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朝の会話

『本当に記憶無いんですね?』
イヤホンから聞こえて来るような
滑らかな澄んだ女性の声

早朝のプラットホームでの
男女の会話である

確かめるような
責めるような
柔らかだが
しっかりとした声である

「記憶に無い」なら
相手の記憶のことだろうが
「記憶無い」となれば
不特定の誰かのことだろう

ああ、朝から悩ましい
小説の冒頭に持っていきたい
最良のフレーズだ

会社なんか休んで
今すぐ書き始めたい
そんな衝動に駆られた

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