見出し画像

「ウチダレックには夢がありません」と言われた会社が、業界初の週休3日、営業利益250%達成に至るまで

はじめまして。株式会社ウチダレックの内田 光治と申します。
2016年1月、家業の不動産業に潜在力を見出し、地元へ戻ってきました。

DXによる改革の結果、不動産業界初の週休3日を導入し、営業利益は250%増を実現しました。

……と書くと順風満帆に聞こえるかもしれませんが、入社まもなく目にしたのは、残業や忙しさで、辛そうに働いている社員たちの姿。

「ウチダレックには夢がありません」

そう言い残して、会社を辞める人もいました。

そこで初となる今回のnoteでは、まだまだ完成された状態ではない途中経過ですが、変革の7年を振り返り、会社がどう変わり、成果が出始めたのか、変革のポイントは何だったのかについて書いてみたいと思います。

会社を変革する重要性は分かっている。でも従業員に変革を呼びかけても、うんともすんとも言わない。糸口が掴めない......。

そう考えている人に、ぜひ読んでもらえたら嬉しいです。


歯を食いしばって頑張る

2016年1月に入社後、社員の働き方を見て感じたのは、「みんな辛そう」ということでした。

忙しくなると、まわりが見えなくなり、自分しか分からない仕事がどんどん生まれてしまいます。「自分しか分からない・出来ない仕事がある」ことを自負する人もいますが、ただ休みもなく遅くまで歯を食いしばって頑張る姿が、私には悲しく見えました。

不動産業界の繁忙期は、1月から3月の春です。繁忙期には目の前の仕事に深夜まで追われ、上司すらも誰が何をやっているのかが見えていませんでした。

ただ次から次に目の前に現れる仕事をこなす日々ですから、当然、組織や自分自身の未来を考える時間はありません。

結果、閑散期に入り仕事が落ち着いた途端、燃え尽きてしまう。当時は離職率も高い状況でした。

一体、どんな仕事のやり方をしているのか。

営業・経理・契約管理など、各部署で実際に仕事をしてみました。

改革は「情報共有」からスタート

仕事を経験することで検証したかったのは、「仕事をどういうやり方で進めているか、無理や無駄なところはないか」ということ。

実際に現場に入って痛切に感じたのは、「自分の部署の特定の仕事しか見えていない」状況でした。組織全体の動きや、誰がどんな仕事をやっているのか全く見えない中で仕事を行っていたんです。

不動産は、紙文化が根強く残る業界の一つです。当時は賃貸契約の案件毎に封筒を作り、その中に必要な書類を入れて各部署をまわしていました。

各部署の連携が不可欠なのですが、連携しようにもお互いの状況が全く分からないために「そっちでやってよ」、「◯◯部署の仕事だから関係ありません」と、処理までに時間がかかり、やり取りに行き違いが生まれ、小さな争いが起こることも珍しくありませんでした。

自分の担当する仕事しか情報がなければ、その他の仕事や部署にまで意識が及ばず、連携するという行動は生まれづらかったんだと思います。

全体が見えているのは社長しかいない。いや、社長すらもすべてが見えていない状況が、噛み合わない原因なんじゃないか。

そう考えて最初に取り組んだのは、社内の情報を共有することでした。

情報を見える化するために、クラウド型CRMを導入しました。紙で管理していた業務の進捗状況を、CRMに置き換えて管理することで、全員が同じ情報を見れるようにする。

そうすることで情報を見える化し、一元管理できるようになりました。

見える化によるインパクト

情報の見える化の次に取り組んだのは、ノンコア業務をアウトソーシングすることでした。

例えば、私たちが管理委託を受けている賃貸物件に住むお客様からのお問合せ業務。

「廊下の蛍光灯が切れています。取り替えてください」

そんなお問合せがお客様からメールや電話で届きます。

例に漏れず問合せ対応の記録もすべて紙で残し、Excelに転記していました。ですが、記録がデータで残っているだけで、分析までは行っていなかったので、「電灯切れが多いな」くらいにしか思っていませんでした。

そこで、問合せ業務をコールセンターにアウトソーシングすることにしました。

問合せ対応とCRMへの情報入力をコールセンターに任せることで、いつ、どんな問合せが多いのかを分析することが可能になりました。

すると、「電灯切れ」が最も頻度が高く、約25%だと判明しました。25%も!

