『STEINS;GATE』『魔法少女まどか☆マギカ』『恋はデジャ・ブ』『ミッション：8ミニッツ』などなど、いわゆる「ループもの」が大好きだ。同じ日を繰り返し、蓄積した記憶と経験で少しずつゴールへ近づいていく。いわゆるTVゲームを遊ぶ感覚に近いのだが、トライ＆エラーを繰り返しやっと成功したときの快感は、ゲームでも映像作品でも最高のエクスタシーだ。では、そんなループものがホラーと悪魔合体したらどうなるか…答えは「劇場で爆笑しながら泣く」である。

アタシはツリー。女子大生。シケてる同居人と面倒くさい寮の規則やイケてない男に囲まれて毎日うんざり。今日は誕生日だってのに、良くないことばかり起こるの。極めつけは、ヘンなマスクをした変態に殺されたこと。なんで憶えてるかって？それは今日9月18日を何度も繰り返しているから。アタシは何度も殺されて、その度に知らない男の部屋のベッドで目覚めるの。サイテーでしょ？？だから決めたの、顔も見えないヤツに殺されてたまるか、仕返ししてやるんだ、って。だから今日も容疑者リストに載ってるビッチを見張ってるんだけど…コイツじゃない。残念ハズれ。私はまた殺されて、地獄の気分であのベッドで目覚めるってワケ。ホラ、あいつがやってきた。アンタは知らないだろうけど、ナイフで刺されるのってマジ最悪だから。血は止まんないし吐き気するしでさ。ホント、次は上手くいくといいんだけど。
（メールはここで止まっている）

　本作を理解いただくには、こなれてないギャル文体（はじめてかいた）（努力は認めて欲しい）（ギャル文字メーカー使ったら解読不可能になった）のあらすじよりも、この予告編を観ていただいた方が早い。要するに殺人鬼から逃げ回る『オール・ユー・ニード・イズ・キル』だ。繰り返し殺されるのがトム・クルーズではなく女子大生になっただけだ。つまり面白さが保証されているタイプの作品であり、これ以上読む必要はないので今すぐ劇場に行ってほしい。館数も回数も少ないんだ、急いでくれ。

　もう少し話を続ける。この作品の面白いポイントは、「ループ」をホラーに持ち込んだことで生まれる、いつしか追われる恐怖が追い詰める快感に変わるその瞬間にある。誕生日に謎のマスクを着けた何者かに殺され、その度に同じ一日を繰り返す主人公ツリーは、生き延びるためにあらゆる手段を講じる。帰り道を変えたり、外出を控え女子寮の部屋に閉じこもったりするうちに、周囲の人物の行動も変化していく。いわゆるバタフライエフェクトの要領で、少しの介入で大きく変わる歴史を頭の中で何度も検証しながら、生き延びる術を模索していく。

　だが、度重なる死はツリーの体と心を消耗させていく。それでヤケクソになったのか、ツリーも常軌を逸した行動を取りはじめ、それでも殺されては甦るまでをポップな音楽に載せて、文字通り「DIEジェスト」にてお届けする本作の作り手は、明らかに殺人のループを楽しんでいる。あまりに軽薄かつ不謹慎なその勢いに、もはやこちらも笑うしかないのだ。本作には目を背けたくなるような残酷描写はなく、むしろバリエーション豊かに殺されるという意味では『ファイナル・ディスティネーション』シリーズを思わせ、終始笑顔が止まらない。百聞は一見にしかず、この奇妙な笑いはぜひ大勢の観客と共有してほしい。

　ここまでは笑いのターンだが、映画を観ていく内に観客の中には、「どうかツリーには生き延びて欲しい」という気持ちが芽生えてくるのだ。このツリーという女、下品な言葉で恐縮だがハッキリと「ビッチ」であり、決して褒められたものではない。朝目覚めるのは名前も知らない男の部屋のベッドで、泥酔して昨夜のことは憶えておらず、イケてないヤツを見下し人の不幸を笑う。しかも大学の教授とは単位優遇のために不倫しており、性悪のダブル役満のような女なのだ。父親とのランチの予約もドタキャンし、ルームメイトのバースデーケーキを捨てるような、いっそ殺された方が清々するようなクズ。

　そんなツリーも、死を繰り返すことで変化が生まれていく。同じ一日を繰り返すことで普段は気づかなかった、見えない景色や人の心に思い当り、少しずつ彼女の中に想いやりが芽生えていく。血みどろのスラッシャームービーだった本作は、幸か不幸か死を繰り返し自らの行いを省みる、ツリーの自分探しムービーへと変貌を遂げていく。クライマックス、ツリーがどのような人物へと成長したかは、冒頭と比べれば天と地の差がある。その落差に、思わず落涙してしまったのだ。

#時をかけるゲス美女 の逃走＆犯人とのガチバトルはサイコーにアガるし、犯人にまつわるタネ明かしもサプライズ満点。日ごろ恨みを買うことの多い人は背筋が凍るような、「人の振り見て我が振り直せ」がピッタリな教訓ムービー。なんと本国では今年公開されたばかりの続編『ハッピー・デス・デイ 2U』が7月から公開されることもあり、今観ておくべき一作なのは間違いない。というか、続編ってどんな話するの…？また殺されるの…？？色んな意味で目が離せない、掘り出し物の一作をお見逃しなく。

続編もよろしくね