京都・円山公園が有名であるが、円山公園の枝垂れ桜は他の名所とは一線を画していると思える。というのは枝垂れ桜は昼間と夜とでは様相が一変するからである。夜に訪れると、そこには妖気が漂っているかのようだ。円山公園の枝垂れ桜のような桜の花の妖気と魔性の世界を描いたのが坂口安吾の「桜の森の満開の下」である。  内容をかいつまんで紹介する。  鈴鹿峠の山中に一人の山賊が住んでいた。旅人を襲

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          日本で核実験:衝撃の事実!「硫黄島上陸」酒井聡平著(令和6年3月8日付「日高新報」掲載)

          「硫黄島上陸・友軍ハ地下ニアリ」は衝撃の本である。そのブックレビューをここに紹介する。  硫黄島は東京から1200キロ離れた東京都小笠原村に属する無人島である。しかし戦前はこの島に1000人もの住民が住んでいた。現在は米軍と自衛隊の共同管理下に置かれている。ここは太平洋戦争時における激戦地の一つである。著者の酒井聡平氏の祖父は、この硫黄島の近くの父島で訣別の電報を受け取った通信兵であった。  その電報とは、  1945年3月17日午後5時50分。  「本戦闘ノ特色ハ 敵ハ地

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          傑作ミステリー「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン著・ブックレビュー(令和6年2月23日『日高新報』掲載)

          「九マイルは遠すぎる。まして雨の中ならなおさらだ」。 そういって安楽椅子探偵は座ったまま事件を解決した。 ふつう、人はどれくらいかかるのかと訊かれると、  「十マイルくらいかな、とか、二時間ぐらいかかるのかな」とか答えるものだ。九マイルというのは実際に本人が歩いたに違いない。しかも、これから向かうのではなく、こちらに向かって歩いて来たから正確に距離が分かったのだというのである。しかも、雨の中である。歩く理由もまたある。電車もバスもない。つまり、終電が終わって始発もまだ出ていな

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          「野球短歌」!,阪神版”サラダ記念日”ブックレビュー(令和6年2月16日付「日高新報」掲載)

          二月になっりプロ野球もキャンプが始まった。 ここに「サラダ記念日」の阪神タイガース版ともいうべき本がある。 一昨年のことである。阪神タイガースは開幕九連敗で始まった。 この本の書き出しの1ページ目は、 ー いつまでたっても阪神が勝たないから、短歌を作ることにしました。ー 著者はこれまで短歌を作ったことがなかったそうだ。 プロ野球の試合は年間143試合。著者はここから阪神タイガースの全試合について短歌を作っていった。阪神愛に溢れた「サラダ記念日」なのである。 阪神が連敗続きの

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          三百年の難問!「フェルマーの最終定理」多くの数学者が敗れたのは何故か?ブックレビュー(令和6年2月9日(金)「日高新報」掲載)

           受験シーズンである。そこで今回は数学の問題を提議してみようと思う。     その前に著者のサイモン・シンについて少し略歴を記しておこう。  インド系イギリス人としてイギリスの南西部サマーセット州に生まれた彼はケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学を学び博士号を取得する。しかし研究者の道へは進まずイギリスのテレビ局のテレビ局BBCに就職をした。BBCのスタッフとしてドキュメンタリー番組「フェルマーの最終定理ーホライズンシリーズ」を制作し放送することになった。この番組によりドキュ

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          糾弾!日高町教育委員会、藤原定家の歌碑の誤りを訂正せよ!!

