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パスについて

ラグビーでは自分でボールを持って走るだけでなく、味方にボールを渡す「パス」というプレーがあります。
「パス」というと手で投げるプレーを想像する方がほとんどかと思いますが、近年ではキックパス(キックを使って遠く離れた味方にボールを渡すプレー)も多用されています。
キックパスについても今後触れて行こうと思っていますが、まず今回は手で投げるパスにフォーカスして投稿したいと思います。

前進したいのに「パス」は前に投げられない?

ラグビーのルールの下では、ボールを自分よりも前方に投げることは禁じられています
もし自分よりも前方に投げた(投げてしまった)場合は「スローフォワード」という反則となります。レフリーの笛が鳴って、プレーが止まって相手ボールのスクラムとなります。
ラグビーをする人も観戦する人も、初めに混乱するのは「パスを前に投げられない」というところだと思います。誰もが不思議に思うポイントです。
前の記事(挿入)でも書きましたが、選手(チーム)は試合に勝つために「前進」する選択をします。

前進したいのに、なぜボールを後ろにしか投げられない「パス」選択するのでしょうか?

1. 試合に勝つために、選手(チーム)はボールを前進させる選択をする
2. パスは前に投げられない

以上の2つを常に頭において、これからの記事を読んでいただきたいと思います。

選手がパスを選択する理由=損して得取れ!

ボールを前進させなければならないのに、選手が後ろに投げるパスを選択する理由は一つです。
「自分よりもボールを前に進めることができる味方がいるから」
です。

アタック(AT)2人に対してディフェンス(DF)1人の状況を想像してみましょう。

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ボールを持っているATは、このままボールを持って前に進んでもせいぜい2~3歩でDFに捕まります。

AT2 vs DF1 捕まる

ところがATにはもう一人味方が居ます。
こういう状況の時(またはこういう状況を作り出すために)選手は「パス」を選択します。

スライド11

パスでボールを2歩分後ろに下げることになりますが、目の前にDFがいない味方へパスをすることで、結果的に何歩も前に進めます。
パスをすると2歩分のをする(ボールが後ろに下がる)ことになりますが、味方が前進できるので6歩分の(ボールが前進する)になります。
なのでここでは「損して得取れ」という言葉を使わせていただきました。

大きなグラウンドで1歩2歩は小さく感じるかもしれませんが、試合に勝つために得点を取ることを考えたら、効率良く1歩でも前に進むことが近道です。
1歩=1mとしたら、ハーフウェイラインからトライラインまで50mありますので…
一直線に進めたとしても50歩前進しなければなりません。
パスをせずに「2歩前進」か
パスをして「6歩前進」か
得点に繋げるなら、もちろんパスを選択するでしょう。

もしパスという選択肢がなかったら、1歩前進できるかどうかのぶつかり合いを延々と繰り返すしかありません。
80分間ノンストップで相手とぶつかって押し合いを続ける…
経験者ならゾッとするはずです。

味方の前進を演出するためには「素早く」「正確な」パスと「キャッチ」が求められる

もう一度、AT2 vs DF1の図を見てみましょう。
この状況であれば、ATが圧倒的有利です。
AT①がDFを引き付けてパス。
AT②が前進できます。
とってもシンプルで簡単な話に思えますよね。

スライド11

でも、それはあくまで図面上の話です。
現場ではそう上手くいかないのが常です。
ATのパススキル・キャッチスキルが伴わなければ、こんな状況でも前進できません。

例えば、下の図。
パスの素早さがなかった場合
AT①のパスが山なりで遅いパスだった場合(素早さ×)、DFにはパスが浮いている間にAT②を捕まえにいく時間が生まれます。ATはパスをした位置とほぼ変わらない位置までしか前進できません。

スライド12

次に、パスの正確さが欠けた場合。
AT①のパスが素早くても(素早さ〇)AT②にとって取りにくい足元へのパス(正確さ×)だったら、AT②は減速してしまい、もたもたしている間にDFに捕まり、前進できないでしょう。

スライド13

図以外にも前進できないパターンは多々あります。
AT①のパスが素早く正確だとしても、AT②がキャッチできずにボールを落としたり、ボールを取るために減速していたら、DFに捕まり、前進できません。
例を挙げ出したらキリがありませんが、試合中はDFも必死に止めに来ますので、少しの歯車の狂いでDFに止められてしまいます。

トップレベルになればなるほど、選手のスピードも速く、パワーも強くなります。
だからこそ選手は、素早く・正確なパスとキャッチを練習して、試合のプレッシャー下で発揮しているのです。

・味方の取りやすい位置に正確にパスを投げる
・できるだけ早いパスを投げる
・スピードを落とさないようにキャッチをする

0.1秒、0.01秒パスを早くして、味方に一歩でも前進してもらうために
目の前にDFのいない味方にいち早くボールを託して前進してもらうために。

対するDFはどうやってパスを狂わせるか、どうやってパスを出すスペースを埋めるかがカギとなります。

・ATよりも早く立ち上がってスペースを埋める
・パスをする暇を与えないように前進してプレッシャーをかける
・ATがパスできないようなタックルをする

すべてはATに前進させないようにプレーします。
0.1秒、0.01秒でもパスを遅らせて相手を遅らせることができれば、ATの前進を防ぐことにつながります。
ATの目の前にDFを配置できれば、パスをされたとしてもATの前進を防ぐことができます。

「パス」という観点一つを掘り下げるだけでも、AT・DFそれぞれのプレーの意図が少しずつ見えてきたのではないでしょうか?

今後も選手達の様々なスキルを掘り下げて、ラグビーを楽しんでいけたらいいなと思っています。そしてこの記事を見た方々と一緒に、ラグビーを楽しめたらいいなと思っております。

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