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1クール13話の「大氷原の小さな家」を妄想する⑨ 第8話

お久しぶりです。細々と続いております。
会話を楽しんじゃうから長くなるんだな。いくらでも書けそうだもんな。
 
※『聖闘士星矢』の二次創作
※小説ではありません。筆者の脳内アニメです。頭のおかしいオタクの妄言が好きな人向け
※↓↓この続き


【受け継がれる聖衣】

 「聖闘士とは何か? ――アイザック」
「アテナを助け、地上の平和を守る特別な戦士です」
「特別とは? どう特別なのだ? ――氷河」
「聖衣(クロス)を着て、小宇宙(コスモ)を燃やして戦います」
「そうか。お前たちが手に入れようとしている白鳥星座(キグナス)の聖衣の特長は?」
(二人同時に)「永久氷壁から生まれた氷の聖衣!」
「そうだ」
「オレ楽しみだなあ、キグナスの聖衣を着るの!」
「待てよ、オレだって黙って譲る気はないぞ」
「いやいや譲れよ兄弟子だぞこっちは」
「関係ない! 実力だろ」
弟子たち、にらみ合う。
「――聖衣は一つではない」
二人は大きく見開いた目でカミュを見つめる。
「お前たちが受け継ぐ聖衣はキグナスだけとは限らない」
「……べ、別の氷の聖衣があるんですか?」
「オレも聞いてないですよ!」
「水瓶座(アクエリアス)」
二人、息をのむ。
「もし、私を超えるなら……究極の凍気、絶対零度を身に着けるなら……その者にこそアクエリアスの黄金聖衣は受け継がれるだろう」
氷河とアイザック、当惑の表情。
 
「そ、その、カミュのアクエリアスの聖衣はキグナスよりもっとすごいんですよね?」
アイザック、意味ありげに氷河に目くばせする。
「そ、そうだ、聖衣ってオレまだ一つも見たことないです。キグナスの聖衣は永久氷壁に隠されているんですよね? でもカミュのアクエリアスの聖衣は……」
「ああ、私の部屋にある。――触れようなどと夢にも思うなよ、私もまだ譲る気はない」
カミュが珍しく悪い笑顔を作る。弟子たちもホッとして鏡のように笑顔になる。
「見るだけならすぐできる。来週、聖域へ行くからな。お前たちも一緒だ」
「あー、また突然に!」
「氷河は初めてだな。どんなところか一度は見ておいた方がいいだろう」
「は……はい」

【聖域見学旅行】

聖域に到着。(※1)
入り口で二人は待たされる。門衛とともに先に中に入っていったカミュが戻ってくる……(※2)
「カ、カミュ!」
(カメラ、足元からティルトアップ)(※3)
黄金の輝きに包まれたカミュは、なぜか憮然としている。
「行くぞ、十二宮の説明は歩きながらしよう」
そっけなく足早に歩き始めた。
口が半開きになっている氷河にアイザック「カミュ、あれ照れてるんだぜ。……着るところも見せてくれたっていいのになあ」(※4)
 
第一の宮、白羊宮。
「誰もいないんですね……」
「ここを守るはずの男は長期欠勤中なのだ」
「カミュも宝瓶宮に普段いないし」
「誰のためだ?」
「ありがとうございまーす!」
金牛宮、双児宮、巨蟹宮……時々弟子二人に競走させながら、登っていく。
「アテナはこのてっぺんに、住んでらっしゃるんで、すよね?」(←アイザック、ちょい息切れ)
「そうだ。だからこの十二宮の道行は、誰もが文字通り自分の足で進まねばならない。テレポートもできない」
「てれ、ぽーと、できる、聖闘士が、いるん、ですか!」(←氷河、だいぶへばっている)
「ああ。例の欠勤中のアリエスなどがそうだが、黄金聖闘士なら皆少々の超能力の心得はある」
 
天蠍宮が近づく。全身で息をしている弟子二人と涼しい顔のカミュを迎えたのは――
「よーう」
「ミロだ!」
黄金聖衣をまとったスコーピオンのミロ。
「お子様たち、ちょっとは背が伸びたか?」
「久しいな、ミロ。お前こそずいぶん大きくなって」
「お前はオレの親戚か? もうお前と大して変わらんからな。あとそろそろ声変わりしそうな感じなんだけどわかる?」
「わからん。親戚じゃないからな。――お前たち、先に行っていろ。すぐに追いつく」
弟子二人がいなくなると、カミュはどこからともなく手のひらサイズのコフィンを出す。
「受け取れ、土産だ」
「えっ触って大丈夫か? 手が凍りそう」
「そんな危険なものは渡さない」
ミロがこわごわ受け取ったコフィンの中には、赤い実が3つ。
「これ……サクランボ?」
「シベリアリンゴだ」
「リンゴ? ちっさいなー! ありがとう」
「こないだのマニキュアの礼でもある」
「しっかしフリージングコフィンにリンゴかー……なるほど、最初から棺桶に入れておけばそれ以上死にようがないと」(※5)
「すまない、そんなつもりでは」
「わかってるわかってる」
 
