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『シャイニー・チープ・ピカピカ・アクセサリーズ』

不夜城ネオサイタマのウシミツアワー。バイオリンケースを片手に夜を駆けるニンジャを浮遊攻撃機、平家蟹フライングパンケーキが追う。

「イヤーッ!」

平家蟹フライングパンケーキに搭載されたミニガンの火線を連続側転で避けながら細い路地にニンジャが逃げ込む。アンタイニンジャ銃弾が射線上のコンクリートを削り取り、違法増築ビルから「電話王子様」のネオン看板が地面に落下して土煙を上げる。

逃走ニンジャは銃撃を受けて崩落する違法増築ビルを振り返りもせずに路上に停車中のカンオケ・トレーラーの運転席に飛び込むと助手席のドアごと運転手を蹴り出してアクセルを踏み込む。

「ザッケ「ザッケ「ザッケンナコラー!」ヤクザクラクションを連打しながらカンオケ・トレーラーが急発進する。

『シャイニー、チープ、ピカピカ・アクセサリーズ』 


ストリートを爆走するトレーラーの側面には、かわいらしい二頭身の女の子キャラクター「高収入チャン」がプリントされており、オスモウフォントで「カワイコチャン運送」とショドーされている。

カワイコチャン運送は「カワイイで高収入」を餌にオイラン志望の女子生徒を集めた上で、実態は単純重労働に従事させるという特殊なニーズを満たして急成長した運送会社だ。

「高収入、高収入、カワイコチャンは高収入!」と高らかにCMソングを響かせながらカワイコチャン・トレーラーが繁華街へ突入していく。

「アイエエエ!!」

トレーラーが道路標識や電柱、巨大マネキネコ、信号機など障害物を次々と跳ね飛ばして疾走する。吹き飛んだマネキネコがネオサイタマ市民をかすめ飛び、辻説法中のペケロッパカルトを直撃する。

「ペケロッパ!?」

トレーラーは大通りを急旋回、ドリフトする荷台で渋滞する車列をなぎ払いながらコメダ・ストリート方面へ走り抜ける。

カンオケ・トレーラーを運転しているのはスーツで男装した小太りの女ニンジャだ。撫でつけられたコバルトブルーの髪と両腕に巻き付けられた安物のピカピカしたアクセサリが目に痛い。名をイアーゴという。

「チィィ……ナニがカワイコチャンだ、ウッセーな!」

悪態を吐きながら彼女はバックミラーに映った平家蟹フライングパンケーキを見てアクセルを強く踏み込む。

やがて前方に巨大な倉庫が見えてきた。「カニズ社」の社章である巨大なタカアシガニが描かれた高さ10m以上ある鉄扉の前に武装したサイバネ警備兵が数名立っている。

彼らはイアーゴに向かって手信号で停止を求めた。

「止マレ! 停マレッ!」

しかしイアーゴは速度を落とすことなく進路を変えずそのまま突っ込んだ。

衝突の瞬間、イアーゴはハンドブレーキと共にハンドルを切り急旋回、高収入チャンの笑顔が横滑りに警備兵に迫る。

「アバーッ!?」
「高収入、高収入、カワイコチャンは高収入!」
「アバババーッ!?」

サイバネ警備兵ごと鋼鉄製のゲートを吹き飛ばし、勢いあまって横転しながらトレーラーは倉庫敷地へ進入した。

KABOOON!!
ナムアミダブツ!!

トレーラーが爆発四散すると同時に回転ジャンプで外に飛び出した影あり。イアーゴである。彼女は倉庫の玄関前で見事な三点着地をすると両腕のアクセサリを点検し、コバルトブルーをオールバックに撫で付けて身だしなみを整える。

「さて、このデーハーな自爆でオレが死んだと思ってくれればいいが……」

イアーゴはバイオリンケースを片手に倉庫内へ足を踏み入れた。

◆◆◆◆◆

イアーゴを追跡していた平家蟹フライングパンケーキは攻撃を中断して上空待機していた。よりによって逃げ込まれた先が自社倉庫とは。カニズ社の追跡ニンジャ、アタギャティスはやむなく攻撃中止を決断したのである。

「ええい、アタギャティス=サン、どうなっておるのだ!」

平家蟹フライングパンケーキ内部のモニターを震わせカニズ社の社長が怒声を上げる。彼の両腕は、おお、あろうことかカニの鋏に置換されているではないか!

