名前が秀逸だと思う香水①
名前。
その人に一生付きまとう、名前。
これは大事だ。
もちろん各香水にも名前が付けられているわけで、それぞれ、インスピレーションソースとなった地名や花の名前、あるいは哲学的なものなど、例を挙げればキリがない。
ところで、わたしは長文よりも短文の方が難しいと思っている。
極端に言えば、タイトルが最も難しい。
難しいだけに、ハマったときの達成感・爽快感がヤバいのだ。
そんなことを、調香師の皆さんも感じているんじゃないかと思う。
名前が先に来るのか、香りができあがってから名前を付けるのか。
いずれにしろ、名香と言われる香水は名前も秀逸だ。
Diorの「ポワゾン(毒)」とか、グレの「カボシャール(強情っぱり)」とか。
そう考えると、シャネルの「5番」にまたとない潔さを感じる。
あれほど複雑な香りに数字をあてがったガブリエル・シャネルの潔さは、やっぱりかっこいい。
そういえば、『bdk』というフランス発のフレグランスメゾンに、「パ ス ソワール(pas ce soir)」というオードパルファムがある。
「パ ス ソワール(pas ce soir)」=「今夜じゃない」
「今夜じゃない」。
……じゃあ、いつよ?
初めてこの香りを見つけたとき、わたしは心のなかでこう思った。
「今夜じゃない」
こんなん言われて、うん、分かった、またね。なんて返事する人いるの?
そもそもシチュエーション……
いや、今夜じゃないなら、じゃあいつよ? 次あんの?
最後は殿方の心の声が聴こえたような気がした。
さてこの香り、実はかなり洗練されている。
なんだろう、ヒール履いてないと着けちゃ駄目、って言われている感じ。
スピード感もあって、トップノートのスパイスからミドルノートのジャスミンまで一気に駆け昇っていく。
でも残り香が甘い。
洋ナシのジューシーな蜜っぽい甘さが部屋に残る。
スマートだけど後を引く官能性に、やっぱり次を期待してしまうんだろうな。
……これか。
誘っといて、誘いに乗らない、そんな女のズルい色気が「パ ス ソワール(pas ce soir)」には、ある。
逃げ足も速い。
ヒールを履いたいい女が、残り香をたっぷり残して螺旋階段を全力で駆け抜けていくイメージだ。
公式サイトにもこんな紹介文があった。
いやかなりの距離だが。
そんな「パ ス ソワール(pas ce soir)」、個人的にはショートヘアの色気を感じてしまう。
カラーリングはなし。
ピアスorイヤリングは大きめで。
Tシャツの襟ぐりは絶対に狭い。
コートはカーキ、ベージュ色が好き。
一人旅も好きだし、ITにも強く、サバイバル能力がメンズ並み。
しかしランジェリーだけは極上。パッドなしのペラペラ一枚とか着てる。
そんな子が普段のフラットシューズからヒールに履き替えるとき。
隠れたセクシュアリティに殿方が色めき立つ。
で、言うんだ。
「パ ス ソワール(pas ce soir)」=今夜じゃない。
だってあたし、他のことで忙しいから。
ここまで妄想に付き合っていただいてありがとうございました。笑
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