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★愛を綴る日記★ #クリスマス金曜トワイライト《永遠の星よ。愛しい星よ。》リライト


僕は、白いテーブルの上の手帳を手に取った。

そこには貴女の書いた、少し神経質そうな綺麗な文字が並んでいる。

日記だ。それも僕に宛てた手紙のような。

ほぼ毎日書いてある。

僕はページを捲りながら、貴女の想いを感じていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇


こころから愛しているあなたへ
こころから愛しいあなたへ 

あなたとの日々を綴る日記



2018.4.12

今日からあなたとの日々を、日記として残しておこうと思う。これまでの事も書いておけば良かったとは思うけど、今更しかたない。でも、区切りとしてはちょうどいいんじゃないかな。だって今日から私達は一緒に住む事になったんだから。これからよろしくね。ずっと一緒にいようね。今日はとりあえずベッドだけ組み立てた。まだ、家具もないスッキリとした部屋。これはこれでなんかいいものだね。明日は荷ほどきやら、家具の組み立てやら色々と大変だからこの辺にしておこう。おやすみなさい。今日も愛してます。


2018.4.13

今日は朝から家具の組み立てをした。私が選んだ白で統一した家具。あなたは不器用ながらも文句も言わず、頑張って組み立ててくれていましたね。最後にテーブルに赤いナデシコの花を飾って完成。あなたは「可愛い花だね。控えめで君のようだ」と言ってくれましたね。ちなみに赤いナデシコの花言葉は「純粋で燃えるような愛」です。控えめに見えて実は情熱的なのです。今日はお疲れさまでした。そして、今日も愛してます。


2018.4.14

今日は引っ越しのお祝いに、ふたりで教会のある通りに面したイタリアンバルに行きましたね。度数の高いベルギービールを、あなたが一気に煽ろうとするので「このビールはゆっくり飲むものよ」と伝えると、「このビールちょっとぬるいなあ」だって。だから「キンキンに冷えたビールだけが美味しいビールじゃないわ」と教えてあげましたよね。あなたは「えっ そうなの」と言いながらも、私の言う通りにゆっくりと味わってくれました。お料理も美味しかったね。また何かの記念日に来ようね。お茶目なあなたを今日も愛してます。

2018.6.9

私が近くの教会へ礼拝に行くと伝えたら、「僕も一緒に行くよ」と言って、付いてきてくれましたね。嬉しかったよ。初めての礼拝でオドオドしている可愛らしいあなたも好き。これからずっと一緒に行けるといいな。今日も愛してます。

2018.8.12

お盆休みを利用して、あなたは大学時代の友達と自転車で旅に出て行ってしまった。今日から3日間、家でひとりぼっち。自転車が趣味だからって、私を置いてけぼりにするなんて酷いやつ。浮気しちゃっても知らないんだから。でも、気を付けて帰って来てね。悔しいから言いたくないけど、今日も愛してます。

2018.9.8

あなたが突然、自転車のロードレースに出たいなんて言い出した。仕事が忙しく、イライラしてる日も多かったので心配にはなったけど、あなたを引き止めることなんて出来ない。あなたならできる。あなたが決めた道を行けばいい。私はあなたを応援するから。頑張れ! 今日も愛してます。

2018.11.18

あなたと出逢った日の夢をみた。あれは数年前、自転車に乗ってスタンドコーヒー屋さんに行くと、あなたはそこにいた。少し驚いたような眼で私を見つめていた。私も吸い寄せられるように、あなたの眼を見つめ返した。あなたは我に返ったように立ち上がると「素敵ですね。その自転車。赤色がとても似合ってます」なんて言ってくれましたね。私は「ありがとうございます」ってドギマギしながら答えるのが精一杯でした。「僕も自転車好きなんです」。そう言って照れるように笑ったあの笑顔、今でもよく覚えています。あの日、声を掛けてくれてありがとう。あの時のドキドキが蘇ってきます。もちろん今日も愛してます。

