見出し画像

玉川学園 秋入学を考える

 2021年5月2日、玉川学園が将来的に秋入学を導入することが分かりました。

※ 日本経済新聞記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH308QR0Q1A430C2000000/

※ 有料記事です

そこで今回は玉川学園が秋入学を導入する狙いとその影響について考えていきます。

1,玉川学園秋入学導入の目的

 日本経済新聞の記事には以下の文があります。
「小学校教育の開始を半年繰り上げ、高校まで学ぶ「初等中等一貫教育学校」構想だ。国際標準の9月始業・6月終業とし、高校は6月卒業とする。2023年度にも発足させたい意向だ。」

 つまり、小学校の入学を早め、現行の高校3年6月で高校を卒業する考えです。その狙いは国際標準に合わせ、海外の大学へ入学しやすくすることで国際教育に強い学校にすることにあると思います。
 ではなぜ玉川学園は国際標準に合わせようとするのでしょう。おそらく、国際バカロレアを取得していることが影響していると思います。国際バカロレアの詳しいことについては以下の記事をご覧になってください。今回は認定校同士での受験資格が得られることに注目して話を進めていきます。

※ 国際バカロレアについて
https://www.benesse-glc.com/special/global/951

 現行の教育制度ですと3月卒業のため、海外の大学に入学するには半年待たなければなりません。去年の9月入学論の時に耳にしたかもしれません。しかし、今回の玉川学園のように現行の高校3年6月に卒業できれば、その年の9月に海外の大学へ入学、すなわち現行よりも1年早く海外の大学に入学できます。これは国際バカロレアを玉川学園が取得しているから出来る特徴であり、国際バカロレアを活かす最良の方法と言えます。
 それでは実際の受験生にはどのような利点が考えられるか。次はそこを見ていきます。

 
2,玉川学園に秋入学することへのメリット

 今回の試行は23年度、また小学校からということから対象になるのは4歳以下の子になると思います。実際に年長の9月に入学できる利点が何か考えてみたいと思います。

(1)海外の大学へ早く行きやすい
 

 一番の利点はこれです。先程も述べたとおり、6月に卒業できれば9月入学の大学に入学できます。小学校入学の生徒については国際バカロレア取得を認定出来るように授業を進めていくはずですから、卒業後すぐに海外の大学を入試することが出来るはずです。

(2)日本の大学受験の準備がしやすい

 海外への大学に行きやすいのが最大のメリットですが、国内の大学受験(現行の4月入学のままとします)でも有利に働きます。6月に高校を卒業することで受験本番まで十分な対策を図ることが出来ます。しかも国際バカロレアを取得させる授業を進めるでしょうから英語教育はかなり充実するはずです。それが受験本番で有利に働くと思います。

(3)早受けが出来る

 一般の私立小学校は11月頃にいわゆるお受験をします。しかし、玉川学園が秋入学をするなら遅くても6月~7月には受験をするはずです。(玉川学園としては望まないでしょうが)11月の本命校の前にいわゆる早受け、お試しとして玉川学園の受験を選択する保護者も出てくると思います。

 以上、玉川学園の秋入学の利点を見てきました。恩恵を受けられそうな人は限られていますが多くの選択肢を選べるという利点がありそうです。では次に本格的に導入する上で考えられる課題を見ていきたいと思います。 