漠然と多いなと思っていたときはそこまでの問題に感じていなかったのですが、具体的に25%という数字が出たことで、対処すべき課題だと実感することが出来たんです。

そこで、管理物件のすべての電灯を一斉に交換することにしました。そうすると次の交換時期の目安が分かりますし、時期がきたら一斉に電灯交換を行えばよくなります。

お問合せの度に対応するよりも効率的ですし、何より、お客様が問い合わせをする負担を減らすことが出来ました。

目の前の仕事に追われていると、その場限りの対症療法になりがちです。アウトソーシングによって外部のプロに任せることで、社員には考える余裕や時間が生まれます。

そうすることで、トラブルを未然に防ぐにはどうすればいいかを考えて手を打つ事ができるようになります。

お客様が「半分」になる未来

辛そうに働く従業員の姿以外にもう一つ、改革をやりきることを決意した要因がありました。

それは、地方で加速する人口の減少と少子高齢化です。

不動産業は、賃貸も新築マイホームも、20代、30代のニューファミリー層がメインのお客様です。その人口が、40年後には今の「半分」になります。

鳥取県のような地方は、全国に先駆けて減少は加速するはずです。

いま、30代である自分が跡を継いで、少なくとも30年間、会社を経営しているあいだに確実に訪れる未来。

このままの延長線で経営をしていると、間違いなく事業は縮小、あるいは破綻してしまいます。その事実が、改革を進めることを強く後押ししました。

ただ、これだけの危機感を持って改革を決意できたのは、私が跡継ぎであり、経営陣の一人だからです。

ベテラン社員からの反発

「これで社内の負担も減るし、トラブルを未然に防げる!」

と喜んでいたのですが、あるとき、コールセンターでミスが起こってしまいます。

「こんなミスがあったじゃないですか!」

と、お問合せ業務を担当する社員から紙を投げつけられました。

そもそも「紙で管理することをやめよう」と改革していたのに、まさか紙を投げつけられるとは……。

アウトソーシングをして、クラウドで管理するようになっても、紙入力での問い合わせ管理を継続していたようなんです。

その時に思いました。

「紙が本当に好きなんだな......」と。

交換日記を始める

「それなら!」と、交換日記をはじめてみることにしました。

慣れ親しんだ仕事のやり方が大きく変わることには抵抗があります。だったら、慣れていることや好きなことを取り入れた仕組みなら上手くいくんじゃないか?と考えました。

その日のトラブルや問題の詳細を、交換日記に書いてもらうようにしたのです。

それを毎日読んで、返事を書く。

デジタルとは程遠いアナログな方法なのですが、これで伝わるならと、根気強くサポートを続けました。

はじめの頃こそ不満や他人事にあふれたコメントばかりでした。ただ、次第に前向きな内容が増えて、「次はこうしてみよう」「こう対応した方がいいんじゃないか」という改善のアイデアも見られるようになってきました。

いくら改革の必要性を訴えても、人の意識や行動は変わりません。

会社の風土や文化が変わるためには、まず最初に仕組みを変えることが大切。仕組みが変わると、行動が変わる。行動が変わると文化が変わる。そうやって、人や組織は変化していくんだと思います。

ですが、残念ながら自分なりにやり切っても、根本的な考えの違いから会社を去る人も多くいました。

「変えてはいけないこともあると思います」

と最終出社日の朝礼で言い残し、辞めていった古株の社員もいました。

当時は社員からの反発に「なにくそ!」と自分を奮い立たせていました。

でも、7年経った今もふと、「あの状況で、どうすればよかったんだろう」と振り返って考えてしまうことがあります。

これは反省から言えることですが、もし、入社当初にもう一度戻って改革を進めるとしたら、これはかなり難しいと感じる「本丸」の課題を後回しにします。

業務をデジタル化するんだったら、カレンダーを導入することから始めます。小さなところからはじめて、広げていく。「便利だね」「以前より楽になった」という小さな成功体験を積み重ねて、変化やデジタル化の抵抗感を減らし、「お、いいじゃん!」と理解が進んでから本丸の改革に着手することをおすすめします。

それでもきっと、改革は一筋縄ではいきません。誤解が生じたり、大なり小なりの反発はあるはずです。

そこで反発に屈して中途半端にすれば、「現場を混乱させただけの人」になってしまいます。

小さな成功体験を大切にしながら、最後までやり抜く強い意志を持ち取り組まなければなりません。

メディアに取り上げられ、改革を前に進める後押しに

反発を受けながらも改革を進め、3年後ぐらいでしょうか。

転換点になったのは、2019年。この頃から、私たちの取り組みがメディアに取り上げられるようになりました。

それまでは、成果が出てもまだまだ半信半疑の状態。不動産のオーナー様からの「後継者は大丈夫か?」という声が、耳に入ってくることもありました。

でもそれがパタッと止んで、共鳴し、評価してくれる人が増えてきたんです。

メディアという外部からの客観的な評価が、社員に「自分たちが進んでいる方向って、いい方向なんだ」と確信を持ってもらえたんだと思います。

どれだけ働きかけても振り向いてくれないこともあったけれど、この頃から一人ひとりが同じ方向を向いてくれるようになりました。

週休3日を導入し、営業利益250%を達成する

業務改善によって無駄が削ぎ落とされ、価値を生み出す仕事に集中できるようになった結果、営業利益は250%増加しました。

仕事のゆとりが増え、繁忙期であっても週休2日。閑散期には、不動産業界で初となる週休3日を実現することが出来ました。年間休日は、2016年の104日から、2022年には130日に増えています。