2018.12.25

昨日はクリスマスイブだからと、礼拝のあと、教会の近くのイタリアンバルに再訪。酔って帰ってきたあと、シャワーを浴びて出てきたあなたは、いきなり抱きつきキスをしてくれましたね。まだお酒の匂いが残ってたけど、混ざり合う唾液は甘く、体の力が抜けていきました。それから、あなたにされるがままに体を委ねました。あなたはすぐにそのまま眠ってしまったけど、私はなかなか眠れず余韻に浸っていました。こうして行為を思い出しながら書いていると、あの初めてあなたに抱かれた夜を思い起こします。小柄に見えたあなたでしたが、シャツを脱いだ瞬間、逞しい肉体が飛び出してきました。厚い胸板、そして硬い二の腕に抱かれていると、本当にとろけるような気分でした。でもエッチのあと、私の髪を撫でながら少しは甘くやさしい言葉も掛けてね。メリークリスマス。今日も愛してます。

2019.1.1

今年もあなたにとって良い年でありますように。私達の幸せが永久(とわ)に続きますように。あなたの引いたおみくじは大吉でした。幸先のいいスタートですね。私は末吉。まあ私の方は神様が違うので、お遊びという事で。今年も宜しくお願いします。今年も愛してます。

2019.4.12

今日は同棲を始めてから1年目の記念日。あなたは、仕事を早く切り上げて手料理を振る舞ってくれましたね。私が買って帰ったシャンパンで乾杯。素敵な夜でした。それにしてもあなたの手料理はヘルシーで美味しく、私の舌を喜ばせてくれます。いつもありがとう。たまにはジャンキーな物も食べたくなるけどね。美味しいもの作って貰っておいて、そんなこと言うのは贅沢か。ゴメンゴメン。あなたも、あなたの作る料理も愛してます。


2019.4.13

昨日、あなたの手料理の事を書いて思い出したのだけれど、初めてあなたと出逢った、あのスタンドコーヒー屋さんで、数年ぶりに再会したのが私達の付き合うきっかけでしたね。あの頃の私は、仕事が忙しかったのと失恋のせいで激やせしてしまってました。そんな私を見て心配したあなたは「しっかり食べないと駄目だよ。僕が料理を作るから今度ウチへおいで」と言ってくれました。私はそれから休みの日には、あなたの家で料理をご馳走になりました。同棲している今でも、料理はあなたの担当になっていますね。私は朝のコーヒー担当。毎日、愛情込めて煎れています。美味しいと言って飲んでくれてありがとう。今日も愛してます。

2019.7.30

たまには休みの日にどこかへ連れていって欲しいな。ロードレースへ向けての練習があるから仕方ないけど。ごめんなさい。こんな風に考えてしまう私は悪い女かも。ちゃんと応援しなくちゃだね。体に気を付けて頑張ってください。頑張るあなたを愛してます。

2019.9.21

私もなにか趣味でも見つけなくちゃ。あなたのいない時間をどう利用していいのかわからないよ。スマホをいじりながら、ただあなたのことだけ考えてしまう。一緒に住んでいるのにおかしいね。早く帰って来てくれるといいな。そしたら私の話しをいっぱい聞いてね。それから最近、あっちの方がご無沙汰です。そろそろどうかな。今日もやっぱり愛してます。

2019.11.9

最近あなたは朝、仕事に行くギリギリの時間まで起きて来ない。冷めたコーヒーだけ一気に飲みほして出ていく。トーストも食べて行けばいいのに。ちゃんとした生活をしないと身体にも響くぞ。心配してるんだから返事くらいしてよね。いつも愛してるから。

2019.12.25

あなたはクリスマス礼拝に寝坊した。昨日、イタリアンバルで飲みすぎて宿酔いだったから。だからあれほど言ったじゃない。もう飲みすぎよ って。最近のあなたはだらしない。「そんなんでレースに勝てるの」なんて、つい言ってしまった自分にも自己嫌悪。いけない。いつでも笑顔は忘れずに だった。メリークリスマス。でもこれはあなたへの愛情なのですよ。