氷河とアイザック、ふうふう言いながら走っている。
「あれが、ほうべい、きゅうだ!」
「あっ……」
宝瓶宮の入り口に立つその姿は……
「カミュ! いつのまに!?」
「お前たち、ずいぶん遅かったな」
「テレポートですか!?」(※6)
「十二宮ではできないと教えただろう。……さて、お前たちはここまでだ」
「えっ」
「いやいやいやオレたちまだ行けますよ!」
「この上は走るだけでも危険なのだ……有毒のバラが敷き詰められているからな」
「凍らせれば……」
「双魚宮の主に怒られてもいいならやってみろ」
アイザック、大きくため息。
「私はこれから1か月、ここで守備につくことになっている。ずいぶん留守にしてしまったからな」(※7)
「ということは」
「アイザック、お前が氷河を連れて帰れ」
「わあ、重大任務」
「家に着くまでが修行だ。わかるな?」(※8)

下りていく二人、磨羯宮でシュラに会う。
「お前たちだけでシベリアに帰るのか。パスポートは持っているか」
「持ってます」
「師匠よりは出来がいいようだな」(※9)

【ムウの館にて】

1か月後。聖域からの帰り道、聖衣箱を背負ったカミュは荒涼とした山岳地帯にいる。
細い一本道を駆け抜けると……塔がある。上階の開いた窓へ跳躍。
「これはこれは、珍しい客人ですね。ジャミールへようこそ」
「突然すまない。ここの暮らしはどうだ」
「ご覧の通り、侘しいものですよ。長期欠勤者なので分をわきまえて」
「……」
部屋の中には様々な器具が並んでいる。全体が乾いていて埃っぽい。
 
夜。ランプの乏しい明かりの中、二人は小さなテーブルを囲んでいる。
床の上に水瓶座の聖衣箱が置かれている。作業台の上に聖衣。
 
「あなた、何を言ってるんですか……まだ頑是ない、たかだか8歳の子どもに」(※10)
「そうだな……私は大人気なかっただろうか」
「大人だと思ってるんですか自分のこと」
「……」
「私たちは歪んだ生を生きていますからね。特にあなたや私は自然の法則を曲げる力を持っている……身のうちに流れる時間もまた歪んでいるのかもしれません……話が逸れましたね」
「ああ、ずいぶんとな。不思議なことだ。ミロとしゃべっていてもこういう話にはならないのだが」
「そうでしょうね、あの人はきちんと『少年時代』を生きているでしょうからね」
「贅沢なやつだ。――聖域にはもう戻らないのか」
「おや。久闊を叙しにいらしたのかと思っていたら」
「純粋な興味だ。探りにきたわけでも派遣されてきたわけでもない」
「そうですね……」
幼児の泣き声がする。3歳くらいの子どもが奥から現れる。
「その子が」
「しばらく前から預かってましてね。面倒を見るかわりに食糧を届けてもらっています」
ムウ、ぐずる子どもを膝に抱き上げる。
「ときどき構ってやらないとうるさいので大変ですが、あたたかいのは助かりますね」(※11)
腕の中の幼子を見ているムウの顔がランプの火で半分照らされている。伏せた目が優しげだ。
カミュは二人を黙って見つめる。
ジャミールの星空の下、暗い岩がちの大地にそびえたつ塔。その一室だけが明るい光を外に投げかけている。

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注釈、もとい蛇足

※1 飛行機旅のシーン3つほど、BGMベースで入れる。
乗り継ぎはどこから? サンクチュアリ付近に下りたつのは小型の聖域関係者専用機のみと思われる

※2 門衛に見えるが、雑兵スタイルのアイオリア。彼に突っ込んでいくと話が長くなりすぎるのでセリフは特になし、カミュと少々言葉を交わす様子が遠くから観測される程度

※3 下から上にカメラをふって映す手法。わざわざ名称調べた

※4 セーラームーンばりの変身シーン(=聖衣装着シーン)を入れてもいいのだがこのシリーズの空気感には合わないので割愛

※5 ミロの名はギリシャ語の「リンゴ」から採られているという根強い仮説がファンの間に存在する

※6 もちろん光速で走って抜かしてきたわけです

※7 なんとなくの想像だが、平時において十二宮の守備はフルではないだろう。(そもそも長期欠勤者・行方不明者が複数いる)3~4人でシフト制、みたいな。カミュは弟子育成を本格的に行っているため、だいぶ免除されているものの、時には黄金聖闘士の義務を果たさなければならない

※8 以前、アイザックの兄弟子(修業リタイア済)が彼を連れ帰った。これも修行の一環。
弟子たちが帰った後、カミュは宝瓶宮で何をするのか? 何か秘密があってもおかしくない。原作中ではついに発見されなかった形見の品を用意しているなど。これはむしろさらなるスピンオフ作品を必要とするだろう

※9 シュラは行きもいたのだが、二人は疲労のあまり彼の存在に気づかず通り過ぎた。シュラの方でもわざわざ挨拶する必要はなく、無害な子どもたちをそのまま通らせた。
ほんの数秒のシーンだが、アイザックとシュラはちょい面識があるという設定を生かしてみたかった↓↓

※10 第7話終盤の、マーマに関する氷河との会話について話している。
「目で見なければ見えないか」のセリフを考えたとき、ムウ様が速攻でこう突っ込んだ。私の脳内で。

※11 第7話では、「寒い」が小さなキーワードだった。というかこのシリーズ全体で「寒さ」は「孤独」を表しているかもしれない。
カミュと弟子たちの間にもあたたかいものはあるが、ムウ・貴鬼コンビの方が親子感がある。
貴鬼がいつからムウの元で暮らしているかは原作では明らかではない。ここでは2~3歳と想定。

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