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剣心にとっての『始まり』とは

 今日は、『るろうに剣心 the beginning』を観に行った。元々私は原作からるろ剣の大ファンで、実写映画も全作観ている。アニメは現在視聴中だ。原作でも大変重要視されている、剣心にとっての終わりと始まりの物語、追憶編。ファンが揃って、剣心について語るにはこの話は必ず乗り越えなければいけないと言う程の重要な話。始め私は、これを実写で再現するのは大変困難だと感じたが、蓋を開けてみれば原作通り、いや、それ以上に剣心の葛藤、決心、巴の憎悪、苦しみ、愛が再現されており、涙を流さずにはいられなかった。
 詳しい内容は割愛しておくが、特に私が一番考えさせられたのは、『果たして私は一度自分の婚約者を殺めた人物を愛せるのだろうか』ということだ。巴は、剣心に自らの婚約者を殺められている。当然初めは巴は剣心に復讐する為、剣心暗殺計画に参加していた。しかし剣心の、人斬りでありながら、心の奥に眠る純粋さ、穏やかさ、優しさを知るうちに、初めは憎悪の対象でしかなかった剣心をいつしか本気で愛してしまうようになる。いくら剣心ぐらい優しい人でも、かつての自分の婚約者を殺めた張本人である。巴も、もちろん自分が剣心を愛してしまっている事実に苦しむが、私自身で置き換えた場合、その人の優しさや穏やかさに気づいたとしても、事実と愛をきちんと区別できる程の、強くて広い心が持てるのだろうか。きっと私は、どうしても自分の好きな人を殺めたという事実の方が勝ってしまい、その人を愛するということなど出来ないかもしれない。その点で言うと、巴は強く、とても寛大な心を持った女性だと思う。
 また、人斬り抜刀斎として何百人も斬ってきた剣心が、巴と出会うことにより徐々に人らしさを取り戻していき、次第に『巴が掴みたかった幸せを必ず守る』と誓う程の愛情が芽生える。桂から言われる任務を淡々とこなすだけの剣心が、巴と共に生活していくことで本来の穏やかな性格に戻っていく様子は、観ていて微笑ましいものがあった。しかし、最終的に剣心から敵を守ろうとした巴を誤って殺してしまう。大変ショックを受けた剣心は、巴から『これで全て良いんです…だから泣かないで下さい…』と告げられる。原作ではこのセリフであるが、映画では巴の声が消され、完全なる巴と剣心だけの秘密のやり取りと表現されている。映画では巴が原作通りのセリフを言っているかは分からない。しかし、私には『これで良いんです。だから、そんな辛い顔をしないで』と言っている風に見えた。自分の命にかえてでも剣心を守りたかった巴の強い愛に大変心を打たれた。
 この映画のタイトルは、『the beginning』とある通り、『始まり』の物語である。人斬りとしての自分に『終わり』を告げた時と、流浪人として生きることを決心した『始まり』の時。その両方の意味を持つ話が、この『追憶編』なのだと思う。なので、るろうに剣心はこれで完結ではなく、『始まり』なのだ。

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