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日曜日のクルーメイト #0083 eerie Healing Horror!!

ハロー、皆様。いかがお過ごしでしょうか。
たまの日曜日に、皆様のクルーメイトになる冲方です。
と、コンセプトの主客を換えてみようと思いついたところ、どうも個人的にはこちらの方がしっくりきます。

「冲方作品に興味を持って頂けるクルーメイトをたくさん参集させて、みんなで一つの体験を楽しむことを通して、作品に興味や愛着を抱いてもらう」というのが従来のイベントのコンセプトでした。
この記事も、イベントに代わるものとして用意されたため、おのずとそうしたコンセプトを踏襲しようとしてきたところがあります。

ですがステイホームでの発信が主となったことで、むしろ従来の物書きの役割である「本を通して、人それぞれ微妙に感想が異なるであろう読書体験を楽しんで頂く」というコンセプトにいつの間にか回帰していたのだなと、ふいに気づいた次第。

そういうわけで今後は、冲方が皆様のクルーメイトとなり、手を替えジャンルを替え、あらゆるエンタメをお届けすることを目指す場の一つとして当記事を、(やや不定期に)活用して参りたいと思います。

そんなわけで、今週も元気に参りましょう!

『骨灰』12月9日発売!!

いよいよ来週刊行です!
初のホラー長編を、なぜわざわざ不安が渦巻くコロナ禍のまっただ中で書いたかといえば、不安に対抗する免疫を読者に与えることがホラーの大事な効能である、と冲方は信じるゆえです。

思えば冲方が、身の毛もよだつスティーブン・キングの本を浴びるように読んだのも、湾岸戦争中、911後、東日本大震災後といった、世の中と自分の先行きに対する、漠然とした不安がなかなか消えない時期でありました。

漠然とした不安ほど、地味にじわじわ心身にくるストレスはありません。
そしてそうした不安を大いに打ち消してくれるのが、具体的な恐怖とその突破の体験を読者にもたらすホラー作品なのです。少なくとも冲方はそう信じており、それゆえホラーが大好きなのです。
(一方でバブル期のように人々が興奮気味のときは、読者に冷や水を浴びせて冷静にさせるという効能もあるでしょう)

そういうわけで、これから世に出す『骨灰』が、ぜひ皆様を、恐怖と灼熱に満ちた暗黒の穴の底に招き、家族と家と仕事を守ろうとして何もかも狂っていく男の物語を、お一人お一人にたっぷり味わわせ、この不安だらけの世の中に負けない健やかな免疫力を皆様にもたらすことを念願しております。

こちらの画像は、書店様にお届けするサイン本を作成したときのもの。
お手に取って頂いた方は、サインに付記された「骨」キャラに、ぜひお好きな名前をつけてあげて頂けると嬉しいです。
死を連想するものに、別の形状や名前を与えることで、これまた不安を宥める効果があるかもしれません。

ホワイトボード上の吊り広告は、渋谷駅を通過する下記路線で掲出される予定とのこと。

掲出時期:12/12(月)~12/18(日) ※1週間
①東京メトロ 有楽町線・副都心線
②東京メトロ 半蔵門線

ぜひ逃げ場のない地下鉄で、じっくりと怖い吊り広告を眺めて頂けましたら幸いです!

コメント・トーク

さて今回は久々のコメントご紹介。
Twitterを見る余裕とてない日々にて、「ついにTwitter社がどこかのイーロン・マスクに買収されてサノスの指パッチンなみに社員の半分が解雇された、というジョークが流行っている」というややこしいフェイクを駆使した冗談に、まんまと騙されかけました。

さておき。
Twitterが記事告知に有用である限り、「記事を書いてはTwitterで告知して、Twitterでコメントを募る」という今のやり方を変える必要はないだろうと思っております。

で……。

あまりにコメントをご紹介していなかったため、どこまで遡ればよいかわからなくなりました。
えー、時系列を逆に辿って、主なコメントを拝見して参りたいと思います。

夏月さん、コメントありがとうございます!
仲がよさそうなグループで何よりですね。冲方はそういった交流がほぼ無いため実態はわかりませんが、きっとオンライン飲み会の約束でも交わすのでしょう。楽しそう。

ただ冲方は以前、「自分はおっさんだから」という言い訳を口にするべきではない、と指摘されたことがありまして。ちゃんと運動して栄養を取って肉体の健康年齢が長くなるよう努力した上で、物を書くべきであると。
応援にふさわしい健全なる肉体と精神でもって、ときに『骨灰』のようなおどろおどろしい作品をお届けしたいと思います!

