せかい
ーみなさま、全人類の皆様。我々は、ついに作り上げました。ー
ー何をかとお思いの方もいらっしゃると思いの方も沢山おられるかとー
ーエデン、天国、極楽、ヴァルハラ、桃源郷....つまり我々は、「世界」を造り上げましたー
こんな広告が流れだして、幾年経ったことだろう。彼の会社が生み出した「世界」は随分と普及したようだ。
最初の頃は、富裕層の道楽の為に生み出された「世界」は、人間の脳派や生態感覚をそのまま仮想空間である「世界」に移し生活を送れるというものだった。
富裕層や、知識層にしか最初こそ受け入れられなかった「世界」は、ホスピタリティあふれる商売上手な人間たちによって、寝たきりの病人や手遅れの老人たちのユートピアのように売り出された。
「世界」では、食事をする必要もない。病気になることも無い。老いることも。若返ることも。死ぬことも無い。
美しく快適な世界が広がっている。サービスが段階を踏んで拡大されるにつれ、若者たちの中には金をつんで「世界」へと移住する人間も増えた。先のわからない死後の世界にかけるよりも、愛するものたちと永遠を過ごせる世界を選び始めたのだ。
労働することも、将来に震えることも、愛する人を失うこともない世界。
いつしか、街で人を見かけなくなった気がする。だれにも会うこともなく、見られることのないこの日記に果たして意味があるのかはわからない。
わたしも、そろそろ友人たちのもとへ行こうか。死が人を美しく輝かせるとは言うが、ならば我々は鈍色をしているのだろうか。
さて、これでこの日記も終わりだ。ひとつだけ気になることは、「世界」が終わった先の我々はどこへいくのだろうか。聞く人間も今ではいないか。
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「おかーさん!!なんかおちてた!なーにこれ??」
「わからないはね、おばあさんならわかるかもしれないけど」
「そっかー…にしても、ここすごいね!!木より大きいものが沢山ある!これみんな、昔の人が作ったんでしょ??」
「そうよ、どうやって作ったのか、おばあさんにも分からないそうよ。」
「へぇ~おばさんでもわからないのかぁ、でもなんでみんないなくなっちゃたのかな?」
「昔の人たちは光を使って生活していて、あるとき光の世界に連れてかれてしまったらしいわよ」
「私たちの先祖は光の世界を避けて山でずうと暮らしてたからかしらね、だれもその世界をわからないのよ。」
「ふ~ん...おかあさん!!今日の銀色の奴にはなにがはいってるのかな!!」
「そうねぇ。。。これから、わかりやく印でもつけるようにしましょうか」
「それがいいよ!今日のご飯はなにかなあ」
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