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ハロマゲドンについて

 2002年7月31日に映画『仔犬ダンの物語』と『ミニモニ。じゃムービー お菓子な大冒険!』の制作発表記者会見で今後のハロー!プロジェクトに関する再編が発表された。

 ハロー!プロジェクト再編は正式名称があるわけではなく、筆者はハロー!プロジェクト構造改革と呼んでいるが、「7.31事件」「ハロプロ再編」「ハロプロ大編成」「ハロプロ大改革」、ファンクラブ会報は「Hello!Project新編成」、ファンの間では映画『アルマゲドン』から取って「ハロマゲドン」(Wikipediaでは「ハローマゲドン」)とさまざまな呼び方が存在する。

 今回はまもなく20周年を迎えるハロー!プロジェクト構造改革について深く掘り下げていく。


はじめに

 2002年の夏時点のハロー!プロジェクトメンバーは以下の通り。

  • モーニング娘。(13人)

  • 平家みちよ

  • 中澤裕子

  • 稲葉貴子

  • ココナッツ娘。(2人)

  • カントリー娘。(3人)

  • メロン記念日(4人)

  • 前田有紀

  • 松浦亜弥

  • 藤本美貴

  • 石井リカ

  • ハロー!プロジェクト・キッズ(15人) 計44人

 発表内容は以下の通り。

  • 9/23:後藤真希がモーニング娘。を卒業。

  • 9/26:新生タンポポが誕生。

  • 10/9:新生プッチモニが誕生。

  • 2002年秋:平家みちよがハロー!プロジェクトを卒業。

  • 2003年春:新生ミニモニ。が誕生。

  • 2003年春:保田圭がモーニング娘。を卒業。

  • ハロー!プロジェクトに新ユニットが誕生。

 ハロー!プロジェクト構造改革が各報道機関によって一斉に伝えられると、翌8月1日の芸能コーナーではトップとして報じられ、ハロプロの構成について図解で詳しく説明する情報番組もあった。スポーツ紙各紙には「ゴマキ脱退」という文字が一面を飾り、世間にも大きな印象を与えた。

 突然の発表であったことから所属事務所に対する批判が巻き起こり、8月2日に放送された矢口真里のラジオでは「つんくさんが悪いわけじゃないですよ。つんくさんを責めないでください」といったようなコメントを残している。

9/23:後藤真希がモー娘。卒業

 今回の構造改革の最大トピックは間違いなく後藤真希の卒業だった。前述にもあるようにスポーツ紙では「ゴマキ脱退」「ゴマキ卒業」の見出しがフューチャーされ、一部の番組ではこれまでの活動について解説されたほどだった。

 公式の発表では「幅広くプロデュースしていくためにグループを卒業し、新たにアーティスト活動ができる環境を作りたいというつんくの意向」とされているため本人の意思による卒業ではない。そのため本人は「(卒業の)話を聞いたときは驚いた」とコメントしている。

9/26:新生タンポポが誕生。

 飯田圭織・矢口真里・石川梨華・加護亜依で活動してきたタンポポ(通称:2期タン)は、飯田圭織・矢口真里・加護亜依が卒業し、紺野あさ美・新垣里沙・柴田あゆみ(メロン記念日)が加入することになった。

 9月26日に新体制となって初となるシングル「BE HAPPY 恋のやじろべえ」をリリースしたが、新体制を受け入れられなかったファンが多かったのかオリコン最高5位という結果に終わった(名曲であることには間違いない)。その後はリリースが途絶え、レギュラーのラジオ番組『タンポポ編集部 OH-SO-RO!』での活動にとどまった。

 前作の「王子様と雪の夜」で悲願の1位を獲得し、まさにこれからという時に再編されたため絶望に陥るファンが続出。小学生だった筆者ですら受け入れるのに少し時間がかかった(もちろん加入したメンバーに罪はない)。柴田あゆみの加入はメディア露出が増加しつつあったメロン記念日を盛り上げるための戦略だったと思われるが、メロンとタンポポの2つを両立して活動させるのはあまりにも難しかった。

10/9:新生プッチモニが誕生。

 保田圭・後藤真希・吉澤ひとみの3人で活動してきたプッチモニ(通称:2期プッチ)は、保田圭・後藤真希が卒業し、小川麻琴・アヤカ(ココナッツ娘。)が加入することになった。

 当初は10月9日に新体制でのリリースを予定していたが、タイトルやジャケ写が公開されないまま度重なる延期が相次ぎ、リリースに至ることはなかった。同時期に行われたモーニング娘。の秋ツアーでは「ちょこっとLOVE」を新体制で披露されたことからお蔵入りになったと思われたが、年明けのハロー!プロジェクトのコンサートでオリジナル曲「WOW WOW WOW」を披露し、年末の「プッチベスト4」に収録されたことで問題は解決された。