休日の増加とともに給料を下げる会社もありますが、ウチダレックでは反対に賃上げを実行しました。以前に比べ、1人あたりの人件費は2割増加しています。

そして何より嬉しい変化は、従業員の内面、モチベーションやエンゲージメントの向上です。

慶應ビジネススクールと「従業員満足度調査」を実施したのですが、

・業務効率 +100%
・部門を越えたコミュニケーション +76%
・仕事に対する意欲 +75%
・プライベートの充実度 +76%

と、大幅に上昇しました。

こういった変化に比例するように、離職率は3%にまで下がりました。

「夢がありません……」と去った社員にも今の環境を提供したかったのに、と悔やまれるのですが、改革の成果が従業員の成長にも繋がる、いい循環が生まれていると思います。

批判の嵐の中、DXを進める2つのポイント

ここまで、今に至る変革の経緯について書いてきました。

とにかくやり切るんだという強い意志で実行した結果、今でこそ変革の苦労以上に得られているものはありますが、とはいえ、知っていたら踏まない地雷もたくさんあったと思います。

そのため最後に、7年間の改革のなかで気づいた、DXを進めるポイントについてまとめたいと思います。

①CRMを真ん中に配置する

情報がバラバラの場所に、バラバラの形式である状態では、会社の状態を正確に把握することができず、最適な意思決定ができません。先にも書きましたが、社員も会社の状況がわからないので、自ら進んで動くことができないんです。

そこで情報を見える化するためにCRMを導入したのですが、参考にしたのは、星野リゾートの星野社長が監訳者となっている「1分間エンパワーメント(ケン・ブランチャード著)」です。

この本には、従業員の力を引き出す鍵として、『全ての社員と情報を共有する』『境界線を明確にする』『セルフマネジメント・チームを育てる』の3つが大切だと書かれています。

この3つを実現するための基礎が、DXとCRMによる業務の見える化・仕組み化だと思っています。
CRMを真ん中に配置することで、分断された仕事や異なる部署同士が繋がり、自律的に行動する基礎が作られるはずです。
(自社開発したCRMは、「カクシンクラウド」というクラウド型賃貸情報管理システムとしてサービス化し、全国の不動産会社様に提供させて頂いています!)

②DXの本質は「X」にある

もう一つは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の「X」に着目したことです。

そのためのキーワードが、楽天大学 学長 仲山進也さんのセミナーから引用した『1.1』と『上機嫌』です。

少し説明しますと、1.0を人間の普通の状態とすると、1.1はちょっとポジティブな状態、0.9はちょっとネガティブな状態です。

1.1の人と0.9の人がいた場合、掛け合わさると『0.99』になります。

1以下になるほど、ダークサイドの力は強いので、不機嫌でいないことが大切なんです。

サッカーチームと同じ人数の11人で考えてみます。

ちょっとずつ不機嫌な0.9の人が11人いるチームでは、チーム力は『0.31』。

一方で、ちょっとご機嫌な1.1の人が11人いるチームでは、チーム力は『2.85』と、約10倍の差がついてしまうんです。

社員がご機嫌に働ける環境を作り上げた会社は、企業としての基礎能力が上がっていくはずです。

DXというとデジタルツール、クラウドを活用するところまでしか考えない企業が多く、もったいないなと思っています。

重要なのはその先、デジタルが会社に浸透することで社員がご機嫌になり、組織が元気になることなんです。

改革をはじめて、7年。

日本海の荒波のような日々もありましたが、今振り返ってみると、短期的には悩むことがあっても、長い目で会社や社員、地域のことを見ると、これまでの歩みについて納得しながら進んできました。

これからも地域や不動産業界のお役に立てるよう、変化や挑戦を続け、その経験や学んだことを発信していきたいと思います。少しでも私たちの経験がお役に立てたら幸いです!DX導入にご興味・ご関心のある企業はお気軽にご連絡ください。
Twitter→@uchidamitsuharu
メールフォーム→https://kakushin-cloud.com/inquiry/

中小企業でもDXで変われる。そのコツを7年の歩みとともにまとめました。
こちらも読んでいただけると嬉しいです!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?