怠惰に暮らしています

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最近の記事

松濤美術館でみた展示のこと

舟越桂が亡くなった。 土曜朝に寝起きでいじっていたツイッター、毎日新聞のポストで知った訃報は、まさに寝耳に水だった。 わたしが舟越桂の名前と作品を合わせて認識したのは、2019年か20年かそんなところだったと思う。 訃報を知らせるネットニュースの見出しにもなっていた通り本の装丁にも多く使われていたから、その彫刻作品を小説の表紙で目にしたことは度々あった。 おそらく多くの人と同じように、特に天童荒太さんのハードカバーで印象に残っていたように思う。 一度見たらそうそう忘れられな

    • ルララ宇宙の風に乗った

      新型ウイルスの蔓延からこちら、たくさんの当たり前が崩れた中でそれでも日常生活を送ってきました。 多かれ少なかれ誰もが影響を受けていることと思いますが、幸いにしてわたしの働いているところはその影響が少ないほうであるため勤務体制の変化等はあったものの自分の生活が困窮することもなく暮らしてきました。 旅行は好きだけど日常ではインドア体質だから家にいることは全然苦ではないし、自分が食べていける程度の糧を得られていることはまだ幸せなんだから。 もっと大変な人はたくさんいるから。仕方ない

      • あの黒い虫をわたしは殺した

        今の住まいに暮らし始めて3年ほどの月日が流れました。 気に入って住んだ部屋、快適な3年を送ってきたと思います。 そんなお気に入りの空間で息を呑む出来事が起こったのは昨夜のことでした。 仕事を終えて帰宅し、台所で枝豆を茹でようとしたわたしの視界の隅を横切る黒い影。 ゴキブリでした。 蠢くその姿、体長は4cmほどでしょうか。 共用部ではたまに遭遇していたものの、部屋の中ではついぞ見ていなかったため完全に油断していたのです。 このわたくしとした事が。 万一に備えて置いてはあったも

        • 指輪をおとしたどこかのどなたかへ

          少しやさぐれた気持ちで歩いていたところ地面に光るシンプルな銀色の指輪が目に入り、ただ(指輪ですね…)と思いながら通り過ぎようとしたら内なる声が(エッ、大事なものだったら可哀そくね?)と言うので、仕方ないなァ…と最寄りの地下鉄駅に降りて行きました。 駅員さんに「落とし物を拾いました」と伝えたところ「どこで拾った」と聞かれたので「駅の入り口のめちゃくちゃすぐ近く、本当にもうほぼ駅の中ですよあれは」というような感じで伝えましたが「駅の中の拾得物じゃないと預かれないんだ、ごめんネ」的

        松濤美術館でみた展示のこと

          JOKERというその男

          悪役とされる人が如何にして悪に堕ちるに至ったのか、みたいな話にとても心惹かれてしまいます。 スターウォーズならダース・ベイダーが好きだし、ダークナイトではバットマンより断然ジョーカーに熱を上げました。 「悪役」というわけではないけれど、ムーミン谷の住人ならばモランにいちばん愛着をおぼえます。 ここ最近すっかりご無沙汰ですが、引っ越す前はちょこちょこ通っていた池袋は新文芸坐にて何年か前にダークナイト三部作がオールナイトで一挙に上映され、なんとはなしに観に行ったのがわたしの触れた

          JOKERというその男

          進撃の巨人を読んだわたしの話

          【!】『進撃の巨人』の内容ふれてるよ 思えば高校を卒業した頃から、漫画という媒体とはほぼ縁のない生活を送ってきました。 大袈裟な話ではなく、大人になってから読んだ漫画といえば半ば無理やり貸された『MASTERキートン』くらいのものではないでしょうか。 結局あれも面白く読んだんだよな。砂漠で生き延びるにはスーツが意外と有効で、みたいな話しか覚えていないが。 そんなわたくしが久しぶりに手に取った漫画、それは『進撃の巨人』でした。 べらぼうな人気を誇る漫画ですからそのタイトルを

          進撃の巨人を読んだわたしの話

          山登りことはじめ

          そこに山があっても登らない側の人間であったはずでした。 であったはずなのに。 きっかけは昨年末、(なんかもう疲れたな・・・狸に戻って山に帰りたいな・・・やめるか人間を・・・)などと思いながら手に取った一冊の雑誌『山と渓谷』でした。 ぱっと開いた頁に広がっていたのは美しいアラスカの写真。 星野道夫の『旅をする木』を愛するわたしは、その写真に釘付けになりました。 そのままレジへ直行、『山と渓谷』を購入し帰宅してぱらぱらとめくり、しかし特に山へ登ろうという気持ちが湧くこともなく20

          山登りことはじめ

          ちょっとインド気分

          映画を観に行くときは概ね「観たい作品があるから映画館へ足を運ぶ」という順序であることが多いのですが、先週の水曜は「え、映画館で何か観なくては・・・」という状態だったので、何か目ぼしいものはないかと検索した結果『パッドマン 5億人の女性を救った男』を観てまいりました。 愛する妻のため、自力での衛生的かつ安価な生理用ナプキンの開発に挑戦した男ラクシュミの奮闘記。実話に基づきます。 映画の舞台が2001年のインドだったので、若い人からしたら一昔前のお話と感じられるかもしれませんが