「全責任は私にあります。申し訳ありません」

白いニンジャプロテクターを装着したニンジャ、アタギャティスは腰を90度に曲げて謝罪する。彼はカニズ社長直属の企業ニンジャであり、今回の「失態」の責任者でもある。

「よりによって、あのような胡乱なニンジャに《聖剣》を奪われるとは!」

社長の怒りは収まらない。その怒りの対象はアタギャティスにも向けられているようだ。左右の鋏が怒りを表すかのように開閉している。

「ひとりばたらきのフリーランスでしょう。心配には及びません」

「何を言っている! 特注のサイバネ義肢を強奪していったんだぞ! あの素晴らしい鋏が暴れたらどんな騒ぎになるかわからんのか!」

社長の指摘は正しい。イアーゴが盗んだバイオリンケースに納められていたのは、いわゆるサイバネ義肢と呼ばれるものだが、その技師には特別な意味があった。

カニズ社は強烈な愛社精神で知られている。上級社員は己の肉体をカニに置き換えており、その強烈な印象と戦闘力はネオサイタマ政財界にも広く知られるものだ。

今回奪われたのは、ヨロシ・バイオサイバネティカに特注した蟹鋏アーム《シオマネキ》である。それは次期社長である社長の一人息子のために製造された聖剣であった。

もしネオサイタマに蟹鋏の爪痕が残れば、それはすなわちカニズ社の責任問題となる。社長は口から泡を飛ばしながらアタギャティスを叱責する。理は社長にある。だが、それはいささか度を越したようだ。

アタギャティスは白くつるりとした無貌のカニメンポを外すと、声色を変えずに社長へ進言した。

「私が降りて回収します、それでよろしいですね」

ニンジャ威圧感の込められた言葉はモニタ越しにも届いたようだ。社長は、小さく「アイエッ」とうめくと沈黙し、後は任せたと通信を切断した。

◆◆◆◆◆

イアーゴは慎重に倉庫内を歩みながら自問自答している。またやってしまった。ついつい、目についたピカピカのバイオリンケースを盗んでしまった。盗めるように置くのが悪い。

イアーゴは幼少期から光り物に目がない。高価なものも安価のものも関係なく、目についたピカピカしたものが欲しいとなると自分を抑えることができなかった。それはニンジャになってからも抑制されることなく、さらに危険な現場へ彼女を運んだ。

ネオサイタマで場数を踏んだ彼女はひとりばたらきのニンジャ泥棒として頭角を表し、数々の企業から懸賞金を掛けられる立場となった。そして、今夜も彼女を追う企業が増えた。

「やれやれ、物騒な世の中だぜ」

カニズ倉庫18階、無人の会議室に忍び込んだイアーゴは盗み出したバイオリンケースの品定めに入った。

「はてさて中身はなんじゃろな〜」鼻歌まじりに蓋を開くと、内部から微かな光がこぼれ強烈な海鮮臭が会議室に充満する。ケースを完全に開くと光り輝く巨大なカニの鋏が鎮座していた。

「なんじゃこりゃ〜」

イアーゴは、困惑した表情で蟹鋏を見下ろしている。

「貴様には過ぎたものだ」

突然の背後からの声にイアーゴは振り返らずにバック転を行い後方風車で蹴り込む。そこには、イアーゴ渾身の後ろ蹴りをクロスブロックで受け止めた白いニンジャがいた。

「ドーモ、アタギャティスです。聖剣を返してもらうぞ、泥棒カササギめ」

「ドーモ、イアーゴです。いま返そうと思ってたんだけど、それでノーカンにしない?」

「その下賤な両腕と引き換えなら考えてやろう」

「やなこった。返そうと思ったけど、あんたが欲しそうだからもらっておくことにする」

「下郎め」

「おじさん、そんなに真面目で肩凝らない?」

二人はジリジリと間合いを詰める。緊張したアトモスフィアにより、二人の間にある見えない球形のガラスがギリギリと軋音を立てる。

「イヤーッ!」

先に動いたのはアタギャティスであった。一瞬にして距離を詰めた彼は両手の甲に装着された刃を展開してイアーゴに斬りかかる。対するイアーゴは、右手に持ったままの蟹鋏を逆手に構えると、アタギャティスでの斬撃を受け止める。ガキン!という破壊音と共に刃が砕かれた。

「へっへっ〜 こりゃいいや」

イアーゴが蟹鋏を振りかざすと大ぶりに振り回した。アタギャティスではブリッジ姿勢で回避!ブリッジ姿勢のままカニ歩きで距離を詰めると、彼女の脇腹に向けて爪先を蹴り込む!

「イヤーッ!」

だが、その攻撃は空を切ることとなった。イアーゴは、横薙ぎに振った蟹鋏の勢いをそのままに身体ごと回転させて宙に浮かんでいた。ピカピカ・ニンジャクランのソウルを宿した彼女特有の空中挙動だ。

「イヤヤヤーッ!」

イアーゴはさらに勢いをつけて連続回転、全方向に《聖剣》を振り回す。

SLAAAASSSHHH!!

