#04 臆病な夜
結局のところ、人に話せる悩みは話せる悩みでしかない、と思う。
わたしは恋愛相談をすることよりされることが多い人間だ。でもそれはおそらく、わたしが頼れるからだとか、聞き上手だからだとかではなく、「自分の話をしないから結果的に聞く側になっている」ただそれだけだ。
じゃあなぜわたしが自分の話をしないのかというと、話すことがないからだ。あくまで、表向きには。恋人もいないし、特定の誰かに好かれるために努力しているわけでもない。言い寄られることもない。
23歳にもなると周りの恋愛事情が10代の頃とは変わっていくのを肌で感じる。長く付きあっている彼氏がいる子、年の離れた恋人がいる子、セフレがいる子、最近新しい出会いがあった子、街コンやマッチングアプリで百戦錬磨の子、恋人以外の人から言い寄られている子、状況は十人十色それぞれ違えど、全員が全員、女を全うしている。
そんな彼女たちの話を聞くのはわたしの楽しみのひとつだ。わたしの友人はみんな本当にかわいくて、自分がかわいいことをちゃんと知っている。そのかわいさをわかってくれる人がいる。なんて尊いことなのだろう。どんな愚痴を聞かされようが、彼女たちはみなキラキラと輝いて見える。
恋もセックスも素晴らしい。
そんな“年相応”の恋愛をしている彼女たちにとって、わたしの話は、きっと低次元でつまらない。
だからわたしは、心の上澄みにある言葉だけを掬いとっては常套句のように繰り返すのだ。
「彼氏欲しい~」
「恋したい~」
それだって、嘘ではない。
嘘ではないんだけどさ。
率直に言うと本質はそこにはない。
日々恋焦がれたり絶望したり、わたしにはわたしの地獄がある。始まることのない恋。眠れないまま物思いにふける夜。言葉ひとつで擦り切れそうな心。
「愛がなんだ」を観て “純愛”だとか“リアル”だとか言ってるフツーの若者の眼中にはない、わたしのリアル。
もしも、それらをさらけ出したら、おままごとだと笑われるだろうか。小学生かよとドン引きされるだろうか。
それとも神妙な顔で話を聞いてくれる?
そうだとしてもやっぱり、自分とは違う次元にいる人に話して、虚しくなったり、恥ずかしくなったり、するのは、怖い。
緩やかな自傷行為で安心していたい。
外にいると自分だけが人間ではない奇形の化け物なんじゃないかと思えて仕方なくても、この部屋の中ではわたしがいちばんかわいいから。
どうしようもなく臆病な夜に
誰にも話せないあれこれを抱えて。
心の中に飼っているギャルに、あんたって馬鹿ね、と笑い飛ばしてもらうくらいがちょうどいい。
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