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#11 下積み時代が長かった「浜崎あゆみ」

 1990年代〜2000年代の女性アイドルを振り返る「ガールズポップス」。売れないアイドルから女優・モデル・タレントに転身して成功を収める女性芸能人は数多く存在するが、歌手として成功したのはごく僅かのように思える。

 ただ、この人の場合はあまりにも特殊だろう。アイドル女優(?)として幅広く活動を行い、所属事務所との契約が終了した後に渡米。歌手としてカムバックした浜崎あゆみだ。今回は浜崎あゆみの芸能界デビューからブレイク前夜の1999年辺りまで振り返っていく。

次世代アイドルとして多方面で活動

 1985年にSOSモデルエージェンシー福岡からスカウトを受け、浜崎くるみ名義で地元である福岡で広告モデルとして活動。その後は東京のサンミュージックを紹介され、福岡から上京した。

 1993年4月期ドラマ『ツインズ教師』で女優デビューを果たし、チーマーに襲われる役を演じた。その後は少年誌「週刊ヤングジャンプ」の企画で行われた龍虎の拳 CF ヒロインコンテストでグランプリを受賞し、イメージガールとしてCMにも出演した。

 12月に放送されたアニメ『バトルスピリッツ 龍虎の拳』ではユリ・サカザキ役で声優として出演し、1994年にVHS版、2003年にDVD版をそれぞれリリースしたが、DVD版の方は大人の事情で別の声優に差し替えられた。

 1994年4月に堀越高等学校(芸能活動コース)に入学し、浜﨑あゆみ名義でドラマ・映画・Vシネマ・グラビアなど活動の幅を広げ、NHK BS2で放送されていた音楽番組『アイドル・オン・ステージ』では早見優やレベッカといった楽曲をカバーする場面があった。

 1995年4月にリリースされた初の写真集「Terima Kasih」では貴重な水着を披露し、同時期には少年誌「週刊ヤングサンデー」、情報誌「スコラ」、アイドル誌「BOMB」で表紙を飾った。

 1995年9月にAYUMI featuring DOHZI-T&DJ BASS名義で「NOTHING FROM NOTHING」をリリースし、同時期にヒットしていたEAST END×YURIを彷彿とさせるラップを披露した。後に同じタイトルでミニアルバムがリリースされたが、現在は廃盤になっているためプレミア化している。

ドラマ

  • 『ツインズ教師』(1993年4月~6月、テレビ朝日) - 浜崎くるみ名義

  • 『西遊記』第11話(1994年7月29日、日本テレビ) - 以下、浜﨑あゆみ名義

  • 火曜サスペンス劇場『名無しの探偵シリーズ11 ガラスの少女』(1995年8月1日、日本テレビ)

  • 『湘南リバプール学院』第24話(1995年9月19日、フジテレビ)

  • 『未成年』(1995年10月〜12月、TBS) - 家庭教師との子供を身籠る役

  • 『きっと誰かに逢うために』第9話(1996年3月2日、テレビ東京)

  • 土曜ワイド劇場『少女Aの殺人 女子高生が父に殺意を抱く時…スキャンダルが名門校を揺らす』(1996年6月1日、テレビ朝日)

  • 『闇のパープルアイ』(1996年7月~9月、テレビ朝日)

  • 土曜ワイド劇場『同居人カップルの殺人推理旅行4 嘘をつく女 熊本阿蘇 ~財産を狙って欲望が渦巻く』(1996年7月6日、テレビ朝日)

アニメ

  • 『バトルスピリッツ 龍虎の拳』(1993年12月23日、フジテレビ) - 浜崎歩名義

ラジオ

  • 『放課後の王様』(1995年、セント・ギガ) - 泉谷しげると共演

映画

  • 『すももももも』(1995年5月公開) - 主人公の妹役

  • 『麗霆゛子 レディース!! 総長最後の日』(1995年7月公開) - 母親の愛人犯される不良少女役

  • 『渚のシンドバッド』(1995年12月公開) - 性被害に遭った過去を持つ女子高生役

  • 『学校Ⅱ』(1996年10月公開)

  • 『湘南爆走族 帰ってきた伝説の5人』(1997年2月公開)

再デビューに向けて渡米

 1995年頃に東京・六本木のヴェルファーレでエイベックスの創業者である松浦勝人と出会い、1996年末にサンミュージックとの契約が終了したことを機にエイベックスから歌手として再デビューするための準備に入った。

 1997年の夏に約3ヶ月にわたってアメリカ・ニューヨークでボイストレーニングを行なった。小説「M 愛すべき人がいて」によると、当初は浜崎をボーカルに据えた3~4人組のグループを結成する計画があったが、本人の強い希望でソロという形になった。

エイベックスから再デビュー

 1998年4月8日に「poker face」でソロ歌手としてデビューし、その後は常に露出している印象を与えるため2~3ヶ月のペースでリリースした。8月にリリースされた3rdシングル「Trust」は化粧品メーカーのタイアップに起用されたことで女子高生を中心に注目を集めるようになり、初のトップ10入りを果たした。