斬撃は刃渡りを超えて届き、会議室だけではなく、倉庫の一棟を内側から切断して見せた。

「……これは、まずいな」

左腕を切断されたアタギャティスでは、しかし切断面から噴き出す鮮血を気にすることなく、素早くイアーゴの着地地点へと移動。落下中の彼女を蹴り上げて天井に叩きつける。

「グワーッ!?」

天井に激突して床にバウンドしたイアーゴをアタギャティスの左腕から噴き出す血が襲う。

「ドクマンジュウ・ジツ!イヤーッ!」

毒血と化した己の血を浴びせるカニ・ニンジャクラン亜流の奥義である!

「グワーッ!」

苦しみのたうちまわるイアーゴ、だが回転ジャンプで毒血を弾き飛ばし致命傷を避ける!そこへ再びアタギャティスのケリ・キックが突き刺さりイアーゴは倉庫の窓際まで蹴り飛ばされる!

「グワーッ!?」

「終わりだ、泥棒」

アタギャティスは、カニ歩きで油断なくイアーゴに近づく。もはや彼女に打つ手はない。だが、イアーゴは笑みを浮かべて立ち上がった。

「こうしよう、あんたはコレが欲しい。オレはキラキラしたケースの方が欲しい」

イアーゴは後ろ手に《聖剣》を窓の外に投げ捨てた。

イアーゴをカイシャクしようと駆け出していたアタギャティスは彼女を通り過ぎ、そのまま窓の外へ飛び出した。

「また会おうね〜カニのおっさん〜!」

イアーゴは落下しつつあるアタギャティスに手を振るとバイオリンケースを片手に逆方向へ駆け出し、ネオサイタマの闇に紛れ消えていった。

◆◆◆◆◆

カニズ社のエージェントニンジャは、倉庫の窓から飛び降りると地上へ落下しながら《聖剣》を回収し、前転で落下の衝撃を殺した。

「こちら、アタギャティス。《聖剣》を回収した」

必要な連絡事項を伝えると、アタギャティスはフルフェイスメンポを外して呼吸を整える。昇り始めた朝日が逆光となりその顔は見えない。アタギャティスは、失われた左腕にカラテを集中させると左腕の付け根が落ち、新たな左腕が根本から生えた。

「……」

左腕をグーパーさせ動作を確認すると、彼は何事もなかったかのように歩き出し平家蟹フライングパンケーキに乗り込んだ。

◆◆◆◆◆

イアーゴは、廃ジンジャ・カテドラルに隠されたねぐらに帰り着くとバイオリンケースを適当なクレートに放り込む。いちど盗んだものには執着しないのが彼女の特徴であった。

ひと眠りすれば、また新たな盗癖が目を覚ます。彼女はスーツ姿のままハンモックへ飛び込み、鐘楼の中で浅い眠りについた。

『シャイニー・チープ・ピカピカ・アクセサリーズ』 《おわり》

【ニンジャ名鑑】

イアーゴ
コバルトブルーのオールバックが特徴的なピカピカ・ニンジャクランのレッサーニンジャソウル憑依者。生まれ持った盗癖がニンジャソウル憑依によりブーストされ考えるより先に盗んでしまう特異体質を身に着けた。高級品よりも安価なフェイク宝飾品を好む。ピカピカとはカササギの学名である。

アタギャティス
カニ・ニンジャクランの亜流、スベスベ・ニンジャクランの高位ソウル憑依者。曲面装甲で攻撃を受け流すスベスベ・アーマーを装着し、毒血による痛打をたたき込むカラテ巧者。カニズ社への忠誠心が強く、一見そうは見えないがカニ改造度は相当に高い。

【解説】

ニンジャスレイヤースーパー222の日、そしてカニの日、オメデトウゴザイマス!

本作はAIのべりすとを活用して作成されたミニ小説です。冒頭の平家蟹フライングパンケーキに襲撃されるシーン以降は、AIの選択した展開に沿って内容を整えたものです。

AIによって生み出された、男装の女ニンジャ イアーゴ、カワイコチャン運送、カニズ社長とサイバネ義肢が、物語を彩ってくれました。

ニンジャTRPGの流行で「ネオサイタマで右往左往する三流ニンジャ」を描くと楽しいという知見もありました。(本作もなんとなくTRPGリプレイっぽさがありますね)

それでは、今後ますますのニンジャのご発展を!AIがニンジャ小説を生み出し続けるシンギュラリティは近い。


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