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フリーライターはビジネス書を読まない(30)

燃え尽きた街

新長田駅の北側エリアへ入る。このあたりは、長田区と須磨区との境界が接している。
「なんや、これ……」
目の前の広がる光景は、街ごと地上から消滅したような印象だった。

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すでに瓦礫の多くは片付けられていたものの、形だけ焼け残ったビルはそのまま手付かずだったし、ここに住んだり仕事をしたりしていた人たちが日常使っていたであろう生活の痕跡が、焼け跡から垣間見ることができた。

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立ち入りの制限はないようだ。まさに「焼野原」のなかへ、ゆっくり足を踏み入れる。
爆撃に遭った街って、きっとこんな感じになるんだろう。生き物の気配がなかった。
焼け跡の真ん中あたりまで来た。
自分の周り360度、どこを見ても焼野原。もちろん、初めて見る光景だ。元がどんな街だったか想像すらできなかった。

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余談だが、街が復興してから、同じ場所を訪れようとしたことがある。が、そのときは、どう探してもたどりつくことができなかった。あの焼け野原と復興後の街並みを、脳内で照合できなかったのだ。
その後、神戸大学にある震災文庫の協力を得て、震災前の地図を手に入れた。それと当時撮影した写真を照らし合わせて、あの日自分が立っていた場所を特定できた。

今は住宅街になっていて、焼け野原だった面影はない。だが震災後からずっと放置されている、小さな空き地がある。持ち主がいなくなってしまったのかもしれない。

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▲現在の同じ場所

話を戻して――
本当は動画も撮りたいくらいだったけれど、今みたいにスマホで手軽に撮れる時代ではない。手持ちのフィルムにも限度があるから、インパクトの強いポイントだけを撮影した。
きっと凄まじい燃え方だったに違いない。火災の熱で崩れたのか、地震の揺れで倒壊したのか分からないが、まるで巨大な足で踏まれたように、真ん中からM字型に崩れたビルもあった。
家もビルも公園もすべて地上から消滅した光景は、たぶん一生忘れられないだろうと思った。

(つづく)

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