作りたいものを作るにはツールから作る

自分の気になること、作りたいことを突き詰めていくとツールから作る羽目になることが多い。ちょっとしたプラグインから簡単なドローイングツール、 UIフレームワークもどきまで。

既存のツールは素晴らしくて一般的にクオリティが高いとされる表現に効率的にたどり着けるようによく考えられているが、時としてツールによって自分の作業や考え方が形作られてしまっているような気分になる。

Figmaは素晴らしいUIデザインツールだが、iOSやAndroid、webなど既存のプラットフォームに最適化されているため、そうでない新しいものを考えようとするときには向いていない。Cinema4D と Houdini では同じことをやろうとしても手間や作業の手順が大きく異なるため、結果としてできるものの傾向に差が出る。

ツールに作業が影響されること自体は必ずしも悪いことではないし、そういった制限のないツールというのは存在しない。絵の具の不自由さやコントロールの効かなさは、他の道具では生み出せないテクスチャや思いがけない表情を作り出してくれる特徴でもある。楽器のインターフェイスは明らかに演奏を制限するけれども、それに慣れ親しみ体の一部のように扱えるようになることが楽しみでもある。

自分で作ったツールは限定的だったり、荒削りだったりして、トータルとしての成果物のクオリティを上げてくれるとは限らない。もちろん単純に効率化のためのツールもあって、何度もやる作業を(半)自動化してくれるようなものを作ると時間当たり対価が大きくプラスになることも多いけれど、大抵は自分の理想(の仕事の仕方)を実現してみたいというのがモチベーションで工数はある程度度外視だったりする。他のツールではできなかったり、難しかったりした表現ができる、新しい思考の流れでものを作れることには大きな価値がある。商業的に成功するには遠回りかもしれないけど、物作りの楽しみや満足感はぶち上がることも多い。単発で見ると無駄っぽかったりすることも、そこから得られる知見や新しいことを試してみて得たスキルが後から見るとすごく役立っていたりする。

ゼロからツールを作るというのはまずない。UIのプロトタイプだったらHTMLだったり、既存のUIツールキットを使わずにGLでグラフィックを直接描画してみたり、かなりの部分は誰かの作ったものを利用する。何がしたいかによって違う深さに潜り、自分に必要な自由度を持った(その分だけ最適化されていない)土台の上に何かを構築していくことになる。

どんなジャンルでも最先端にいくと自分達で道具を作っている人たちがいる。ピクサーみたいな場所では新しい映像表現のパイプラインが年々更新されていくし、 UIだってマシンラーニングだって新しいライブラリ、ひいては新しい考え方やワークフローを作り出すことが重要な仕事だ。


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