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徒然に読書メモ

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本の感想に主眼を置いた投稿をまとめています、何らかのきっかけになれば、望外の喜びです。
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いろいろ悩みましたが、、【 #愛読書で自己紹介 】

 新年に入りふと思い立ち、少し前から note を始めているのですが、読書系の記事を辿っているうち、面白そうな企画「#愛読書で自己紹介」を拝見したので便乗させていただこうかな、と。 正直、3人・3冊に絞り込むのはどうにも悩ましかったのですが、、今回はこちらの3作品にしてみました。 『桜宵』(北森鴻)  三軒茶屋の路地裏に静かにたたずむ「香菜里屋」というバーを舞台とした連作短編集です。中でも特に印象に残っているのが「桜宵」の一編、「御衣黄」と呼ばれる、その名が示すように「

【読書メモ】『阪急電車』(著:有川浩)

そういや今年は阪神競馬場が改修中だったなぁ、、(JRA職員の)家内が「今年は京都出張が増えそう」なんてぼやいてたなぁ、とか考えながら思い出したのが『阪急電車』との一冊、個人的には大好物の連作短編系。 片道15分の関西ローカル線を舞台とした連作短編集となります。その沿線に住む人々の、日常の重なりを有川さんらしく、テンポよく。 登場する人々も魅力的ですが、主役は題名通りに阪急電車(今津線)となるのでしょうか。往復で半年のタイムラグを設けているのも絶妙で、一気にほっこりと読めて

【読書メモ】『夜市』(著:恒川光太郎)

5月も半ば、とはいえ、春はどこに行ったのかという位の暑さになっていて、はやくも熱中症の心配をしていたりも(6月からは職場でも公共向け避暑スペースの提供も始まります)。 一昔前は、怪談話で涼をとるなんてのもよく聞きましたが、最近はどうなんだろうなぁ、なんて考えながら思い出したのが『夜市』との物語、表紙の金魚がなんとも印象的な一冊となります。 題名が示す通りに、舞台は秋祭りの雰囲気に包まれる夜の市なのですが、一つかわっているのは、その市が開かれるのは、現世ではない異世界、幽世

【読書メモ】『旅屋おかえり』(著:原田マハ)

確か最初は、図書館で出会った原田マハさんによる「旅」を題材にした一冊、以前にご紹介させていただいた『楽園のカンヴァス』とはまた少し違った雰囲気の物語となります。 主人公は、ひたすらに旅好きな「丘えり」という“元”アイドル、所属事務所も零細でブレイクの気配が欠片もない彼女、、旅を題材にしたレギュラー番組でどうにか食いつないでいたのですが、その唯一のレギュラー番組が打ち切られたところから物語が始まります。 困りに困った上に始めたのが「旅屋」というサービス。一言でいえば、依頼者

【読書メモ】『雪沼とその周辺』(著:堀江敏幸)

趣味というより(病)癖な気もしますが、昔から出張なり旅行なりで遠出をすると、ついつい現地の絵葉書をお土産代わりに買い求めていました。最近では出張の機会は減っているものの、旅行の他、博物館や美術館などを訪れた時にもつい、手を伸ばしてしまうのは相変わらずです。 セットを買う時もあればバラを組み合わせる時もあり、意外とたまっていて、それらをたまに眺めるのも楽しみの一つなのですが、眺めながら想いを馳せるのは写真だけではなく、その切り取られたフレームの外側の風景などにも、だったりしま

【読書メモ】『汽車通学』(著:矢野直美)

春、雪解けの風と穏やかな菜の花の色彩。 夏、透き通る青空と往く夏を惜しむかのような夕焼け。 秋、秋晴れに映える穂と凛とした音が響きそうな宵闇。 冬、雪の冷たさと雪明りの暖かさが導く道筋。 そんな北海道の四季を背景に、汽車で通学する学生たちの日常を追いかけた一冊。自分は自転車通学でしたが、放課後のどこか甘い空気は共通なのでしょうか、、なんて、少し前に高校時代の部活の友人たちと会ったからか、久々に思い出しました。

【読書メモ】『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(著:福島香織)

今の職場でも、だいぶコロナ禍(武漢肺炎)の制約等が緩和されてきました。ゆっくりとではありますが一つ一つ進んでいるかな、、とは言え、元凶を忘れてはいけないよなぁ、なんて『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』の背表紙を眺めながら。 著者は福島香織さん、元産経新聞の記者さんで、大陸ウォッチャーとして、真摯に、時にコミカルに共産中国とその周辺、台湾、香港などの国々の状況も伝えてくださっている方です。 との警鐘を鳴らされたうえで、根底では、、 との想いを持たれていて、

