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構造デザインの講義【トピック3:古代の石と木による構造】第7講:五重塔=すばらしき日本の古代木造技術2

木造建築の脅威の耐震・制振技術、五重塔と現代の構造物との関係

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



法隆寺五重塔

法隆寺の五重塔は、711年創建され、高さ31.55mの世界世界最古の木造塔です。
五重塔の屋根は、上に行くほど小さくなっています。
五重塔の構造原理を理解する鍵は、天秤構造心柱構造です。

天秤構造は、側柱に乗る尾垂木が、外側の長い軒による屋根荷重と、内側の上層階の荷重が天秤のように釣り合うシステムです。
社寺建築や古い木造住宅などで見ることができます。
現代では、六本木ヒルズのオーバルルーフ、酒田市国体記念体育館などの大空間構造に採用されています。

天秤構造は、軒先の構造体・部材の力学と、屋根荷重が絶妙な釣合いによって成立する
六本木ヒルズ・オーバルドームは、天秤構造の原理を利用し、絶妙なバランスで、開放的な大空間を実現している

心柱構造は、塔の中央を心柱が貫き、各層とは直接触れていません。
なお、心柱は、数本の柱が継ぎ足されており、基礎部は基壇に据えられています。

長い年月、五重塔を支えてきた心柱を見ることができる

地震等水平荷重時、塔は巨大な片持ち柱として、曲げとせん断の力と変形が生じます。
これにより、塔の各層は回転(ロッキング)と並進(スウェイ)が生じます。
各層の変形に対し、心柱と接触することにより抵抗力が得られ、層として復元力を発揮します。

心柱構造は、地震等水平荷重時に、壁体の地震時挙動を連動させる際に威力を発揮する

この耐震・制振技術は、スカイツリーなどの現代の建造技術として採用されています。

スカイツリーの高い安全性は、法隆寺五重塔の耐震・制振技術によって支えられている

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