【24】「商標調査」とは、何を調べるのか?

こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
最近、休日はレトロゲーム(ファミコン)にハマっています(笑)。

前回の記事では、「商標登録ができそうかどうかを、出願前に、あらかじめ知る方法はないのか?」について、お話ししました。

これについては、「商標調査」を実施することで、その可能性を100%正確に知るのは難しいものの、ある程度の予測は可能であると、ご説明しました。

それでは、この商標調査とは、いったい何なのでしょうか?
今回は、この「商標調査」について、できるだけシンプルにお話ししていきたいと思います!

1.商標調査の内容とは?

さて、商標調査とは、具体的には何を調べるのでしょうか?

実は、商標調査には、明確な定義はありません。
しかし、一般的には、次のように言うことができると思います。

調査対象の商標について、(ⅰ)商標登録ができる可能性(登録可能性)と、(ⅱ)他人の商標登録との関係において問題なく使える可能性(使用可能性)を、精査・検討すること。

ところで、「【22】商標登録が認められない理由とは?」でも見たように、特許庁の審査では、商標登録を認めるかどうかについて、約30項目がチェックされました。ということは、商標調査により商標登録ができる可能性(登録可能性)を調べる場合も、これらの約30項目の全てをチェックすることになるのか?という疑問があろうかと思います。

結論から言いますと、普通はやりません(苦笑)。
というか、全部の項目をチェックするのは実質的に難しいというのもありますし、これらのチェック項目のうち、大部分は「まず引っかからない」ものだからです。

一方、上記記事でも見たように、審査でよく引っかかる理由というものがありました。具体的には、以下の3つの場合でした。

(1)その商標が、商標として機能し得ない場合
(2)その商標と、同じ商標・似ている商標が第三者に登録されている場合
(3)指定商品・指定役務の記載が適切でない場合

商標調査でどこまでやるかは、正直なところ、「実施者」の意向次第です。
ただし、どんな商標調査でも、これらのうち(2)については、絶対に調査内容に含めると言えます。これが、もっとも大事な事前確認事項と言えるからです。

すなわち、

その商標と、同じ商標・似ている商標が、すでに第三者に登録されているかどうか?

という点は、どのような商標調査でも調査をするのが普通です。

ですから、「商標調査」というと、どこまで調べるかは実施者次第ではありますが、一般的には、「その商標と、同じ商標・似ている商標が、すでに第三者に登録されているかどうか?を主に調べることだと理解しておけば、まず間違いありません。

※以下は、この点を主に調査することを前提に、ご説明をいたします。

2.商標調査は具体的にどうやってやるのか?

では、商標調査は、いったいどのようにして行うのでしょうか?
どうやって、調査対象の商標と同じ商標や似ている商標が、すでに第三者に登録されているかどうかを調べるのでしょうか?

やり方としては、商標データベースを使うのが一般的です。

商標データベースにもいろいろありますが、もっともポピュラーなのは、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」です。ネット上で、誰でも無料で使うことができます。

この商標データベースには、これまでに商標登録された商標のデータや、商標出願がされた商標のデータが収録されています(※データの反映にはタイムラグがある点には注意が必要です)。調査実施者は、種々のキーワードをキーとする検索式でデータを絞り込むことで、問題のある他人の先行商標が存在していないかをチェックしていきます。

なお、調査対象商標の要素が文字か図形かで、調査方法は若干異なります。

せっかくなので、具体的な調査方法を書きたいところですが、とてもnoteの記事では書き切れるものでもありませんし、ぶっちゃけこのテーマだけで本1冊作れてしまうレベルのボリュームになりますので、割愛いたします。スミマセンが、何卒ご了承ください。

シンプルに書かれていてわかりやすいものとしては、特許庁のウェブサイトに「商標を検索してみましょう」というページがありますので、調査のイメージをつかむのには参考になるかと思います。ただし、後述するように、ここに書かれている検索方法だけでは、商標調査としては「不十分」ですので、ご注意ください。


3.一般の方が、自力で商標調査をするのは難しい

ところで、「商標調査は誰がやるのか?」ですが、基本的には、自分(自力)でやるか、専門家である弁理士等に依頼をするということになります。特許庁などの公的機関がやってくれるわけではありません。

ネットで調べると、上述の特許庁のウェブページのように、商標データベースの使い方が説明されたものがたくさんヒットしますので、まずは自分で検索してみようと考える方も、少なくないとは思います。

それはそれで良いとは思いますが、さすがに商標の専門的な実務知識がない一般の方が、自力で精度の高い商標調査を行うのは難しいでしょう。自力で検索できるのは、せいぜい「まったく同じ登録商標(出願商標)が存在しているかどうか」くらいだと思います。残念ながら、商標調査としては、これだけでは不十分です(もちろん、スクリーニングとして、それなりに役には立つとは言えます)。

一般の方による自力での商標調査が難しい理由の1つとしては、商標の専門的な知識がないと、適切な検索式が組めないという点があります。上述の特許庁のページにあるような検索方法だけでは、多くの場合は調査モレが生じてしまうでしょう。

また、検索ができたとしても、結果の「判断」が難しいことも挙げられます。
たとえば、Aという商標を「類似商標検索」したら、検索結果として、B、C、Dという先行商標が候補として挙がったとします。しかし、専門的な知識がないと、このうち実務上も「似ている」と判断されるべきものがどれなのか、判断するのは難しいのです。

というわけですので、やはり商標調査は、きちんと調べたいなら専門家である弁理士等に依頼をするというのが、第一選択肢ということになるでしょう。

まとめ

商標調査には、実は明確な定義はありません。
どこまでやるかは実施者の意向次第です。
ただ、「その商標と、同じ商標・似ている商標が、すでに第三者に登録されているかどうか?」という点については、どのような商標調査でも調査内容に含めるのが普通です。

その際には、商標データベースを使うのが一般的であり、自分(自力)でやるか、専門家である弁理士等に依頼をするかという方法によることになります。

ただ、商標の専門的な知識がない場合、検索式の設定や、類否判断(商標が似ているかどうかの判断)において、困難と言わざるを得ません。したがって、残念ながら、一般の方が自力で精度の高い商標調査を実施することは難しいと言えるでしょう。

というわけで、しっかりと商標調査をしたい場合は、専門家である弁理士等に依頼をするというのが、第一選択肢ということになります。

それでは、弁理士等に商標調査を依頼する場合、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか?次回は、この点についてお話ししていきたいと思います!

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【企業・経営者向け】
「はじめての商標と商標登録のためのお話」は、
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