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ガメラ3 トツカノツルギ

これは映画“ガメラ3邪神覚醒”に出てくる。
役立たずの剣“トツカノツルギ”について、そう呼ばれていることに対して逆張りと妄想で考えた文章です。
主に映画から得た情報で思いついた事を膨らました文章なので関連書籍に載っている情報は、ほぼ把握していません。

これが正しいとか思っている訳じゃなくて、思い付きの妄想です。

ある日、私のTwitterのTLに“ガメラ3邪神覚醒”という映画の実況感想が大量に流れてきた。

何処かのチャンネルで放送しているらしい。平成ガメラ三部作は好きな作品なんで、実況内容から、役立たずの剣として有名なトツカノツルギの登場シーンだとすぐにわかった。

ここで、ふと疑問に思った。
「トツカノツルギは本当に役立たずの剣だったのか?」と。

トツカノツルギとは何か?

映画“ガメラ3邪神覚醒”に登場した、劇中に登場する村の古い家柄の地主。守部家に“柳星張りゅうせいちょう”と呼ばれる怪物を封印する道具として先祖代々伝わってきたボロボロの剣だ。
超自然エネルギー“マナ”を操作し、ガメラやギャオスと言った巨大な生物兵器を開発する技術を持っていた古代文明が関係していそうな伝説や謂れを持ち。
“柳星張”
“ギャオス変異種”
“イリス”
と劇中で複数の名で呼称される、ガメラと戦う本作のライバル怪獣の卵が封印されている洞窟近くの祠に安置された凄そうなアイテムである。

素材は石か青銅?
可能性は低いがこのシリーズの設定的にオリハルコンかもしれない。

そんなトツカノツルギだが、劇中では気になる女の子を柳星張から救うために、守部家の少年が先祖から受け継いだこの剣で挑むも、傷一つ与えられず女の子の前で吹っ飛ばされてしまう残念な結果になった。
まるで特効効果がありそうな謂れを持っているというのに、ボーイ・ミーツ・ガールをさせてくれない、なんの役にもたたないボロボロの屑剣だったのである。

……と、最近までは私もそう認識していたが、実際には特効こそなかった物も劇中で活躍している。


トツカノツルギの活躍

映画の中盤、ガメラを恨む少女によって育てられた柳星張の幼体は、完全体となるために少女を肉の繭で包み、取り込もうとした。
少女の家族からその娘が家に帰っていないと連絡を受けた少年は、雨合羽と懐中電灯を身に付け、雨の中を駆け出して柳星張の巣と化している洞窟の入り口近くに安置されたトツカノツルギを持って突撃。
柳星張の繭に飲み込まれていく少女を助けるために祈るように剣を見てから繭に突き刺して破り、見事に少女を助けることに成功する。

終盤の最終決戦では、巨大怪獣と化した柳星張との激闘で映画の主役怪獣であるガメラが倒れ、洗脳された少女が自ら融合を望み柳星張に歩み寄る
絶望的な状況で、少女への思いと伝説を頼りに少年が柳星張にトツカノツルギを投擲。
結果は傷一つ与えられなかったが、相手の表皮に弾かれた剣が、偶然にも少女に浅い裂傷を作ったことで土壇場で洗脳を解く奇跡を起こした。

正直なところ、百均で買った包丁とかでも、上記の活躍はできそうに思えてしまうので「トツカノツルギである必要はあるのか?」という疑問が、この剣を役立たずと罵ってしまうのだが決して役に立たなかった訳じゃないことがわかる。

寧ろキーアイテムとして大活躍だったと言っても過言じゃない。

トツカノツルギはただの古い剣

このアイテムが登場するガメラ3を含むガメラ平成三部作と呼称される映画シリーズには、古代文明由来と思われる不思議なアイテムが複数登場している。
それらには意味深な文章が記されていたり、怪獣との精神感応、役目を終えると不自然に崩壊する、電源無しで光る等の、不思議な現象や効果を発揮していた。

それに対してトツカノツルギには古代文明由来と思われる柳星張と関係する伝説を語られるが、この映画で一番ファンタジーな怪獣との精神感応可能なアイテムである勾玉のように光を放ったりしないし、伝説の通りに不思議な力を発揮して柳星張を封印できたりもしない。

以上のことから、恐らくは他のアイテムと違ってトツカノツルギはただのボロくて古いだけの剣だと思われる。

この剣にあるのは“柳星張を封印できると先祖に代々伝えられ剣の形をした道具”という謂れと形状だけ。
しかし、トツカノツルギは何の能力を持たないボロい剣にも関わらず。
謂われを信じた、すがるしかなかった持ち主の気になるあの娘を二度も救い、倒れたガメラが反撃に転じるまでの僅かだが時間稼ぎをやって見せている。

少年は役に立たないカビが生えた伝説に後押しされて気持ちだけは英雄になったのだ。

百均の包丁ではまずできなかっただろう偉業だ。

守部の少年は、気になるあの娘の為に百均の包丁でも柳星張に立ち向かえたかもしれない。
それでも“怪物を封印できる”そんな謂れがあった方が怪物に立ち向かう勇気が出るのは間違いない。

少なくとも百均の包丁では最終決戦で「何とかしてくれ!」と柳星張に向かって投擲はできない。
気になるあの娘を正気に戻すために傷つけることもできなかっただろう。

「正気にもどれ!」と殴るくらいはするかもしれないが。


トツカノツルギは正しく役目を果たしていた?

