見出し画像

山地酪農の牛乳を飲んでみた(なかほら牧場)


普段販売されている牛乳は1ℓ大体200〜250円くらいだと思いますが、今回買った山地酪農の牛乳は500mℓ1200円ほどしました。
育て方が違うだけで値段が12倍も違います。
ただ、この価値の高さにお金を払いたくなるほどに育て方に魅力があったため購入しました。

今回はそのレビューです。私個人的には結構衝撃的な味で驚いたので、この驚きを書いていきます。その前に普通の酪農と山地酪農の軽い説明を挟みます。


普通の酪農


日本ではつなぎ飼いするのが一般的なようです。牛を牛舎に入れ、そこで牛を妊娠させて乳を搾り、それを4回くらいサイクルした後に食肉へと回される形になります。

つなぎ飼いのため、牛は一生繋がれた範囲内でしか生活することができません。運動できないため運動不足にもなりますし、排泄もそこで行われるため掃除されない限りは汚い環境のままになってしまうため衛生的にも悪いです。

牛にとってはデメリットしかありませんが人間にとってはメリットがあり、日本は1戸あたりの飼育数が少ないためこの飼い方が経営的に効率が良いそうです。少ない敷地面積に牛がいるため牛の状態を見るという点では管理が楽ですし、牛の発情を見つけやすいため生産の効率化が図れるそうですが、排泄や牛がずっとその場にいるため牛舎の管理が大変らしいとのこと。

最近ではフリーストール(牛が個々で寝る区分けされた場所)とルーズバーン(牛が自由に歩き回れる場所)がある牛舎で飼育されるやり方も徐々に普及しつつあるとのことで、こちらは牛の自由度がつなぎ飼いに比べて格段に増します。そのため、運動不足の解消や排泄などの衛生面の問題が比較的楽になるそうです。逆に牛の細かい管理が難しくなるようですが、牛にとっても人間にとってもある程度マシになっていますので、つなぎ飼いよりはいいかなって感じです。

ちなみに、データ的には日本の酪農家の3/4がつなぎ飼い、1/4がフリーストールでの飼育、放牧は数%程度とのことです。


山地酪農


山地酪農とは、山地で牛を自由に放牧し行う酪農のことです。牛たちは敷地内に自由に生えている野草を食べ、自由に繁殖し、自由な場所で排泄をします。敷地内であればどこに行くのもどこで休むのかも自由です。

先ほどの一般の酪農とは違い全てを牛に任せています。これだと逆に管理が大変じゃないか?と思うかもしれませんがそこは心配ありません。
草木が伸び切る前に勝手に牛が食べてくれるので牧草地が草木で生い茂ることはありませんし、繁殖も自由にやってくれるので人間側が手間暇かけて繁殖しなくてもOK。排泄物は勝手に分解されて牧草地の栄養になるので問題ありませんし、あちこち歩き回って勝手に運動してくれて色んな草を食べるので健康で病気になりづらいです。

乳搾りはどうするの?と思うかもしれませんが、乳が張ったら勝手に絞られに施設に帰ってくるそうです。そんなことあるんかいなって思いましたが、牛も乳が張ってる状態は好ましくないと思ってるようなので、うまく噛み合ってますね。
色んな面でメリットがあり牛が勝手にやってくれるので、管理コストを下げることができます。
普通の酪農ですと5年の牛の寿命が山地酪農では20年に延びるとのことなので、牛にとってストレスフリーで快適なのでしょう。ちなみに搾乳の量は減ります。

良いことづくしじゃないかと思うかもしれませんが、デメリットもあります。
放牧地が循環する環境になるために土を改良したり木々を切り倒したりとお金と労力がかかりますし、牛があちこち行き過ぎないように管理するのも大変ですし、生産を自然に任せていることで安定しないため経営をうまく軌道に乗せるのは難しいと思います。
生き物を扱うということはとても難しいですね。



山地酪農牛乳の味は?


本題に戻りまして、味の感想です。
味はとても美味しいかったです。

事前情報では意図的に乳脂肪率を上げるようなことをしていないため口当たりが低脂肪のようだ、というレビューをどっかで見ていましたがその通りでした。かなりさっぱりしていてます。

ですが低脂肪牛乳のように不味くありません。糖分調整とかをやっていないため不自然な甘さなどはなく、甘さ控えめにも関わらず牛乳を飲んでいるというコクのような物はちゃんとあるという絶妙なバランスを保っています。
もちろん乳脂肪率は低いため普段の自防分の多い牛乳のようなクリーミーさなどを求める人には不十分かもしれませんが、スッキリさという点ではこれ以上の牛乳を飲んだことはないので、好みの問題かと思います。

何より驚いたのは後味。カマンベールチーズのような味わいが口に広がります。というか後味が完璧に飲むカマンベールチーズでした。最初の口当たりとは違ってあまりにも濃くクリーミーな風味が広がったので、「これすごい」と素直に感心しました。飼育されている牛がジャージー牛とのことでホルスタインではないため、ジャージー牛特有の風味なのかもしれませんが、多分この風味と後味の抜け方を普通の酪農で行うことはできないのかなと思いました。殺菌の方法が手間がかかるやり方を取っているようなのでこだわりを感じます。

ちなみに2本買って、1本は初日に飲んでもう1本は1週間後に飲みましたが、1週間後の方は若干分離していたので自然に近い牛乳はこうなるのかと思いました。


今回のレビューが参考になるかはわかりませんが、牛乳好きなら驚きと発見がある味になると思いますので是非一度飲んでみてください。
ちなみに今回はなかほら牧場さんの牛乳を飲みましたが、他の山地酪農を行っている牛乳は飲んだことがないのでその点はご了承ください。


今日は以上。




参考資料

題名:日本におけるアニマルウェルフェア牛乳の展開と可能性 -共同購入グループのアンケート調査結果も含めた考察-
著者:日本獣医生命科学大学 植木 美希・桑原 考史
東京都産業労働局農林水産部 山田 直登
冊子名:フードシステム研究第 27 巻4号 2021. 3

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsr/27/4/27_274/_pdf/-char/ja


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?