それぞれの場所で
 
それぞれの場所で
人が生きていくように
それぞれの場所で
人は闘えばいいのだ
個人の自由も
尊厳も
先人たちが闘って
闘い抜いて
勝ち取ったものだ
僕らが闘うことを
止めてしまったら
気づかれないように少しずつ
人権は奪われて
しまうだろう
 
それぞれの場所で
人が生きていくように
思い思いのやり方で
人は闘えばいいのだ
それは
流されないで
自分を生きることだ
闘っている者どうしなら
少し話しただけで
忽ち分かり合えるだろう
語りたいことが
山ほど出てくるだろう
闘う知恵を
分かち合うことだって
できるだろう
 
闘うことは
暴力をふるうことではない
諦めずに
根気よく話し合うことだ
個人の尊厳を
ほんとうに認め合えるまで
語り尽くすことだ
問答無用と
言わせぬことだ
若くして聴力を失くした
松本俊介は
戦争画を拒否し
戦時中もひたすら
絵を描き続けた
彼の描いた『立てる像』を
君は見たことがあるだろうか
大地から生えたように
仁王立ちするその青年は
真直ぐに
未来を見据えている
 
それぞれの場所で
人が生きていくように
仲間を募って
人は闘えばいいのだ
自分のためだけに
闘うのではない
それは
みんなの笑顔のためなのだ
たった一度の人生を
いったい誰が
手放したいと思うだろう
戦争せぬこと
飢えさせぬこと
政治の役目は二つに尽きる
そう言い残して
菅原文太さんは他界した
食料とエネルギ―の
自給自足を促すこと
他国から
決して奪うことの
ないように―――
 
文太さんのいう役目が
危うくなろうとしている今
君も闘わなくてはいけない
闘うことは
子どもたちの未来を
守ることでもあるのだ
闘う者たちの矜持が
いつしか
君を逞しくするだろう
君を美しく変えてゆくだろう
さあ
それぞれの場所で
いのちを未来へ繋ぐために
闘おうではないか
個人の尊厳を守り通した
先人達が
かつて僕らのために
そうしてくれたように
僕らもまた
未来のために
闘おうではないか
したたかにしなやかに
それぞれの場所で―――