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25年の時を経て、アニメの世界に追いついたポケットモンスター

「ついにゲームがアニメに追いついたか・・・」

2022年11月に発売されたポケットモンスターの第9作「ポケットモンスター スカーレット/バイオレット」は、そう強く実感させてくれるものだった。

※一部ネタバレあり

子供の頃に見たアニメポケットモンスターの衝撃

1997年に公開が始まったアニメポケットモンスター。
子供の頃に初回放送を見た時の感動は今でも強く心に残っている。

まず驚いたのは、サトシの最初の一匹目が初代御三家ポケモンではなくピカチュウだったことだ。
ヒトカゲでもフシギダネでもゼニガメでもなく、序盤に登場する野生ポケモンの一匹でしかないピカチュウと旅をするというのは、なかなか驚きの展開だった。
後に視聴者層の拡大が理由であったと知るが、子供心にはそんなことは関係なく、当時のゲームでは表現できないド派手な電撃技を見て心が躍ったものである。

しかしアニメ版でやはり一番衝撃を受けたのは、野生ポケモン達の描き方である。
草原をうろつくポッポ。集団で攻撃的に追ってくるオニスズメ。川の中を自由に泳ぐギャラドス。

我々が住むこの現実世界の野生動物や昆虫といった存在が、アニメの世界ではポケモン達に置き換わっていると言える。
「あのポケモンはあんな風にして飛ぶのか」
「あのポケモンは集団で過ごすのか」
「あのポケモンはあんなところに生息しているのか」などなど。

「いきなり破壊光線やカミナリを放ってくるポケモンだらけの世界とか、どう考えても死人が出まくるだろ・・・」と大人になってから振り返ることもあったが、それでも新鮮な世界観を描いていた。

ゲームでは描けないポケモンの生きている姿

しかしなぜこんなにも新鮮に映ったのだろうか。

それはやはりポケモンの自然な姿というのが、当時のゲームでは描けない表現だったからだろう。

当時の一般的なロールプレイングゲームというのは、フィールドを歩き回りランダムで敵と遭遇して戦闘に入るというのが一般的であった。その点はポケットモンスター赤・緑も同じだ。
一部のポケモンを除き、草むらや洞窟内、水の上などを動き回ることで野生のポケモンと遭遇し、そしてバトルへと展開していく。

つまりバトルに入らなければ、プレーヤーの目に野生のポケモン達が姿を見せるということが無いのだ。
その出会ったポケモン達も微動だにしないドット絵の静止画である。
(今の子供達には信じられないだろうが、当時のゲームはそういうものだったのだ。)

その後、ポケットモンスターはゲームボーイからゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDS、3DS、そしてNintendo Switchへとハードを移してきた。
ハードが新しいものへとなるにつれて表現できる絵も進化。戦闘中に動きのある姿や技の表現など、ポケモン達の個性が見えるものになってきた。ストーリーも作品ごとに凝った物語が描かれ楽しい冒険を送ることができている。

だが、それでも初回アニメのあの感動だけは、なかなか味わうことは無かった。

オープンワールドに息づくポケモン達

しかしアニメポケットモンスターの放送開始から25年。ついにその感動を味わうことができる作品が登場する。
それが第9作目となるポケットモンスター スカーレット/バイオレットである。

シリーズで初めて「オープンワールド」を採用したこのゲームは、ストーリーの進捗に束縛されることなく好きなように世界を冒険させてくれる自由をプレーヤーに与えてくれた。

パルデア地方と呼ばれる今作の舞台は過去の作品に漏れず、山あり谷あり海あり砂漠あり洞窟あり雪山あり・・・と様々な地形や季節感、天候が用意されている。
そして広大で開かれた世界には、個性豊かなポケモン達が自分の暮らしやすい場所に生息しているのだ。
草むらから戦闘モードにならないと姿を見せてくれないという世界ではもはやないのである。

進化後のドンファンと進化前のゴマゾウ達
進化後のハリテヤマと進化前のマクノシタ
進化前のパピモッチと進化後のバウッツェル

進化前ポケモンと進化後のポケモンが群を成すという光景やパルデアでは珍しくない。どういう関係性なのかよくわからない部分もあるが、我々の現実世界でよく目にする親子のような群れの姿なのかもしれない。

中には異なる種族のポケモンに囲まれるポケモンというのも見かけることがある。これもどういう背景があるのか非常に気になる。

ジオヅムやコジオの塩分を求めて来たのだろうか

そして人懐っこいポケモンもいる一方で、攻撃的なポケモンもいる。
彼らはプレーヤーを見つけると追いかけ回したり、とてつもないスピードで突っ込んで来るのだ。

砂の中を自由に泳ぐメグロコは、プレーヤの背後に忍び寄る
ミガルーサはプレーヤーを見つけると、避けきれないスピードで突っ込んでくる

ポケモンも種類によって生息している場所や地域が様々である。例えば氷タイプのポケモンは雪山であるナッペ山に。そして山羊を思わせる姿をしているゴーゴートは、崖上に群れを成している姿を多く目にする。そして蓑虫ポケモンのフォレトスは、木の上に引っ付くようにして佇んでいる。

可愛らしい目をしたアルクジラはナッペ山に集団で生息している
ゴーゴートは時々どうやってそんなところに!?と思う場所にいたりする
ちなみにフォレトスの体重は125kgである。頭の上には落ちてきて欲しくないものだ。

臆病なポケモンはプレーヤーを見かけると全速力で逃げ出すが、逆にナマケモノのケッキングは動くのも面倒くさがり一切動じない。

特性の影響が無ければ逃げ出す必要がないぐらい実は強い
気にしてない風を装っておきながらもチラチラとこちらを見るストリンダー
カメラを向けると近寄ってくるシキジカ達
主人公の実家の屋根の上にいるイキリンコ

木に擬態(?)しているウソッキーは近づくと逃げ出してしまうが、遠目から見ると面白い動きを見ることができる。

木に擬態しているウソッキー
時間が経過しても微動だにしない
観察して2分。あれ?疲れてきた?

このようにポケモンの個性や特徴は様々である。夜になれば木の下などで眠るポケモンもいれば、逆に夜行性のポケモンは夜にならないと出現しない。嵐になると強風で吹き飛ぶポケモンもいる。それを非常に細かく描いているのだ。

これはゲームとして成立させるためにそこに存在させる以上に、この世界に生きているということを表現していると言える。

アニメポケットモンスターのテーマソング「めざせポケモンマスター」にある「いつもいつでも本気で生きている こいつ達がいる」という歌詞の一節そのままである。

ちなみに学生生活をテーマにした今作のストーリーは、歴代作品と比較しても非常に面白いものとなっている。
もちろんストーリーを進めるか進めないかの自由もまたある作品だ。

ストーリーはロールプレイングゲームにおいて根幹とも言える重要な要素でもあるが、それを多少なりとも無視しても問題ないぐらい楽しめる世界が今作は描かれている。

私のようにアニメのそんな細かいところに感動した人がどれ程いるのかはわからないが、ありのままのポケモンの姿を愛でられる人には間違いなくハマる世界が広がっている。

発売から3ヶ月弱が経過。まだ3ヶ月なのかと思うぐらいパルデア地方に入り浸ってしまっているが、ダウンロードコンテンツの発表もあり、まだまだこの世界を楽しめそうだ。

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