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いくらなんでもトイレがキレイすぎるだろ、ヴィム・ヴェンダース監督「PERFECT DAYS」

12月×日
キノシネマ新宿で「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督)

役所広司扮する、トイレの清掃員として働く男の日常・・・同じような日々の繰り返しのようにも見える日常を静かにじっくりと描く映画。

悪くない、とは思う。
「何気ない日常の素晴らしさ」
なんていうありきたりなものではない、微妙な魅力のある映画だとは思う。

ただそれと同時に、どうしても気になるところがある。

男が掃除をするトイレがみんなキレイすぎるのだ。
そしてオシャレすぎる。

冒頭近くで男の後輩が、
「昨日の○○のトイレひどかったスよ、10で言えば8くらいのひどさ」
みたいなことを言うシーンがあるのだが、実際の画面には10で言えば1、程度の汚れさえ写されない。
男が掃除する前から充分キレイ。
まあ、「10で言えば8」の汚れを見せられてもイヤだけれども。

そしてオシャレ。
なんでオシャレなトイレばかりなのか、というのには理由がある。
この映画自体が、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトというものの延長線上にある作品だということらしい。
このプロジェクトは、
「見たことのないような公共トイレ」
を渋谷区に作るというプロジェクトで、
「世界で活躍する16人のクリエイター」
が参画しているのだとか。
役所広司扮する主人公の男はこの「THE TOKYO TOILET」の清掃員なので、彼が掃除するトイレはみんなオシャレなのだ。

「THE TOKYO TOILET」は、ファーストリテイリング取締役の柳井康治というヒトがはじめたプロジェクトで、この「PERFECT DAYS」という映画は、その柳井康治というヒトと、電通グループの高崎卓馬というヒト、そしてヴィム・ヴェンダース監督との共同プロデュースでつくられたものだそう。

ユニクロと電通かよ・・・、
というのは意地の悪い見方だろうか。

ここらへんに引っかかるかどうか、は見る人によるのだろう。
実際悪くはないのだ。
ほめる人の気持ちもわかる。
印象に残るシーンも多い。
雨の浅草駅周辺とか、良かった。
けれども・・・、
なにか、ごまかされているような気もする。

× × × × × ×

話はそれるが、
「海外の反応」系のまとめサイト、というのがある。
何種類もある。
主に日本の文化・習慣・日常生活などに対しての、海外の人々の反応がまとめてあるサイトで、たまに批判的な意見も載るが、大半は日本をほめたり羨んだりする意見が並ぶ。
落し物が戻って来る、とか、女性でも安心して夜道を歩ける、とか電車が時間通りに来る、なんていうのが定番。
ようは海外の人たちが「日本スゴイ」と言ってくれるのを眺めるためのサイトである。
バカバカしい、と感じる人も多いと思うが、正直言って私はあの手のサイトを見るのが好きである。
自分がなんの努力もせず、まったく社会に貢献することもない、だらだらと人生を食いつぶすような生活をしていても、こういうサイトを見るとなんとなく自分がほめられているような、自分が羨ましがられているような気がしてケチな優越感に浸れるからだ。

× × × × × ×

「PERFECT DAYS」を観て、なんとなくああいう「海外の反応」系のサイトを連想した。
この映画の舞台となる東京も、海外の人たちがほめてくれたり羨ましがったりしてくれるキレイなTOKYOだ。

× × × × × ×

なにか、ごまかされているような気がする。

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