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ここから⇒人生の広場"ぼくの読書法"

あなたが本を読む人だとして、普段どのように本と付き合っているのだろう? ぼくは先日本棚を整理していて、それで改めて気がついた–––自分の持っている本の1/3はとりあえず買っただけでまだ読んでいない、ということに。今回は恥ずかしながらぼくの読書遍歴と読書法について、です。(約2400字)

本を読むスピードは人それぞれ

まず最初に言っておかなければならないのは、ぼくはいわゆる読書家ではないということだ。一日一冊とか週に何冊とかいうペースで本を読むことはまずない。一冊読むのにかなり時間を掛ける方だし、それがいい本だったらしばらく余韻に浸りたいので次の本に取り掛かるまで少し間を空ける。

これまでいわゆる本の虫のような人にも出会って来たけれど、彼らと比べるととてもぼくは読書家だなんて言えない。
本当はもっとたくさん読めればいいのだけれど、歩くスピードや歩き方が人それぞれなのと同じで、読むスピードも読み方も人それぞれだ。
トレーニングして速くなろうとしても、結局は自分の出来る範疇で読んでいくしかないということは変わらない。

買った本はすべて読まなければいけないのか?

さて、ぼくはかつて買った本はすべて読まなければならない、と思っていた。
かつてというのは、大体中学生から大学生くらいまでである。
そのときのぼくは

「読まない本に意味なんてない。買っただけで読まなけりゃ金の無駄だ。だから買った本をきちんと読み終わるまでは、次の本を買ってはいけない」

という自分ルールを設けていた。
誰かに厳しくムチを持ってそう教え込まれた、という記憶はないのでたぶん自分でそれが「本と付き合う上での理想像」だと思い込んでいたのだろう。ぼくはわりあい生真面目なのである。

しかし実際にこのルールを忠実に守るのは難しい。
買ったはいいものの、途中で期待したほど面白くなくて辞めたくなるときは当然ある。翻訳もので訳が合わなくて読むのがしんどい、忙しくて放置していたらあらすじを忘れてしまった、といったことももちろんある。義務感に駆られて背伸びして買った本は、読み始めたら案の定難しくてぜんぜん理解できなかった、ということだってしょっちゅうあった。

結論から言うとそのルールは何の役にも立たず、自分の首を締めるだけで良いことなんて何もなかった。そもそも楽しみのために本を読むのに、そんなことで自分を縛っていてもひとつも楽しくない。
そしてそれはやがて、ぼくと本との関係に大きく水を差すことになる。

そしてぼくは読書から遠ざかった

一冊の本を読了できなかったという挫折感。
それは後悔の念にも似て、「ぼくは自分が読みたくて買った本すら満足に読み通すことができないんだ」という劣等感を生んだ。
まだ読み終えてない本が目に入るたびに心が痛んだし、それを放っておいて他の本を読んでいると何だか浮気しているみたいで罪悪感すら感じた。なんせ生真面目なのである。

そして社会人になって忙しくなってきたこともあって、ぼくはしばらく読書から遠ざかることになった。

本から遠ざかっていた時期は漫画ばかり読んでいた。漫画の素晴らしいところは、まず読了できないということがないところである。仕事で忙しくて心の余裕がなかった時期は漫画しか読めず、アニメしか見れなかった。そういう時期は大体5年ほど続いた。

そんな時期からどのようにしてまた読書するという習慣が戻ってきたのか、はっきりとしたきっかけはなかったように思う。
ただ徐々に本のことが恋しくなってきた。そして昔読んだ本を読み直したり、買っただけで読まずに放置されていた本を手にとった。
そうしているうちに、「やっぱり本っていいよな。放っておいても文句言わないし中身は古くならないし。本を読まない生活よりは、読む生活の方がいいよな」と改めて思うようになってきたのだった。

読みたい本は買っておこう

それから読みたい本は買っておくことにした。読むスピードより買うスピードの方が早ければ、もちろん本は溜まる一方になる。

だけどそれでも構わなかった。そのうちに、自分が以前持っていた考え方はまったく間違っていたということに気がついた。

本なんて、読まなくてもよかったのである。
手元に置いておくだけでよかったのだ。

買っておいた本を、とりあえず本棚に並べておく。
それだけで人生は豊かになる。
なぜかと言うと、そうしておくと「その本を読むべき時期」が来たら本の方から教えてくれるからだ。ふと本棚を見た時、その本だけにスポットライトが当たっているように感じることがある。
あれれ、と手にとってみる。
それでページを少し捲ってみるとわかる。
今がこの本を読むのに最良のタイミングで、
この時のためにこの本を買っておいたんだ、ということが。

そういうとき、それをしっかりと仕込んでおいた自分がちょっとだけ誇らしく感じられる。

本との、本当の付き合い

そうした考えに至った現在、ぼくの本棚にはまだ読んでいない本がたくさん並んでいる。感覚的には、大体1/3くらいはまだ読んでいないんじゃないだろうか。
だけどそれでもいい。
それに、一冊の本を読み通せなくても何の問題もない。
その本に一旦栞を挟んで、次の本を開けばいいのだ。

やってみればわかるけれど、ジャンルや作者を変えれば大体5冊から8冊くらいは同時に読むことが可能だ。
長編小説、短編集、児童文学、エッセイ、詩集、みたいな感じで一冊ずつならまず頭もこんがらない。
途中で他の本を読むと浮気しているみたいで罪悪感があった、と先ほど書いたけれど、本についてはそもそも浮気なんて言葉を使うことの方がナンセンスだ。ぼくは何冊も同時に読むようになってからかなり読むスピードが上がったし、単純に読書することを楽しいと思うようになった。

本はいつだってオープンな存在で、読んでもいいし読まなくってもいい。
本はいつでも待っていてくれる。
自分の思うがまま、好きに読めばいいのだ。

そう考えるようになってから、ぼくと本との本当の付き合いが始まったような気がしている。

(ちなみに今回の写真は自分の本棚ではなく、行く先々で撮った写真を使わせてもらいました)

マキタ・ユウスケ

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