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映画「ドミノ」「ゴジラ-1.0」のこと、

ある監督の映画を2~3本観て、「ああこれは自分には合わないな」と感じてそれ以後その監督の作品は見ないようにする、ということは良くある。
なにも進んで不愉快な思いをすることはない(しかも金を払うわけだし)。

「自分には合わない」というのは意識的に柔らかくした表現であって、誰でも見ることができる場所(note)に書いているからこういう穏当な表現を使っているだけで、実際心の中ではもっと辛辣で否定的な表現を使っているわけだ。

で、見ないようにすれば良いのだが、たまにその監督が「ちょっと面白そうだな」という映画を撮ることがあって、それを観るかどうかはちょっと悩むところではある。
たいていは「ああやっぱり見なきゃよかった」となるのだが・・・。

11月×日
新宿ピカデリーで「ドミノ」(ロバート・ロドリゲス監督)
あんまり「自分には合わない」監督の一人だが、予告編が面白そうだったので見てみることに。

娘を誘拐され、憔悴している刑事。
とある銀行の貸金庫が狙われているという通報があったため銀行に向かった彼は、怪しい男を見つけ、先回りしてその貸金庫を開けるが、そこには誘拐された娘の写真が入っていた・・・、って感じで始まるお話。
現実だと思っていたものが、ぺらっと一枚皮をはがすと全然違う何かだった、という、フィリップ・K・ディックが好んで書いたような話で、特に前半、何が起きているのかわからない不穏さはなかなか悪くない。
中盤でだいたいの仕掛けがわかってその後かなり失速するが、前半楽しめただけでまあ良し。
今まで観たこの監督の映画では一番良かった。

ただ、監督がヒッチコックの「めまい」にインスパイアされた、みたいな話をちらっと見たけれども、さすがに「めまい」とは比ぶべくもない。
「ドミノ」には「めまい」のような変態的な艶やかさは全くなかった。
思えば「めまい」って映画は、SFでもファンタジーでもホラーでもないのに、「現実だと思っていたものが、ぺらっと一枚皮をはがすと全然違う何かだった」というのを描いた傑作だったな。
まあそれを思い出させてくれたという意味でも「ドミノ」は観て良かった。

11月×日
新宿ピカデリーで「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)
初めてこの監督の作品を見たのは「リターナー」(2002)だからだいたい20年前。
特撮を映画の中に生かすのがとても上手で感心した。そしてドラマ部分には感心しなかった。
そのあと何本か観ているけれど、印象は全く変わらず。
基本的には監督の名前を見て「ああ観るのは止めておこう」と思う人の一人なのだが、ゴジラ、となるとやはり見ておきたい。
かなり評判も良いようだし。

結論から言うと、ゴジラが暴れまわり、船や飛行機でそれに対抗する特撮シーンは素晴らしかった。
そしてそれ以外の人間パートはひどかった。

この山崎貴監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画を観た時に、登場人物たちの言動やエピソードの描き方が、
なんともありきたりで
いかにもとってつけたようで
どうしようもなくステレオタイプで
こういう人物(あるいは出来事)はこういうふうに描いておけばいいんでしょ、という感じで新鮮さのかけらもなくて、
それが耐えられずに上映30分ほどで逃げ出したのを憶えているが、今回の「ゴジラ-1.0」でもまったく同じような感覚になった。

冒頭近くでプロトゴジラみたいなのがちょっと暴れてから、その次に巨大化したゴジラが出てくるまでにかなりの時間があって、その間の人間パートが、ありきたりで/とってつけたようで/ステレオタイプで/新鮮さのかけらもなかった。
正直逃げ出したくなったのだが、いや、待っていればゴジラが出て来るから、と思いつつ何とか我慢した。
そしてやっと現れたゴジラが東京を暴れまわるシーンはさすがに良かった。
やはり特撮の生かし方は非常に上手い。
しかし思ったより分量は少なくて、ほとんどの時間いらいらしながら人間パートを見ていて、ときおり特撮で息をつく、という印象。

やっぱりもうこの監督の映画はやめておこう、と再確認。

もっとも「ALWAYS 三丁目の夕日」は非常に評判が良くて、日本アカデミー賞では13部門中12部門で最優秀賞を受賞したらしいし、アレが我慢できる、というかアレに感動できる人も多いのだろう(にわかには信じがたいが)。
そしてそういう人にとってはこの「ゴジラ-1.0」は傑作なのだろうと思う。

そう考えると評判が良いのも納得と言えば納得である。

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