 おそらく所属事務所はミカがミニモニ。、アヤカがプッチモニとして活動していくことでココナッツ娘。の活動のバランスを考えていたと思われるが、前述のタンポポが予想以上の反感を喰らってしまったことで当初予定していた活動が困難になったのではないかと考えている。アヤカの英語力を生かした新しいプッチモニを見てみたかった。

2002年秋:平家みちよがハロー!プロジェクトを卒業。

シンガーソングライターへ転身

 ハロー!プロジェクト発足時から牽引してきた平家みちよは「自らの音楽活動を心新たに行って、自分なりの音楽制作の勉強しながらソロアーティストとして活動していく」として卒業を発表し、今後はシンガーソングライターとして活動していくとしていた。

 モーニング娘。のオリジナルメンバーと同期でありながらソロ歌手として単独ライブを行うことができず、太陽とシスコムーンや松浦亜弥といった後輩のコンサートツアーにゲストとして帯同することが多かった。後藤真希の卒業やモーニング娘。派生ユニットの再編で注目度は低かったが、11月に念願だった初のライブツアーを東京・大阪・栃木の3都市で開催し、仲間に見送られながら5年間在籍したハロー!プロジェクトを卒業した。

2003年春:新生ミニモニ。が誕生。

メンバーの成長に合わせて身長制限が撤廃へ

 矢口真里が勝手に作ったユニットという設定で売り出され、モーニング娘。を凌ぐ人気を獲得したミニモニ。は「今後の活動を広げるために」という理由で矢口真里が卒業し、高橋愛が加入することになった。リーダーはミカへと引き継がれ、辻希美・加護亜依が150cmを超えていたことから同時に身長制限が撤廃された。

 矢口リーダー期の初代ミニモニ。はモーニング娘。のコンサートではなく、2003年3月29日に行われた単独コンサートで終了した。

 高橋の加入は今後のモーニング娘。の将来を見据えた戦略であったと推定している。ミニモニ。を応援していた子どもたちはどう受け止めたのかわからないが、「CRAZY ABOUT YOU」でスタイルを一新し、アルバムなどを通じて楽曲の幅も広がって面白かったと思う。映画『ミニモニ。じゃムービー お菓子な大冒険!』では、子どもたち向けに(?)矢口がミニモニ。を去る理由が明らかとなっている。興味のある読者はチェックしてほしい。

2003年春:保田圭がモーニング娘。を卒業。

女優への道を切り拓いた第一人者

 公式では「以前から音楽制作に興味があり、この春のミュージカル(モーニングタウン)やTVドラマで演技を経験する中で、芝居にも興味を持ち、来年のモーニング娘。の春のコンサートツアーを最後にグループを卒業し、ハロー!プロジェクトの中で幅広く活動していこう!ということを話し合いました。リーダーの中澤裕子に次ぎ、サブリーダーとして活動」と発表があり、卒業後はハロー!プロジェクトに在籍しながら舞台・ミュージカルを中心に活動を行なった。バラエティ色が強いイメージがあるが、モーニング娘。を卒業して女優への道を拓いてくれたのは間違いなく彼女で、『羅生門』や『夏ノ夜ノ夢』など有名な作品にも出演した。

 スポーツ紙で「ゴマキ脱退」と大きく一面を飾ったことに対し、保田圭は「保田も」「保田は来春」と小見出しで掲載されたのが印象的だった。

ハロー!プロジェクトに新ユニットが誕生。

矢口にキッズ5人でZYXを結成

 公式では「ミニモニ。を卒業する矢口真里を中心に、新たなユニットをハロー!プロジェクト・キッズのメンバー数名と共に結成」と結成時期については明らかとなっていなかったが、2003年7月に矢口真里に加えて、ハロー!プロジェクト・キッズから非公開のレコーディング審査を経て、梅田えりか清水佐紀矢島舞美嗣永桃子村上愛の5人が選出され、ZYX(ジックス)が結成された。

 2003年8月6日に「行くZYX! FLY HIGH」でデビューすると、『ミュージックステーション』や『うたばん』といった音楽番組に出演し、『おはスタ』でもグループの存在をアピールするなどポストミニモニ。的ポジションで活動すると思われたが、2004年のBerryz工房の結成に伴って、事実上の消滅となった。

あとがき

 今回改めてハロマゲドンを振り返ってみると、あの発表はファンに向けてではなく、各報道機関に向けて発表されたと記憶している。公式サイトも現在のように機能しておらず、詳しい内容はスポーツ紙やワイドショーで知ることとなった。突然の発表で混乱と絶望感に襲われるファンが続出し、この出来事がきっかけにモーニング娘。から離れたファンも多かったらしい。特にテレビで応援していたライトファンはここで一区切りとしていたかもしれない。5期メンバーが既存ユニットに加入したことから一部では5期救済企画とも呼ばれていたが、結果的に彼女たちへの反発を大きなものにしてしまって可哀想だったと思う。モーニング娘。に限らず、改めて世代交代の難しさを感じた。

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