新条さん、ありがとうございます!
おかげさまで、すっかり不定期更新とさせて頂いております。

物語を終わらせずに世を去るのは、書き手としてこの上なく無念であり、また読み手にとって最も残念なことでしょう。

我々の命は生まれたときから致死率100%ではありますが、だからこそ有限の肉体を大事にしつつ、一つでも多くの物語を書き上げたいと思います。
新条さんもご自愛下さい!

ホイテロートさん、ありがとうございます!
そうも喜んで下さると、こちらもさらに嬉しい気持ちになります。
なんとあの作品に登場する全ての種族のデザインが起こされ、しかも動くのです。喋るのです。戦うのです。楽しみすぎます。
この手で書きつづった文章がきっかけで、新たな映像作品が生まれるというのは本当に光栄なこと。
ぜひ放映までもそのあとも元気に生きていきましょう!

ラピツティアさん、ありがとうございます!
ウサギさんは何でも囓ると評判。ウサギ大好きクリエイターが冲方の周囲にもいて、この前は何を囓られたと嬉しそうに話します。

現代の価値観でいえば、外見によって疎外感を抱く主人公とか、マーメイドの男女を行き来する設定など、どんな印象をもたらすのか非常に楽しみ。

また、クランチロールさんやソニーピクチャーズが参加しておりますので、英語圏への輸出もとても楽しみなのです。
どんな翻訳になるのか。そもそも、あのややこしい造語をアニメでどう処理するのか。
作り手的なものの見方においても勉強になるに違いないと楽しみ。

kurekure_kunさん、昂ぶっておりますね!
冲方も最初に話を聞いたときは、「ワッツ!?!?!?」となりましたよ!
ぜひその昂ぶりのまま、もうしばしの時間を、お楽しみにお待ち下さい!

森人さん、こんにちは!
これは以前の記事でご紹介したラジオの、サタデーエッセイのお題ですね。

そう。計画は大事。「Plan to do」こそ効率化の要。全ての作業を時間短縮のために最適化していくのです。

しかし結果、様々な弊害が明らかになってきた、というのがラジオでお話したことの趣旨なんですね。
社会はかねて「効率化させる側」と「効率化させられる側」に分かれてきましたが、「させられる側」は生活を奪われがち。
なぜなら効率化によって空いた時間に、新たなワークが生じることで、ライフバランスが崩れるからです。

「タイパ」(タイムパフォーマンス、時間辺り価値)という言葉がどうやら流行したようですが、パフォーマンスという観点から脱出しない限り、たとえ余裕が生まれても、その分だけ行動や情報が増え、どんどん忙しくなる。

そうではなく「恒常的に何もしないでいられる余裕」を得るため、たとえば早期引退(FIRE)などで、時間や経済的価値といった「数字の重力」を捨てる人々もいる。
しかし、それでは社会の一員として充実して生きている、という実感も消えてしまうのではないか。さて、どんどん余裕がなくなることを人々に促す社会において、ライフバランスをどう取ったらいいでしょう、といったお話なのでした。

森人さんは、こういうネタが好きですな。
何の作品でしょう。昔はコマ一つで作者がわかったものですが、最近は時間がなくてまったく追えておりません。
「人骨マン」にターンしたあと、「人だった塵マン」になることでしょう。

さておき、サイン本は、考えてみれば、このサブスク全盛時代で貴重な、「人がソリッド(物)を購入する」ものになりますので、やはり読者が個人的に、気が向いた名を付けるのがふさわしいだろうと思い改めた次第。

あとがき


あれこれの事情によって製作や発表や発売の時期がずれると、執筆とライフバランスを取るどころか、こちらはうっかり執筆に全ライフを注ぎ込まされかねない、といういつもの事態を痛感する数ヶ月でありました。

過去十年も二十年も、そうならないための工夫を重ねているのですが、やはり多数の人間がかかわればかかわるほど、未来は予測できなくなっていくものですなあ。

こうなれば、執筆の段取り自体をかつてなく変え、ライフワークバランスを実現することを、目標と定めました。

親愛なる読者諸氏の皆様におかれましても、より良い生活のための素晴らしいバランスがもたらされますことを。
たまの日曜日に現れる皆様のクルーメイト、冲方丁でした。

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