3,秋入学導入への課題

 ここまで玉川学園秋入学の狙いや利点についてみてきました。次に秋入学を本格的に進めるためにどのような課題が考えられるかみていきます。

(1)中学・高校・大学入学組との連携

 記事によると秋入学を導入するのは小学校だけのようです。これは小中高の12年かけて秋入学を定着させようとする狙いがあるのだと思います。それでは中学受験・高校受験はどうするのでしょう。現在玉川学園の中学・高校入試は2月に行われています(転・編入試は7月入試に9月入学)。これを秋入学生に合わせるとなると夏には受験を行わなければなりません。そうなると、先述の小学校受験のように前受けの扱いとして、しかも入学辞退の多い受験になるおそれがあります。
 また、受験生の立場から見たらどうでしょう。玉川学園では9月入学かもしれませんが、現行法では小6(中3)生のままです。入学する場合は転校扱いになるかもしれません。また他の子よりも1回卒業式の少ない学校生活を送ることになるかもしれません。小学校入学組だけで済ませれば問題ないことですが、(学校の経営を考えれば)2月入試の扱いを考える必要があります。
 そして、そう考えると最も難しい対応が迫られるのは大学です。あくまでも個人的な予想ではありますが、玉川大学は秋入学と春入学の入試の両方行うと思います。高校3年生を入学(転校?)させて半年かけて高校卒業認定を取らせる。そして現行の大学4年の6月に卒業させる。

 これらは教員の確保や負担などさまざまな問題はありますが、小学校だけ秋入学を導入して他は行わないと言うことはないと思います。

(2)他の大学との連携


 先述したメリットの中に、時間をかけて大学受験の準備が出来ることを指摘しましたが、出来るなら日本の大学でも9月入学したいはずです。しかし、現行のままでは難しいと思います。そこで高校卒業時に大学の指定校推薦枠も取得、9月以降は外部受講生としてその大学の授業を履修、そして指定校推薦で正式に入学という流れにすることも考えられます。他大学としても優秀な人材は抱えたいでしょうし、玉川学園の指定校推薦枠を考えれば十分に考えられます。

※ 玉川学園の指定校推薦枠


 以上、秋入学導入に向けた課題について考えました。中高大の入学・卒業が大きな課題だ思いますが、時間をかけられることから十分に対応できると思います

 それでは最後に、この玉川学園の動きに他の学校はどう動くかについて考えたいと思います。

4,他の学校は追随するか


 
 最後に玉川学園の秋入学に他の学校が追随するかを考えていきます。
 結論から言いますと、追随しにくいと思います。玉川学園が秋入学の導入に踏み切ることが出来たのは大きく

①国際バカロレア(IB)を取得している
②小中高大があり、それぞれの連携が取りやすい

 この2点があるからだと思います。しかし、この2点を持っているのは玉川学園だけだと思います。つまり、今回の秋入学が出来たのは玉川学園ぐらいであり、玉川学園は自分たちが持つ利点を活かしたといえます。

※ 国際バカロレア認定校(文部科学省)
https://ibconsortium.mext.go.jp/ib-japan/authorization/


 それでは今回の動きは玉川学園だけに留まるのでしょうか。私はそうはならないと思います。確かに玉川学園のように大がかりな秋入学を全体で進めるには法整備などの様々な課題があります。しかし、6月卒業の生徒の秋以降の授業参加を認めることで段階的に秋入学を採り入れることが考えられます。そしてそれは現行の春入学を変えることなくいわゆる飛び入学の形でのものになると思います。

 また飛び入学を認めるには高卒認定を緩める必要がありますが、これも6月に高卒認定が受けられるようにすると思います。こうした小規模の動きなら国も対応できるはずです。そうすれば海外の大学にも高校3年の9月から入学できるようになるはずですし、そうなって欲しいです。


5,まとめ

 
 以上をまとめると以下の通りになります。

①玉川学園が秋入学に踏み切れたのは、国際バカロレアを取得していることと小中高大があること。

②早期入学・早期卒業、そして海外の大学に入学しやすいことが利点だが、中高大とどう連携するかが課題。

③大がかりな秋入学への移行は難しいが、大学への飛び入学と言った限定的な秋入学への移行は期待できる。

 規模はともかくとして今回の玉川学園の取り組みは将来的な秋入学へ向けたきっかけになる可能性があります。今後多くの課題が出てくるでしょうが、今回の玉川学園の取り組みがよい方向に向かうことを期待します

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?