砂糖菓子の箱庭と哀嘆のきくらげ


友人の話。「趣味がない」と彼女は悩んでいた。
私は趣味というのはとても幅広いと考えていて、例えば読書であれば本の虫で月に何冊も読む、という人もいれば仕事の合間に少ししか読まない、と言う人もいると思っていて、つまるところ「読書家」を名乗るのは本人の自由だ、ということを考えた。
彼女がインスタグラムのストーリーに投稿するカフェで食べたであろうパフェの数々はとても「彼女」そのものを投影して顕しているようでとてもかわいらしい。「甘いものを食べているだけで趣味でない」と悩んでいたが、それは全く違うと私は思う。私はお菓子の箱庭が流れてくるのを眺めている。その度に「彼女の箱庭だ」と思って癒される。ありがとね。

趣味、といえば私は昔はガチャガチャ蒐集家を名乗っていた。リアルに造形されたきのこのガチャガチャのハンドルを友人と一緒に回した時、出てきたのは真っ黒なゴムボールのような物体だった。唖然とする友人。何だこれは、と嘲笑を浮かべる私。説明書を読むと「きくらげ」であることがわかった。友人は真黒な物体を手に握り締め、卓上に勢いよく落として撥ねさせてみた。なんだこれは。なんだこれは。謎の祭囃子の音が聴こえる。私は跳ねてきたそれをレシーブで友人の元へと撥ね返す。なんじゃこりゃなんじゃこりゃ。真黒な物体は数回私たちの間を往復した後最後の「なんじゃこりゃ」の後にゴミ箱へと堕ちた。刹那にして祭囃子は終わった。シークレットモードだったらしいのだけど、あんなものはいりません。哀嘆のきくらげ。

最近はく◯寿司でびっくらぽんのガチャガチャを回して、シークレットモードを引き当てた。(またもや!)黄色く丸っこいフォルムの猫に髭がちょび、と生えていて遊び方が書いてあった。これも跳ねさせるタイプのガチャガチャらしい。よくわからないので、隣にいた母にあげた。喜んでいた。ガチャガチャ商戦、撥ねるの別に需要ありません。

2022/05/10

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