2019.12.31

この間の事を気にしてか、あなたの来年の抱負は《真剣にロードレースに取り組む》。生活や体調管理をしっかりするということはとても良い事です。頑張ってね。応援してる。けど、私とのこともそろそろ真剣に考えてくれてもいいんじゃないかなー。こんなに愛しているのに。

2020.2.5

あなたの作る料理が、ちょっと飽きてきた気がする。ヘルシーにこだわり過ぎて、調味料も最小限だし。料理教室でも行ってみようかな。やっぱり料理は女の愛情表現のひとつだもの。愛するあなたのために。

2020.5.31

ちょっと、その反応ひどくありませんか。職場の上司に食事に誘われた話しをした時の。「あーそう 行ってくれば」って。土曜日ですよ。仕事がない日のディナーでホテルのレストランですよ。心配してくれないのですか。あなたはそのあと、すぐに寝てしまいましたよね。疲れているのはわかりますけど、もうちょっと、、、期待しても無駄なのかな。あなたの愛をください。

2020.8.19

今年もどこへも連れて行ってもらえなかった。なんのために一緒に暮らしているんだろう。仕事もロードレースも頑張っていることはわかる。でも、私の存在意義は。私のこの先の人生は。あなたは考えてくれているのでしょうか。このままズルズルと関係を続けていて大丈夫なのかな。愛してはいるんだけどな。

2020.10.3

昨日、前に食事に誘われた上司と関係をもってしまいました。あなたとの事を相談したくて。一緒に食事に行って。泣きながら話す私を、彼はとても優しく聞いてくれたから。あの時の私にはホテルへの誘いを断ることが出来ませんでした。彼には奥さんと子供がいるので、一度きりの間違いです。ごめんなさい。でも私にはあなたのことがわからなくなってしまっているのです。まだあなたのこと愛していると信じたい。

2020.11.27

浮気をしてしまった後ろめたさから逃れられないでいます。あなたの前では相変わらず笑顔を作ってはいるのですが、気持ちが耐えられそうにありません。どうしよう私。あなたはロードレースの成績がいいようで、最近ご機嫌ですね。その様子を見ているのも素直に喜べなくなっています。愛っていったいなんなのでしょう。

2020.12.10

今年もクリスマスには、礼拝のあとでいつものイタリアンバルに行こうと、あなたは予約を入れてくれました。ウキウキしてましたね。私は教会で懺悔すれば、いつものようにバルで楽しく過ごせるのでしょうか。罪深き私をお赦しください。慈悲深き愛で。

2020.12.24

今日はクリスマスイブ。街はイルミネーションが輝き、幸せそうな人々とすれ違いました。羨ましかった。いつまでも私の心は晴れない。むしろ楽しそうな雰囲気が私の心を落ち込ませる。愛を取り戻したい。


