映画メモ:2013年

過去のツイート記録を見返したら自分でも意外なほど面白かったので、まずは2013年の映画に関連した投稿を時系列に並べてみました。

それでも一年を通して全16本のみ。ほとんどが劇場ではなくDVDのようです。
必ずしも当日に観たものとも限らないようですが、映画の内容ともどもよく覚えていません。11年前のことなので。

この年は4月から始まった「Barakan Morning」を始めとするInterFMの新編成に夢中になり、ラジオばかり聴いていました。



2013年01月02日(水)
映画メモ:スタンリー•クレイマー『招かれざる客』(1967)
人種の壁を超える結婚を巡り、両家族が葛藤する半日を見せていく。今でも充分に問題提起し得る題材だと思うが、描き方はやや楽天的。この作品が長く残っているのは、もう一歩踏み込んで人の心の普遍性を肯定した点にこそあるのでは。

2013年01月05日(土)
恵比寿の東京都写真美術館にドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー』を観に行った。主役の夫妻は、美術品コレクターというより、新人発掘プロデューサーであり共同制作者。どんなことも突き詰めると「哲学」や「生き方」が立ち現れてくる。佐々木芽生監督のちょっとした挨拶も。

2013年03月07日(木)
タヴィアーニ兄弟『塀の中のジュリアス・シーザー』を観た。前情報なしだったので、あとであらすじを知って驚く。囚人たちが実習としてシェイクスピア劇を演じるが、虚実の境界をぼやかすことで、作品の奥行きは増している。劇中劇そのものの力強さがより響いてくるのだ。削ぎ落としきった演出も見事。

2013年06月15日(土)
映画メモ:ジョージ・キューカー『ボーン・イエスタディ』(1950)
強欲な実業家が婚約者の無知さ加減に呆れ、知的な青年に教育係を頼むがいつしか二人は恋仲に…。演技力でテンポが良い。教科書的な授業内容に唯一古臭さを感じる。主演ジュディ・ホリデイが成長とともに可憐さを増していき見事。

チャイナ・シンドローム』(1979)を観た。原発事故の隠蔽を巡る映画で、TVキャスターを主役に据えメディアの裏側も描く。良い意味で分かりやすい展開をするが、我々が今生きる現実はこういったフィクションも超えているように思う。制作と準主役を兼ねたマイケル・ダグラスに力が入っている。
 

2013年06月16日(日)
映画メモ:クシシュトフ・キエシロフスキー『ふたりのベロニカ』(1991)
もしこの世界のどこかにもう一人自分がいたら、そして知らないうちに自分を守ってくれているとしたら…。独自の味わいを持つ恋愛もの。音楽的才能に恵まれた二役を演じるイレーヌ・ジャコブが儚げな感覚をもたらしている。

2013年06月17日(月)
映画メモ:山田洋次『隠し剣 鬼の爪』(2004)
藤沢周平の原作を、親しみやすい演出で語っていく。やや盛り込み過ぎなのか流れは滑らかでないと感じたが、時代劇に求められるものに全て応えた結果だろう。矛盾に苦しみながら信義を貫こうとする主人公をどう捉えるかで、評価もまた揺らぎそうだ。
 
映画メモ:テンギズ・アブラゼ『懺悔』(1984)
架空の社会主義国を舞台に、ある家族の悲劇的な末路が語られる。寓話に仕立て想像を促す作りで、淡々とした映像の中に、込められた悲哀が滲み出る。ただ散りばめられたユーモアもあり、悪に徹し切れず引き裂かれた人物像も奥行きをもたらしている。

2013年06月18日(火)
映画メモ:スティーヴン・ダルドリー『リトル・ダンサー』(2000)
80年代半ばの英国、炭鉱町でバレエダンサーを夢見る少年。その大きなズレに困惑しつつも、想いを託し必死に生きる周りの大人たちにこそ共感する。そして心動かされるのはいつだって家族の物語だ。演技に文字通り躍動感がある。

 
2013年08月02日(金)
宮崎駿『風立ちぬ』(2013)
やはり映画は、できるだけ前情報なしで、素っ裸で手ぶらで劇場に行くものだと思う。と偉そうに言いながら今年初だった。
ジブリの、とりわけ宮崎駿監督の作品を客観的に観ることは、日本の人にとって、かなり難しいのではないか。作品そのものの評は、だから海外からのものがよほど的を得るんじゃないか。個人的には、『ポニョ』も『ハウル』も観ていないので、『千と千尋』以来となる。
『風立ちぬ』を観終えたとき、僕の中で何かコトンと鳴った気がした。それは、底に当たった音だったんじゃないか。つまり、この先にはもう何もないよ、という場所。生の肯定を否定することは、僕にはできなかった。大きな矛盾を抱えながらも生き延びていく、そのための強さは、人にもらうものなんだな。

2013年09月01日(日)
原宿Vacantでピーター・バラカンさんが一日館長の映画祭。作品は『Cool Hand Luke』(1967、米)。初めて観た。
映画終了後、いくつか他にも音楽が主役の映画を紹介、さらに強く印象に残る作品がポロポロと出てきたところで時間切れ。映画熱が再燃しそう。映画について話し合うことほど楽しいことはないよね。こういう企画は自分もやりたい。

2013年09月04日(水)
この国で、ある種の禁忌の一つとなっている自殺の問題。とても重い内容だが、僕にとっても他人事ではない。力の入ったドキュメンタリー。無料で公開されています。レネ・ダイグナン『自殺者1万人を救う戦い』(52分)

2013年10月14日(月)
映画メモ:ダーネル・マーティン『キャデラック・レコード』(2008)
音楽好きにとって伝説的なレイベル「チェス」の勃興から終焉までを描く。個性溢れる才能との出会いの数々がとにかく楽しい。が、全てがお金と女性に集約される印象を受け、人が音楽に関わる理由はそれだけかなぁ、とも思った。

2013年11月06日(水)
映画『遠い空の向こうに』(1999)を観たときには泣いた。他に何の産業もない炭坑の町で、子どもたちは将来の選択肢なんて一つしかない。この先の日本で、右肩上がりではない時期に誰もが巻き込まれていく。そのときに痛みもあるだろう。もう何となくそれを知っていての涙だったのかもしれない。

2013年11月27日(水)
バックコーラスの歌姫たち』試写。強い光りが当たるところには、必ず濃い影ができる。ほんの数歩先にいる大スターとは実力も遜色ない。では何が違うのか…。知る人ぞ知る歌い手たちの、葛藤や苦悩も描く。歌にどうしようもなく魅せられ、そして同時に囚われている姿。イイ生き方だな、と僕は思う。

2013年12月06日(金)
イーストウッド監督『インビクタス』を観て、なぜネルソン・マンデラ氏があれほど語られる人物なのかを初めて垣間見た気がした。自国開催のラグビーW杯で、弱小チームの主将に課したのは優勝。かくして、どんな脚本家にも描けなかった物語が始まる。


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