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「アイアンクロー」。プロレスにわかのPRIDE世代が見ての感想。

「アイアンクロー」を見る。

自分はPRIDEと旧K-1で育ち、時々ボクシングを見る程度なのでプロレスには疎い。WWEに関しては昔フジで放送してた頃しか分からないので、にわか層と呼んで差し支えない程だ。そんなアメプロぼんやり層の自分が本作を見た感想を。

呪われた一族」と呼ばれた家族の絆とその悲劇。「鉄の爪(アイアンクロー)」の必殺技で名を馳せた名レスラー、フリッツ・フォン・エリックが自らが果たせなかったプロレス界の頂点を息子たちに託す。息子たち4人は父の夢を叶えるべく一丸となって同じプロレスラーの道に進むのだが。。。

息子たちは父親を尊敬していた。父親は家族を愛しても野望を諦めきれなかった故の悲劇。「家族だから」とか宗教とかでなく寄り添う事が悩みに対する救いであり必要だったと痛感する。唯一の存命者。次男ケビンは妻に出会い家庭を持ち、エンドロールで結婚40周年、子供4人孫10人以上の大家族写真が流れた事が救いだった(赤ちゃんが宙を浮いていたが)。

思い出したのはボクシングの亀田三兄弟。史郎氏は現役で名を馳せたボクサーではないが、親父の命に従い、親父の夢を叶えた所は同じ。当時はメディアも盛り上げに加担。そして叩き落した。ケビンがリック・フレアーとの王座戦を反則で台無しにする辺りは、次男大毅が内藤大助との王座戦を反則塗れにしたのにも重なる。自分が演じたヒール人格に飲み込まれそうになった事もあっただろう。こちらは最悪の事態になってない分、マシだった。長男興毅は現在「3150FIGHT」という自主興行を催し業界再興に取り組むも、組んだ世界戦が相次ぎ中止、エキシビションマッチでお叱りを受けたりと、過去の行いのカルマを背負ってるようにも見える。

ザック・エフロンは所謂アイドル役者の印象で近年マッチョ化が進んでるとは聞いていたが、鍛え抜かれた肉体は本物のレスラーも凌駕するそれだった。彼が演じるケビンよりマイクが達者な三男デビッドに脚光が当たるところから始まる全編苦悩の表情。デビッドの死で音楽を手放した五男マイクの虚ろな瞳、事故で左脚を失う四男ケリー。不穏な空気を纏う中で彼らを次々襲う悲劇に心を痛める。義足をはめてリバビリに励むケリーが激痛に叫ぶ場面が特に痛々しく、あれを見ると、同じく片足を切断後にマットに復帰した谷津嘉章が如何に苦しい想いをしてきたかが分かる。(奇しくも谷津もケリーと同じくモスクワ五輪を政治的事情で欠場。「幻の金メダリスト」の異名を取った。)
キャスト陣が全員好演。ザック・エフロンの見る目は今作で変わった。最後の呪縛解放の涙も良かった。

最近は格闘技・プロレスを扱う作品企画が増えてるようで、例えばクリス・ヘムズワース主演でハルク・ホーガン伝記映画。つまり猪木舌出し失神が再現されるかも。アマレス王者「霊長類ヒト科最強」と呼ばれたマーク・ケアーをロック様ことドゥエイン・ジョンソンが演じる企画も。つまりPRIDEが映画で再現されるかも?藤田和之は誰が演じる?

今後マットファンも唸らす作品が沢山見られそうな。期待。なお当日の客層は9割男性で見た目50代以上が殆どでした。


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