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小春のプロジェクトレポート①-1


さあ、ようやくプロジェクトのレポートを諸君に発表できる日がやってきたわい。

レポート提出者は、最初からこのプロジェクトに参加してくれた小春じゃ。

さて、何が語られているのか楽しみじゃろ。

では早速、被験者である小春さん、張りきっていってみよう!


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プロジェクトに参加して、2年と少しの間の出来事をここで発表させていただきます。

このプロジェクトを通じて、私は貴重な経験をし、多くの事を学びました。
それは決して楽しい事ばかりではなく、実際にカウンセリングにかかるほどの大きなダメージを心に負いました。

それでも私はプロジェクトについて語り、伝えなければなりません。
それでなければこのプロジェクトへ参加した意味は薄れてしまうのだから。


でも先ずは私自身の事と、参加した動機についてから始めようと思います。

私は現在、この大学の4回生。人類学を専攻している。この学部を選んだのは、人間という生き物の理不尽さ、その行動理由について知りたかったから。

私という人間について語るには、たぶん私の生い立ちについても知っていただかなければならないのでしょう。

私の両親はずっと仲が悪く、一番古い記憶でもふたりが喧嘩をしていました。私は布団を被り、耳を押さえて怒鳴り合う声が止むのを待っていた。

私が小学校へ上がる頃、父は家を出て行った。母は悔し涙を浮かべながらその鬱憤を晴らすように、私を叱責するようになりました。暫くすると、その母も男を作って帰りが遅くなる日が増えていったのです。

私は学校から帰ると宿題を済ませ、母が買っておいた惣菜を冷蔵庫から出し、レンジで温めて食べました。
観もしないテレビを点け、本を読んだり絵を描いたりしながら寝るまでの時間を潰すという日々を送っていました。
風呂は、母からの言い付けを守り、3日にいっぺんしか入らなかった。

ウチにはお父さんがいないんだからお金がかからないように節約しなさい、というのが母の口癖でした。

中学生になると背が伸び、私は母の背丈を越えた。すると、母からの理不尽な叱責は無くなったが、今度は目も合わせなくなった。

私が中学3年生になると、母は再婚相手だと言って、男を家に連れ込んだのです。
男が家に居着いてから数日経った夜中、布団を捲る気配がして目を開けると、男が私のパジャマのボタンをはずそうとしていました。息が酒臭かった。テニス部だった私は、部屋の隅に立て掛けてあったカバーのついたままのラケットで、男の横面を思いきり打ち付けてやりました。

たまに来ていた父からの連絡はずっと無視していましたが、そこで初めて父に連絡を取りました。
寮のある市立高校に通う為のお金を出して欲しいと頼み込む私。父はそれを快く受け入れてくれた。
私は早くその薄汚れた家から逃げたかったのです。

父の仕事は順調なようで、大学に入るお金も出してくれると言った。代わりに月に一度、一緒に食事をするというのが父からの条件でした。

父は私に合うのが嬉しいようで、食事の時にはいつもニコニコして饒舌でした。私も父に合わせて笑顔を作り、面白くもない話でも楽しそうに聞くように努めました。機嫌を損ねないように振る舞えるようになったのは、生きていくための成長だと自分で思えました。

まわりのクラスメイトを見て、なぜ皆、人を信じようとするのだろう、友達なんて自分を守るための手段に過ぎないのに。と、私は常に疑問に思っていました。ましてや恋なんて一時の勘違いなのに、人々はそれに気付かないふりをしている。

私はそういう人間の感情のメカニズムについてとても興味を持ち始めた。
と同時に、自分に強いメンタルを求めたのです。

そして私はこの大学を志望し、乾教授の人類学を選んだ。

実際に講義を受けてみると興味深い事柄もたくさんあったが、なかなか私の最も知りたいことは知り得なかった。

そうこうしているうちに、私は大学の二回生となりました。
夏季休暇が終わって間近の講義終了後、廊下で乾教授が他の学生に話している内容が耳に入ってきたのでした。

プロジェクト、箱庭、自力で生活。

なんの話だろう?
そう思いながらも胸が見知らぬ期待でドックンドックンと高鳴っているのを感じました。すると次の瞬間には乾教授の前に詰め寄るように立っている私がいたのです。

教授の部屋に連れていかれ詳しい内容を聞いた私は、こんなチャンスは他にはないと思い、即答でやらせてもらえるように頼み込みました。
教授のほうも、他にまだ被験者となる学生をみつけられていないという事で、了解してくれました。

私は強くなるためのチャンスを掴めたと思った。
それから他のメンバーも決まれば、箱庭における狭い人間関係での、人の心理や心の動きについても学ぶことが出来る。

ひとつ計算違いだったのは、他の学生が誰も決まらないうちにプロジェクトが開始されたことです。
でもそれもとりあえずは、私自身を鍛える事から始めようというポジティブな気持ちに切り替えられました。

そうして先ずは、私と乾教授のふたりだけのプロジェクトが開始されたのです。



小春のプロジェクトレポート①-1 終わり




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