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"脱IT企業投資"できなければ日本の未来はない

周知のとおり、この30年間世界中の国々が成長する中で我が国の経済は停滞し、グローバルな日本のプレゼンスはずいぶん低下してしまいました。

政府や企業も手をこまねいているわけではなく、ここ数年はIT分野のスタートアップへの投資額が増えており、業種別の投資額で見てもIT分野への投資割合は最も高くなっています。

国も自治体も経済界もIT企業への投資を加速させ、欧米や中国に負けじと数多くのサービスが生み出されています。

IT企業へのリソースの集中投資は日本のためにならない

しかし、IT企業を偏重する現在の投資のあり方は、果たして我が国の未来にとってプラスになるのでしょうか。

私は大手IT企業で勤務したのち、ITの会社を立ち上げ、その後菓子の製造小売業をはじめました。

ですから、ITビジネスの良さもよくわかっております。

ITビジネスの最大のメリットは、生産性が非常に高い業態であり、儲かるということです。

例えば、私が経営するITの会社と菓子製造小売の会社を比べると、同じ社員数で売上はITの方が3倍ほどあります。

固定費などのコストも少ないため、利益は10倍以上あります。

だからこそ、投資先がIT企業に偏重するのは資本主義を前提とすると当然です。

しかし、今の日本において、長期的にグローバル社会で生存を目指すのであれば、儲かるかどうかという指標の優先度は落とさなければならないのです。

なぜなら、日本はいつか外需を取り込まないといけない時がやってきますが、今盛んに投資されているITをはじめとした業態の企業では、下記の理由でグローバルな市場での競争に負けてしまうからです。

1.資本集約的である

他の業種に比べ、IT分野は非常に資本集約的な性質が強いです。

資本集約的だということは、投入する資金の量が多いほど強い企業ができるわけです。

この大前提に立ち返ると、欧米や中国のIT企業と日本のIT企業では、投資される資本の桁が違うわけであり、太刀打ちできないのは明らかです。

2.日本語という言語

言語による壁も高いといえます。

英語、中国語はいずれも話者人口が10億人を超えているので、欧米や中国の企業はスタート時点で大きな市場を持っています。

そして、わざわざ他の言語を使ってローカライズしなくても、ユーザーが利用できるのもポイントです。

SlackやZOOMのように、今や国内で当たり前のように使用されているITツールも初めは英語オンリーでしたが、日本国内のユーザーはたくさんいました。

さらに、英語は今後も話者数は増えていくと想定されますが、日本語を使用する人々は確実に減っていきます。

国内の売上基盤が減ったとしても、日本人以外に日本語を理解できる人はほとんどいないため簡単には市場の開拓ができません。

3.起業家のカリスマが顕在化しにくい

これは前項にも通じるところがありますが、母国語による市場規模の違いは、当然ながら企業の成長スピードの違いにつながります。

だとすると、創業してから企業が大きくなるまでのスピードは、欧米や中国と日本では天と地ほどの差があるのではないでしょうか。

GAFAMのようなビッグテックもそうですが、企業が爆発的に成長するためのエンジンに、起業家のカリスマが大きく関わっていると私は考えています。

「日本からはジョブスが生まれない」と昔から言われていますが、私はこの認識は間違っていると思います。

日本でも才能を持った起業家はたくさん生まれているはずですが、市場規模が小さく欧米ほどの加速度的な成長が達成できないため、そのカリスマが顕在化しにくいだけなのです。

現代においては、ケタ違いな市場の大きさに自社を位置付けることができ、起業家のカリスマにより短期間で爆発的に成長することで、ビッグテックのような卓越した世界的企業ができあがるのです。

ITに限った話ではない

日本はいずれ外需を取りに行かないといけないフェーズが必ず来ます。

その時、資本も人も潤沢で、すでに大きな潜在顧客を抱えている他国の企業とガチンコでぶつかることになりますが、勝てるわけがないのです。

これはITに限らず、前述した特徴に当てはまるすべての産業に待ち受けている運命です。

だからこそ、世界で戦おうとするのではなく、むしろ戦わずして外需を獲得できるような産業にこそ、投資をすべきなのです。

これについては、また後日記事を書きたいと思います。


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