          ちょっとインド気分

          今日はなんの日

          平成も終わろうというこのご時世、なぜに本日12月21日が未だ国民の祝日に指定されていないのか私には不思議でなりません。 今日こそ、総国民が労働を中断して神の誕生を祝い讃える日でありましょうに。 そうです、今日は神こと我が敬愛する草野マサムネ様の51回目のお誕生日なのです。 作詞作曲について私はドがつく程の素人であるためどのように生まれてくるのかさっぱり分かりませんが、あの数々の名曲たち、その旋律と美しい言葉が彼により無から創り出されたのかと思うとただただ平伏です。 ひとつひ

          今日はなんの日

          与那国滞在記-4

          計らずもこの旅行の目玉とも言うべきイベントとなっていたスキューバ体験の朝がついに明けました。 宿にお迎えに来て頂いた車に乗り込み、久部良の港へ向かいます。 かつて高校の修学旅行の時であったか、沖縄でグラスボートに乗り海中の世界を初めて垣間見たときにあまりの美しさに「いつかスキューバやる!!!」と思ってはいたものの、ものぐさ太郎たるわたくし実行に移すことはありませんでした。 まさか自分が海深く潜ってみる日がやってくるとはなあ。感慨にふけりつつ車は進んでゆきます。 港に停泊してい

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          ホラー映画、その真髄は映画館で

          『ヘレディタリー/継承』という映画を観てきました。 以下、少々内容に触れた感想を記しますので、もしも「これから観に行く予定!」という方がいらしたらここらでお引き返し願います。 映画を観ることは好きなのですが同時にまあまあなレベルのものぐさ太郎でもあるわたしはあまり積極的に新作の情報収集をしておらず、この作品の存在を知りませんでした。 それなのになぜ観に行くに至ったのか。それは職場の人の一言がきっかけでした。 12月頭のある日、ファイルを手渡されると同時に彼は小声で呟きました

          ホラー映画、その真髄は映画館で

          与那国滞在記-3

          与那国滞在2日目にして西半分を踏破したわたくし、ならば次は東半分をと欲が出てまいりました。 当初は徒歩で周る気などさらさらありませんでしたが、元々知らない土地を歩くのは好きであった上、何しろ人がいない空間が思いがけず心地良かったのです。 集落から出てしまえば歩いている人の姿はほぼなく、長く続く一本道の前を見ても後ろを振り返っても路上に立つのは自分ひとり、道の両脇にはわさわさ茂る濃い緑に囲まれている環境というのはわたしにとって非日常なものでした。 西半分の方が距離が長いからな、

          与那国滞在記-3

          Queenと岡本太郎と私

          記憶が確かならば『ボヘミアン・ラプソディ』という作品を知ったのは『死霊館のシスター』を観に行った際にその予告映像を目にしたことがきっかけでした。 しかしQueenについてバンドとボーカリストの名前くらいしか知らない私は「あーQueen・・・白タンクトップの拳を突き上げるひと・・・」などと思いながら流し見るに留まりました。 公開後かなり話題になっていましたが、やはり興味を持つことはありませんでした。 が、一転して観に行こうと思ったのは治安の悪い映画館に行って胸糞悪くなったので「

          Queenと岡本太郎と私

          治安の悪い映画館

          都合により4週間ほど大阪に滞在しております。 残すところ一週間となり、ホームシックにかかっているわたくしは帰りの日を待ちわびる毎日であります。 この大阪滞在が決まったとき「何か楽しいことを見つけといた方が精神衛生上よかろ」とちょっと大阪について調べてみました。 するとなんということでしょう。 大阪にはとても良い感じの映画館が鎮座していらっしゃるではありませんか。 その名も「新世界国際劇場」。かなり古い映画館のようです。 行かれた方々の感想として目についたのは、「地下はヤバい」

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          与那国滞在記-2

          日常においては朝に弱く起きるのに一苦労の毎日を送っていますが、旅行先では日常と同じくらいの時間に目覚ましもなく自然に起きることが出来ます。 なんなんだろうなあの現象。毎日ああだと良いのですが。 与那国での数日も、毎朝7時には起きていたのではないかと思います。 宿の洗濯機をお借りして洗濯をし、ふくやまスーパーで買った牛乳とサーターアンダギー(オーブンでブンするとカリッとなって美味しい)で朝食を済ませ、今日はどこへ行こうかと思いを巡らせます。 この旅行中に実感したことには、「今日

          与那国滞在記-2

          与那国滞在記-1

          あれは夏の暑い日のことでした。 春先から積もり続けた小さな疲れたちがそろそろ限界を迎えようとしていたその頃、ふと思い立った事には「そうだ、秋休み貰おう」。 秋休みを貰ってどこかへ行こう、そうしよう。 そうと決まれば(まだ決まった訳ではありませんでしたが…)何処へ行こうかと心弾ませたわたしの頭に浮かんだのは a)パキスタン・フンザ b)沖縄・与那国島 の二択でした。 フンザについては前々から行ってみたいなというほのかな憧れを抱いていたので、ふと浮かぶに何ら不思議はありませんでし

          与那国滞在記-1