河童57

「いる。確かにいる。」
それが解る。
感じているのは殺気、闇の中に観えているのは影だった。
あからさまに殺気を放つ影は、隙を見せればすぐにも飛びかかってきそうだ。
坊主は刃先を殺気へと向ける。
「・・こちらから仕掛けるべきか」
闇に目がなれることはない。刀を掌で絞りこんだそのとき。
地面を踏みしめる音と、シュッと空を斬る音がする。
「左っ」
坊主は音と気配へ刀を振るい身は前へと跳ぶ。
「あった」確かな手応え。
「うっ」と息を吐くような呻き声とバシャッと地面へ倒れるような音。

坊主は飛び込んだ勢いをなくす前に次の動作をつくる。
「立ち上がるかっ」
気配はないようだ。
剣先を中段に構えたまま後に歩を進めハッと息をのむ。
「背か」首筋から背に何かが触れる。坊主は丹田を中心に上半身を捻り後ろを水平に斬りつける。
「くそっ、焦りではずしたか」
枝を斬りつけた様子。
首もとに触れたのは枝葉の様だが殺気は至る場所にある。

ザザッザザザッ。
四方でこちらを囲む音がする。
闇の中で動きが早い。
「くそ、夜目が利くのか」
坊主はいまだに目が慣れない。慣れるどころか、空は厚い雲。
星のひとつも見えやしない。闇と言う言葉がそのままを言い表す。

坊主は闇に剣先をつきだし、一歩前へと踏み出す。
周りで動く気配はない。
試しに右へと刀を振る。
何の反応もない。
手応もない。

打ちおろしてくるであろう相手に、とりあえず最短距離と思われる方へ跳んでみた。
足を薙ぎ払われるのを恐れ、両足とも地面から離し跳んではみたが滑る足元。
そのまま身体を地面へと打ち付けた。
「うっ」
痛さを味わうことはせず素早く立ち上がる。
間合いを保ちたい一心で刀を振り乱す。
刀には何も当たらない。
夜目の利く相手ならば、意味もない無いが、何かをしないと恐れと不安が増してゆく。腰を落とし胆を据え、摺り足で動きながら、今の自分の場所を思い出す。
「社を飛び出し背中に大樹をあて、そして・・・跳び・・。」
二歩三歩で、大樹があるはず。
自分の場所を見失うのは明らかに不利不安。大樹に背をつけたい。
摺り足で歩を進める。
雨音しかない。
刹那雨音強まり刹那弱まる。
見えない相手はどこに。少しの間はあるはず。
「来るかっ」ぬかるんだ足元を用心して、じわじわ寄り来るのか。
早く大樹を背に当てたい。
刀を大樹があるだろう方へと差しのばす。
刀に当たるものがある。
「あった。これだ」
剣先に当たったものを大樹と確信。空かさず動き背をつける。



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