【読書メモ】『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(著:マーティン・ファクラー)

前年よりも順位を下げて70位、14年前の12位から考えると急落もいいところですが、、その割に好き放題に、特に政権与党でもある自民党に対しては罵倒クラスの報道が繰り返されているとの実態との乖離を感じますが、どうもからくりがあるようです。 「X(旧:Twitter)」でもフォローさせていただいている「Nathan(ねーさん)(@Nathankirinoha)」さんのブログからの引用となりますが、日本のオールドメディア群がひた隠しにする「記者クラブ、クロスオーナーシップ」がランキ

【読書メモ】『医学生』(著:南木佳士)

大学生の時にもっと勉強しておけば、とたまに思います。どの分野でと言われるとなかなかすぐには出てきませんが、社会に出てから15年以上経ってから「図書館司書」を通信課程で学んだこととかを考えると、「生涯学習」の分野には少なからず興味はあるのだろうなぁ、と我ながらに。 さて、息子も大学生になって早一ヶ月、多少は落ち着いたのか車の免許もなんてことを考え始めているようです。今はまだ一般教養レベルで専門科目はそう多くないでしょうけど、カリキュラムの科目名など見ると、楽しそうだなぁ、(息

【読書メモ】『知の逆転』(著:ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソン / 編:吉成真由美)

ここ最近、いわゆる知識階級(知識人)に属する方々(学者、研究者)の色合が分かれてきているなぁ、と思うことが増えてきました。政治信条の違いはあまり気にしませんが、「結論ありきで根拠を示さない」のを知識人の枠組みには入れられないよなぁ、等々、伊藤先生の「学士までなら材料集めて整理すればよいけど、修士以上は疑問を持って検証しないと」との言い回しを拝聴しながら思い出したのが『知の逆転』との一冊。 余談ですが、最近は「曲学阿世の徒」なんて言い回しはしなくなってるんですかね。少し前に論

【読書メモ】『本は10冊同時に読め!』(著:成毛眞)

少し前に知った「子どもの読書活動の推進に関する法律」では「4月23日が 子ども読書の日」と定められていて、公的機関はその趣旨に沿った事業をせよ、とまで書かれているようです。そういえば、息子の小学校では「ビブリオバトル」をやっていた覚えがありますが、時期的にはこのあたりだったかなぁ、、その頃子どもたちの間で流行っていた『青鬼』シリーズを取り上げたとか聞いたのは何となく覚えています。 また地元の図書館では何かしている(た)のだろうか、気づかなかったなぁ、こどもの読書週間の期間中

【読書メモ】『日本国憲法はどう生まれたか? 原典から読み解く日米交渉の舞台裏』(著:青木高夫)

本日(令和6年5月3日)は憲法記念日、岸田政権下での憲法改正発議も現実味を帯びてきている昨今、もう一声、国民からのプッシュも必要だなぁ、なんて、江崎先生の論考も拝読しながら。 私自身、法(ルール)は時代時代にあわせて変えていくべきと思いますし、日本人として大事にしたい原理(プリンシプル)を維持できるのであれば、自然と解釈も含めて変わっていくものでもあろうと考えています。なお、ここでいうプリンシプルは「国体」や「国柄」との言葉でも表現できると、個人的には。 まぁ、今の自分の

【読書メモ】『舞姫・うたかたの記―他3篇』(著:森鴎外)

森鴎外の自伝的な小説とも言われている一編となります。実際には、身近な友人と自身の経験をない交ぜにしたもののようで、「うたかたの記」や「文づかひ」ともあわせて三部作的な位置付けとも言われてるのでしょうか。 相変わらずに美しく流れる文体も堪能しましたが、内容も当時の状況を敷衍しているかのようで何気に興味深く、「誰」に感情移入するかで読み解き方は変わるのかなと感じたのを覚えています。 さて、主な登場人物はこちらの3人。  主人公:太田豊太郎  踊り子:エリス  友人:相沢謙吉

【読書メモ】『「常識」としての保守主義』(著:櫻田淳)

さて先日、三カ所で行われた衆院選の補選(東京15区、島根1区、長崎3区)の結果が出て、立憲共産、、もとい、立憲民主党が3議席増やしたようです。興味深いのが、左右問わずに「政権交代への兆し」、「人民の勝利」、「自民全敗」とか、とにかく岸田政権を貶めたいのであろうなぁ、との思惑を隠さない点。 ただ、自民党が候補者を立てれなかった時点で不戦敗だったのは確かですが「自民3連敗」とのフレーズはさすがに違和感です。それが「左翼(パヨク)」からならまだしも、今まで保守を自称?してきたとこ