 12月に放送されたラジオ番組『浜崎あゆみのオールナイトニッポン』は放送前から“浜崎あゆみはバカじゃない”をキャッチコピーにTV-CMや渋谷での広告展開が行なわれ、これまで知られていなかった生い立ちについて赤裸々に語ったことがリスナーから大きな反響を呼び、さらに人気を拡大することになった。

 この年は大阪有線大賞(後の全日本有線放送大賞)および日本有線大賞でそれぞれ新人賞を受賞したが、同時期にデビューしたKiroroやモーニング娘。に追いやられる形で日本レコード大賞の新人賞や『NHK紅白歌合戦』への出場を逃した。

  • 1st「poker face」(20位)

  • 2nd「YOU」(20位) ※初登場24位

  • 3rd「Trust」(9位)

  • 4th「For My Dear…」(9位)

  • 5th「Depend on you」(6位)

初のミリオンセラーを記録

 1999年1月1日にリリースされた1stアルバム「A Song for ×××」は約2億円かけて広告展開されたシブヤジャックと本人が手がけた歌詞が話題となり、オリコン初登場1位、自身初のミリオンセラーを記録した。

 4月にリリースされた両A面シングル「LOVE 〜Destiny〜 / LOVE 〜since 1999〜」は、つんくが楽曲プロデュースを手がけ、シングルとしては初の1位を獲得した。

  • 6th「WHATEVER」(5位)

  • 7th「LOVE 〜Destiny〜 / LOVE 〜since 1999〜」(1位)

  • 8th「TO BE」(4位)

発売週であみ〜ゴ・モー娘と対決

 1999年7月に9thシングル「Boys & Girls」をリリース。発売週にはトップ3常連のV6、鈴木あみ(現在は鈴木亜美)、モーニング娘。といった強敵アーティストが勢揃いし、7月26日付のオリコン週間ランキングで初登場2位を獲得した。翌週からは返り咲きで3週連続で1位を独占し、これが大ブレイクのきっかけとなった。

  1. 鈴木あみ「BE TOGETHER」

  2. 浜崎あゆみ「Boys & Girls」

  3. V6「太陽があたる場所

  4. 坂本龍一「energy flow」(8週目)

  5. モーニング娘。「ふるさと

 8月にリリースされた10thシングル「A」は発売3週目でシングルとしては初となるミリオンセラーを記録した。当時の音楽業界としては異例となる「monochrome」、「too late」、「Trauma」、「End roll」の4曲がA面として扱われ、表題曲が存在しなかったことから音楽番組に出演した際にはそれぞれ別々の楽曲が歌われた。結果的に浜崎の最も売れたシングルではあるが、表題曲が存在しないことや前作から1ヶ月後のリリースだったこと、4曲ともにMVが制作されなかったこともあって世間的な認知度が低い。

 11月に30万枚限定でリリースされた11thシングル「appears」は宇多田ヒカルの「Addicted To You」と発売週が重なって初登場2位となったが、同時にリリースされた2ndアルバム「LOVEppears」と共に“白あゆ”“黒あゆ”のジャケット写真が大きな話題になった。

 この年の日本レコード大賞では「Boys & Girls」で優秀作品賞を受賞し、『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たした。

  • 9th「Boys & Girls」(1位) ※初登場2位

  • 10th「A」(1位)

  • 11th「appears」(2位)

  • 12th「kanariya」(1位)

あとがき

 筆者が小学生の頃の浜崎あゆみといえば、スーパースターそのものだった。TV-CMでは常に彼女の歌が流れ、街にはファッションを真似た金髪ショート女子がそこら中に歩いていた。2001年にリリースされたベストアルバム「A BEST」は宇多田ヒカルとの同日発売対決が大きな話題となり、ワイドショーでも過熱した報道を行なっていたことをよく覚えている。

 本来であれば、サンミュージックに所属していた期間をアイドル時代として扱うべきだが、今回は敢えて1999年までをアイドルとして一括りにした。1990年代後半はアイドル(?)の鈴木あみと比較されることが多く、初期の浜崎あゆみはアイドル的要素が少なからず残っていたと考えている。

 noteを書くにあたってオリコンのチャート推移を調べてみたところ、浜崎と同じく1998年にデビューしたモーニング娘。と発売週が重なることが多かったことがわかったので最後に紹介する。

【1999年2月22日付】

  1. モーニング娘。「Memory 青春の光」

  2. 浜崎あゆみ「WHATEVER」

【1999年5月24日付】

  1. モーニング娘。「真夏の光線」

  2. 浜崎あゆみ「TO BE」

  3. 浜崎あゆみ「LOVE 〜Destiny〜 / LOVE 〜since 1999〜」(5週目)

【1999年7月26日付】

  1. 浜崎あゆみ「Boys & Girls」

  2. モーニング娘。「ふるさと」

【2000年5月29日付】

  1. モーニング娘。「ハッピーサマーウェディング」

  2. 浜崎あゆみ「Far away」

【2000年12月21日付】

  1. 浜崎あゆみ「M」

  2. モーニング娘。「恋愛レボリューション21」

【2002年8月5日付】

  1. 浜崎あゆみ「H」

  2. モーニング娘。「Do it! Now」

【2003年11月17日付】

  1. 浜崎あゆみ「No way to say」

  2. モーニング娘。「Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜」

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