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上流フェーズにおけるUIデザイナーの価値を改めて考える

※この投稿はGoodpatch Design Advent Calendar 2023の24日目の投稿です。他の記事もぜひご覧ください!

こんにちは!
GoodpatchのSTUDIO BOLDでUI/UXデザイナーをしていますサトウトモキです。
STUDIO BOLDはGoodpatchのクライアントワーク部門の一つで事業変革やイノベーション創出の支援に特化した新組織です。
事業の構想を描いたり、価値探索からのアイディエーション等のイノベーション創出を目指すプロジェクトや、事業のピボットやリブランディングなどの事業変革を目指すプロジェクトに多く携わらせていただいています。

このような事業の中で構想を描き、形にしていくような比較的上流工程に関わることが多いスタジオにおいてUIデザイナーが担う役割を本記事でご紹介します。


結論

デジタルプロダクトにまつわるの事業の上流フェーズにおいて、UIデザイナーが参画する意義はプロトタイピングを行えることが第一にあげられます。プロトタイピングを行うメリットに関しては、広く語られていて

  • ユーザー検証によってフィードバックの収集と改善ができる

  • 可視化によって開発チーム内外のコミュニケーションが促進される

などがあげられると思いますが、今回はまた別の視点から企画段階におけるUIの具体化の意義をお伝えできればと思います。

上流工程にUIデザイナーが参画し、プロトタイピングを行う意義を改めて考えるとサービスのルールと表現を具体化しながら同時に検討できることが大きいと考えています。

便宜上本記事ではサービスルールという言葉を使用しますが。まずその定義について説明します。

サービスルールとは

この記事においての「サービスルール」という言葉がさしている概念について説明したいと思います。
まずサービスとはなんでしょうか。

ユーザーのゴールの達成を助けることを目的とする無形の提供物と定義します。
「無形の提供物」とは、ユーザーのゴールの達成をアシストする営みそのものを指すと思います。ユーザーが単独で達成できるものならサービスを利用する必要がないので、ユーザーは第三者のアシストを求めてサービスを採用します。そのためサービスにはユーザーとそれを助ける第三者とのやり取り(広義でのインタラクション)が発生し、サービスデザインにおいてはそれを再現できるように型化すること捉えられます。
少し難しくしてしまいましたが、要点としてはサービスデザインはやり取りの型を定めることを含むということです。

そしておもにデジタルプロダクトでそれを検討する流れとしては、まずユーザーのゴールを定め、そこにユーザーを導くためのインタラクションがどうあるべきかを検討していくという流れになります。

提供価値からそれをどのようにUIに表現するべきかを検討するためのステップとしては以下のものがあると考えています。

提供価値:ユーザーのどのようなゴールが達成されるべきか

提供機能:ユーザーゴールの達成のためにどのような機能が提供されるべきか

サービスルール:機能はどのようなルールで実装されるべきか(その機能の条件、制約は?)

UI:どのように表現されるべきか


そして、提供価値や提供機能を定めることはもちろん検討の重要なステップですが、特に成熟した市場などにおいては、サービスルールで体験に差別化を図らないといけない傾向が強くなると思っています。

例1)
フリマアプリやオークションサービス

提供価値:個人間での物品の売買を容易にし、中古品の再利用を促進すること

上記は一定共通している部分と捉えることができると思います。

差分が現れるのはサービスルールの方になるかと思います。

・出品者がどのように値段をつけられるか
・購買者の入札できる条件、
・購買後のやりとり内での制約

例2)
マッチングアプリ

提供価値:個人間の出会いと繋がりを容易にし人々を結びつけること
同じく上記はさまざまなサービスで一定共通している部分になるかと思います。

しかし、マッチングアプリではサービスのルールで差別化をする傾向が進んでいます。

・他の利用者を探す時に開示される情報量(探すというアクションへの制約)
・マッチするための条件(利用者同士のどのようなアクションを条件にするか)
・利用者同士のどのようなやりとり内での制約(誰から会話を始めるか等)

こうのようにサービスルールで差別化を図らないといけない場合に、事業の上流フェーズにおいてもサービスルールをどこまで作り込めるかがカギになると考えています。


上流フェーズの難しさ


上流フェーズにおいて重視しないといけないことはなんでしょうか?
私はサービスの軸を作ることだと考えています。どういったサービスであるべきなのか、どのように伸ばしていくのかに関して、開発者の中でぶれない軸をつくることです。

ここで、提供価値の言語化、機能のリストアップなどが軸を作ることだと思われるかもしれません。しかし、前述した通り、サービスルールが差別化の鍵となるのであれば、サービスルールに関してのぶれない軸も必要です。

そのため、ぶれない軸を作るために抽象度の高いステートメントだけでなく、適度に具体に踏み込んで可視化することが必要です。

しかし、上流フェーズにおいてサービスルールを十分に時間を割いて検討することは難しい現状があります。
その理由はなんでしょうか?