2020.12.25

なんだか、あなたはワクワクしているようなソワソワしているような感じで落ち着きなく部屋をうろうろしている。これから教会へ向かいます。本当の愛を探しに。




◇◇◇◇◇◇◇◇


ステンドグラスにパイプオルガンのやさしく神聖な音色が響いている。綺麗な聖歌が遠くから聞こえてきた。

あなたは静かに瞼を閉じている。

私はあなたの手をそっと両手で包み込んだ。胸が苦しくなる。

あなたはピクッとして眼を開いた。

横を向いてあなたと眼を合わせる。微笑んでいた。

自然と笑顔になれたのは、どのくらいぶりだろう。

ヨダレなんか垂らしてる。可愛い。

私はハンカチであなたの口許を拭いた。

あなたは照れ臭そうな、それでいて嬉しそうな笑顔を見せた。



教会を出てゆっくりとイタリアンバルまでの道を歩いた。

2人の影は長く伸びている。もうすぐ陽が暮れる。

『今日もいい日だったね。ありがとう』

あなたの眼を見て、自然と口にしていた。

『今年もいい年だったね。ありがとう』

あなたが返した。




イタリアンバルに着き、生ハムとチーズ、それからビールを注文した。

『乾杯』


そしてあなたは語りはじめた。

スポンサーが降りてチームは解散し、メンバーは各々の道を歩むこと。そして自分は自転車のロードレースを今年で辞めること。


あなたは姿勢を正すと、礼拝に寝坊した時のこと、いつも仕事で疲れ切って寝落ちすること、たくさんのワガママや、いつも生活がだらしないことを謝った。

なんで今、そんな話しをするのだろう。


するとあなたは静かにポケットから指輪の入った青い箱を出した。メッセージカードが添えられている。私の前にそっと置く。


あなたがグラスで、僕がビール。
目いっぱいまで満たしてあげたい。
あなたとクリスマスを一緒にすごせる幸せに感謝します。
いま愛していると伝えたい。
僕の愛の真ん中にはいつもあなたがいるから。


あなたがこんなキザな言葉をくれるなんて。

これまで一度もなかったのに。



『,,,,結婚してくれるかな』



私の頬を温かい滴が流れ落ちた。

素直に嬉しかった。この言葉をずっと待っていた。

私は顔をクチャクチャにしながら満面の笑みで、あなたの手をやさしく握った。



『約束するよ。この気持ちが永遠だと』

あなたは掠れる声でそう言って、私の指に銀色の指輪をはめてくれた。



感動で声も出ない。

これ以上の幸せな事はなかった。




◇◇◇◇◇◇◇◇

2020.12.26

昨日のあなたからのプロポーズすごくすごく嬉しかったよ。だってずっと待ちわびていた言葉だったから。これまでの人生の中でダントツ一番に幸せな日だった。婚約指輪をはめてくれた時の感動、一生忘れない。でもね、あなたがくれたメッセージカードの言葉を借りるとね、私のグラスには、あなたが満たしてくれようとしたものより先に、他のもので満たされてしまったの。それはやがてグラスから溢れ出て、私の心を蝕んでいき、遂にはあなたの愛を信じる心をグチャグチャにしてしまったわ。遅かったのよ。あなたの愛で私の心を先に満たしてくれれば良かったのに。なんて、あなたのせいにしてはいけないわね。ごめんなさい。ただひとつ言えるのは、永遠に続く気持ちなんてないのよ。だってずっとそう思ってた私がこうなってしまうのだから。私はもうあなたの気持ちに答えることができません。過ちを犯してしまった私は、例えあなたが赦してくれたとしても、私自身が赦せないのです。最後に素敵な想い出をありがとう。どうかお身体に気を付けて、お元気でいてください。テーブルの上に指輪とこの手帳、それからダリアの花を置いていきます。さようなら。永久に愛するはずだったあなたへ。



◇◇◇◇◇◇◇◇


手帳の最後のページを読み終えた僕は、白いテーブルの上に置かれた花を見つめている。

その綺麗な花は、白や紫やピンクの色が混ざり合い、不思議な魅力を醸し出している。人を惑わせるような美しさだ。


ああ、こころから愛したひとよ。
こころから愛しいと思えたひとよ。

永久(とわ)の星はいったい何処へ。

僕の愛しい星よ。




【END】




今回リライトさせていただいた原作はコチラ

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《追記》

今回の企画の締め切りが延びたので、3作品目に取り組んでみました。

この作品は唯一、原作では明確にハッピーエンドで終わる作品ですが、そこへ至る過程で、本当にそれで良いのか? という疑問を持たせるところがありました。結婚しても幸せにはなれないかもしれないと思わせる記述。

なので、女性側から日記という形で書いてみました。

この愛を綴る日記の手法は、最近お友達になった《ぼんやりRADIO 》さんが乗り移ってます。(ただ単にパクったとも言う)

真似して書こうと思った訳ではなかったのですが、自然とこういう風になってしまいました。それほど、好きなんでしょう。



私が欲しい賞は、【企画を一番楽しんだで賞】。

とても楽しめたので、自分であげちゃいます。


読んでいただいた方、どうもありがとうございます。

スキしてくれた方、僕も大好きです。

コメントくれた方、コメント欄でもたくさん楽しませていただけました。愛してます。

ゆる~く 思いついたままに書いてます 特にココでお金稼ごうとは思ってませんが、サポートしてくれたら喜びます🍀😌🍀