トツカノツルギというアイテムの役目は封印などではなく、怪物を何とかできそうな謂れを持つ剣の形をした道具を人に持たせることで、柳星張を攻撃させるのがこの剣の役目だと思われる。

理由は色々ある。中でも一番大きな理由は古代文明がその末期に残した最終兵器。

巨大怪獣ガメラの存在だ。

柳星張はガメラ3にも登場するシリーズお馴染みの怪獣ギャオスの変異種と劇中で語られる存在で、ギャオスを倒すためにガメラは作られたと、古代文明の碑文に詩的に刻まれている。

つまり、柳星張と戦うのはガメラの役目なのだ。

逆説的にビルのように巨大で、口からプラズマ火球を放ち、甲羅に頭や手足を引っ込めてプラズマジェットを噴射し、UFOのように飛行する、ガメラに対抗できるのが柳星張である。
とても、如何にも経年劣化していますという風貌の辛うじてボロボロの剣であると認識できるトツカノツルギで勝てるようには思えない。

古代文明がガメラを剣ではなく怪獣として作った。
子供でも持てそうな大きさのトツカノツルギにガメラと同格の力を宿せる技術があるようにも思えない。
そもそも古代文明由来のような謂れのあるこのアイテムは、古代文明が滅びて日本に渡ってきた古代文明人の子孫が残した品だ。
海底の奥底に、幾つも失敗作が投棄されて横たわるガメラの墓場としか言いようがない巨大事業の痕跡を残して、未来を託す最終兵器ガメラを完成させた技術は日本に渡ってきた時点で殆んど手元に残っていなかったと思われる。

そう思うと“怪物を封印できる、怪物が封印されている祠の近くに置いてある剣の形をした頑丈な素材で作られた道具”これは先祖代々引き継ぐのに実に適した物で、非常に現実的な物だ。
トツカノツルギが何の能力も無くても、時間が経っても残りやすく。
それでいて形状が剣というだけでキッチリと復活した柳星張に刺さるのだ。

文字通りの意味で。

ガメラ、ギャオス、柳星張は、空を飛び現代兵器でもダメージを負わせることはできても性能を大きく凌駕した勝てない存在だ。
それでも技術力に大きな格差があるだけで人が作った兵器。特にギャオスと柳星張はガメラと違って人サイズの幼体の時期がある。
生まれた時から巨大怪獣であるガメラも宇宙から来た地球外生物レギオンに敗北寸前にまで追い詰められた。

血を流すなら殺せる、そういう存在だ。

“柳星張が復活した時は、トツカノツルギを持て”

こんな謂れがあり、実際に目の前に柳星張が現れ、ボロボロだが剣の形をしたトツカノツルギを持った人間は何をするだろうか?
恐ろしくて逃走するかもしれないが、伝説を証明する物的証拠である“全く動かせない封印の石の下から出てきた伝説の怪物、柳星張”が目の前に現れたなら間違いなくトツカノツルギを刺そうとするだろう。

怪物を封印するために。
実際にはこのアイテムには怪物を封印する力はなかった。

“柳星張が復活した時は、トツカノツルギを持て”

これは柳星張が幼体の内に殺してしまえと伝えているのだ。

柳星張は幼体でも素早い野性動物を襲って捕らえ、独特の食事方法で獲物をミイラにして殺す、恐ろしい生物だが、生まれた直後は異質でも危ない野性動物程度の存在であり、柳星張という伝説の存在を見た人間がトツカノツルギを刺そうと突撃すれば倒せる可能性があるのだ。

そして、倒せなくても別に問題ない。
トツカノツルギが刺さらない柳星張とはビルのように巨大化した怪獣であり、そうなったら古代文明の最後の遺産であるガメラの出番だ。

磨耗した技術で“全く動かせない不思議な封印の石”で柳星張を封印するしかできなかった先祖が残したトツカノツルギとその謂れは。
古代文明の力も知識も全て、時の流れが磨耗させて失なってしまう子孫が扱える、ガメラに頼らず人が人の力で災いを退けられる人類の最終防衛線なのだ。

映画では、ガメラとの奇跡のコラボレーションで柳星張の撃破に貢献してしまったが、本来は「なんとかなれぇ!」の精神で人の手に持たせて柳星張幼体に突撃させるのが役目だったと考えると。

「何とかしてくれ……!」と柳星張に投擲するのは、実に正しい使い方だったのだろう。


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