1️⃣ 何を上流におき何を下流で検討すべきかの切り分けが難しいから

やはり、事業を検討する上で提供価値や機能のレベルのことを固めることを重視してしまい、サービスルールや表現の検討の優先度が下がることがあります。

各論は後にしましょうというのは一般的には正しいですが、サービスの軸となりえる各論もあるのが難しいところです。

サービスのルールとして決めないといけないものは無限にありますし、チェックリスト的にMECEに埋めていくことができないのが難しいところです。(少なくとも私が知る限りではないと思っています)


2️⃣ 検討すべきサービスルールの優先度に関する一般論が存在しないから

どんなルールが重要で上流フェーズにおいて検討に値するのか、ここに関して一般論がなく演繹的にあたりをつけることはできません。

サービスルールを定めるための助けになるようなフレームワークとしてカスタマージャーニーマップやサービスブループリントなどがありますが、これらのフレームワークは流れを一覧的に捉えることには適していますが、本当に重要なところがどこか見えてこないことがあるのです。

結局何が重要かはユーザーが何を重要だと考えるのかということでのみ判断されるものなので、ユーザー視点で流れをみて重みをつけたところを帰納的に発見していくしかありません。


サービスルールの具体化にUIのプロトタイプが適している理由

ユーザーがサービスに触れる際のタッチポイントとしてどのようなものを目にするのか、実際の形を見て実体験するためにはやはりプロトタイプという成果物は重要です

なぜなら

1️⃣ 誰でもわかるフォーマットだから(開発チーム外向け)


サービスブループリントとは異なりユーザーでも、プロダクト開発に精通していない人含め誰でも理解ができるものだから、フィードバックの収集に適している

2️⃣ ユーザー視点で流れを確認できるから(開発チーム内向け)


サービスブループリントなどに現れる項目は実際に体験する時に感じる重みと乖離していることがあります。SBP上では3ステップで表されているものが、ユーザーの認識の中では1ステップとしか認識されていなかったり、その逆もあり得ます。実際に利用者が見るフォーマットで擬似体験することで、利用者がどのようなサービスルールを重視するのかがイメージしやすくなります。


サービスのルールの検討と表現の具体化を同時に進行


ではプロトタイピングをどのようにプロジェクトに取り入れるのがいいでしょうか?
前述した通り、サービスルールをどこから決めていくべきかの判断は非常に難しく、プロトタイピングはその判断のインプットになると思っています。

なのでルールを決めてから表現を検討しましょうではなく、表現とルールはセットで検討しましょうと主張したいです。どのように表現されるべきかを検討せずにルールが決まっていくことを避けられるからです。

稀に表現の具体化を挟まないでCJMやサービスブループリントでサービスルールを決め切ってしまうことがありますが、これは悪手だと考えています。

STUDIO BOLDで行うプロジェクトではUIデザイナーがプロトタイプを作る過程でサービスルールまで(ある意味独断的に)仮決めしてプロトを先に作ってしまうことがあります。

どのようなサービスルールが論点になるのかが事前に明らかにできますし、合意をもとにしていないのでこのルールを叩きにして議論が開始できます。
第一弾のプロトタイプの時点でサービスルールが合意されている必要はなく、まず実現可能なルールで作られたプロトをもとに、議論が開始できればいいのです。

上流フェーズにおけるUIデザイナーが関与するメリット

UIに落としてみるとどうしても不自然だったり理にかなっていないようなサービスルールは多々あります。
僕も以前より開発に近いフェーズでデザインしていた時に、なぜこのような無理のあるサービスルールで企画が降りてきてしまったんだろうと疑問を持ったことが何度もあります

スマートフォンやPC等のディスプレイサイズで表現できることはやはり限界があります。もちろんデザイナーの工夫によって可能性が広がる部分はあるが、そもそものルールの設計の段階から表現に無理のないサービスルールになるようにするのが確実にプロダクトのクオリティを上げます。
UIデザイナーが上流フェーズに関わることは、ソフトウェアの専門家の観点をもってサービスルール作りに関与できることが大きな価値です。


最後までお読みいただきありがとうございました!

事業の上流フェーズにおいて、サービスルールをしっかりと考えたい方はぜひGoodpatchおよびSTUDIO BOLDにご相談ください!


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