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          糾弾!日高町教育委員会、神坂次郎著「藤原定家の熊野御幸」ブックレビュー

          熊野古道は世界遺産である。わたしは日高町在住であるが日高町には熊野古道が通っている。この熊野古道沿いに熊野王子神社がいくつか散在している。そのひとつである高家王子神社(内原王子神社ともいう)の境内に藤原定家の歌碑がある。その歌碑には、  萩原や   野辺より野辺にうつり行く  衣にしたう 露の月影 と彫られている。わたしはこの歌碑が気になり調べてみることにした。するとこの歌碑に刻まれている歌が誤りではないかということが分かってきたのである。日高町教育委員会建立とあり、問い合わ

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          ミステリー・時代物藤沢周平「秘太刀馬の骨」ブックレビュー

          ミステリーである。秘太刀馬の骨の遣い手は誰か? 時代物小説の第一人者としてこれまで「たそがれ清兵衛」、「蝉しぐれ」、「隠し剣孤影抄」、「三屋清左衛門残日録」等々の数々の名作を生み出してきた藤沢周平であるが、しかしこの作品が時代劇ミステリーだということは読者には分からない。 最後まで読んでみて、藤沢周平はミステリー作家であったのかと改めて思える作品なのである。 ミステリーの定番といえば殺人事件である。その殺人事件には巧妙なトリックや完全なアリバイ、偽装工作などがが繰り広げられ

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          ブックレビュー・ある俳人の孤独な晩年・吉村昭著「海も暮れきる」自由律俳句の尾崎放哉を描く(令和5年12月8日高新報に掲載)

          俳句というものは五・七・五という世界最小の定型詩であるとして多くの人に知られている。後、決まり事としてはこれに季語を入れるということ。最近では芸能人がこの俳句を作って優劣を競うというテレビ番組まである。  さて、この「海も暮れきる」である。これは小説のタイトルであるが、これを読んで、何かお気づきになることはないだろうか?。もし、あなたが「おや?」と思われたなら、あなたはかなり感性の鋭い、俳句作りに適した才能をお持ちの方かもしれない。  - 海も暮れきるー。  実はこれは俳句な

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          七万のファンと七万の死神:寺山修司著「馬敗れて草原あり」ブックレビュー(有馬記念編)

           シルクレーシング、キャロトファーム、サンデーレーシング、キャロットファーム、シルクレーシング、北島三郎、サトミホールディング、居城寿与え、サンデーレーシング。  さてあなたはこれらの書き出しからいったい何を想像するだろうか?。ヒントは六番目の北島三郎である。いわずと知れた演歌の大御所である。これは過去10年間の有馬記念の優勝馬の馬主の名前である。北島三郎は2017年の有馬記念に武豊を擁してキタサンブラックで勝っている。有馬記念の優勝賞金は5億円である。(これは毎年上がってい

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          七万のファンと七万の死神:寺山修司著「馬敗れて草原あり…

          追悼八代亜紀・85年直木賞受賞作「演歌の虫」山口洋子著

          日本を代表するJ-POPアーティスト・YOASOBIの「アイドル」が世界的大ヒットを続けている。日本の歌手としては他に例をみない異例のことである。日本の多くのアーティストがこれまで世界に挑み続けてきたがいずれも失敗している。宇多田ヒカル・UTADAとして、矢沢永吉EIKITI・YAZAWAとして。  今や日本の音楽はJ-POPを通して席捲している。  しかし、昭和の時代、J-POPではなく歌謡曲・流行歌といわれるジャンルがあった。その中には演歌と呼ばれるものもあった。今もある

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          追悼八代亜紀・85年直木賞受賞作「演歌の虫」山口洋子著

          「三陸海岸大津波」吉村昭著ブックレビュー

          令和五年一月一日に起こった能登半島地震は北陸三県を中心に甚大な被害をもたらしている。特に石川県ではいまだに被害の全容さえ掴めない状況う。また道路の寸断による孤立集落も多数存在している。救助も救援物資も届かぬ状況となっている。命の限界といわれる七十二時間を過ぎてもなお行方不明者が多数存在している状況である。  日高新報社の社説「日高春秋」でも(里)氏や(片)氏の悲痛な叫びが綴られていた。  そこで紹介するのは吉村昭著「三陸海岸大津波」である。  本文の一部を紹介する。  -私は

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          「三陸海岸大津波」吉村昭著ブックレビュー