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【詩の森】537 打出の小槌

打出の小槌
 
資本主義が生まれて600年
明治政府が
西洋の仕組みを取り入れて150年
もはやだれも
ほかの世の中を知りません
この世の中では
お金を稼ぐ人が一番偉い人になりました
それは大企業の社長さんでしょうか
それとも自分で給料を決められる
代議士さんでしょうか
 
いやいや
ぼくも知らなかったけれど
世の中にはもっと偉い人がいたのです
それがお金を作る人たちです
お金を作るのは政府だと思っていませんか
実はそうではないのです
もし政府にお金が作れるのなら
どうして毎年
何十兆円もの国債を発行し
借金する必要があるのでしょう
 
だれかが貸してくれといえば
いつでもお金を作れる人たち
それが銀行家です
一番偉い人たちは銀行家だったのです
その理由は信用創造にあります
銀行家はいつでも
信用創造という打出の小槌で
無からお金を生み出せるのです
必要なのは借り手がいるという
たったそれだけ―――
 
そんなばかなと思うでしょう
僕もはじめはそう思いました
それなら銀行はいくらでも
お金を作ってしまうのではないでしょうか
国家も銀行の言い成りではないでしょうか
その通りです
大量のお金が
実体経済に向かえばインフレになり
金融経済に向かえばバブルを
引き起こすことさえできるのです
 
金融経済とは株や債券のことです
実際にモノやサービスを
お金と交換する実体経済に対し
金融経済は
お金のやり取りだけの「モノのない活動」
だといわれています
一説によると実体経済が
GDPの600兆円規模なのに対し
金融経済はその数倍から
数十倍ともいわれているのです
 
銀行家はその匙加減で
実体・金融双方の通貨供給量を
コントールできるのです
自由に振れる打出の小槌は
既得権とはいえ
余りに絶大過ぎるのではないでしょうか
国家予算が100兆円規模なのに対し
2023年6月現在
日本の市中銀行の資産総額は
1925兆円だといわれています
 
貸出時に無から生まれたお金は
返済時には消滅します
それで帳尻が合うというわけです
お金は購買力です
銀行で無から生み出された購買力は
それが銀行に戻った時
再び無に帰るといえましょう
しかしその時
銀行の手元には莫大な利子が
利益として残るのです
 
2023.9.5
 
 

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