内橋 良介 / 地方のお菓子屋社長

東京でウェブマーケティングの会社を経営していましたが、日本のいいものを残したいという想…

内橋 良介 / 地方のお菓子屋社長

東京でウェブマーケティングの会社を経営していましたが、日本のいいものを残したいという想いから、地方の産品を使ったお菓子屋を経営することにしました。 2020年から事業買収を始め、複数店展開しています。 小事業向けの施策や、中小企業目線での国や企業、地方のあり方を書きます。

最近の記事

補助金はストーリーで勝ち取れ① 〜採択される事業計画とは〜

先日、零細企業、特に地方の企業にとって補助金がいかに有用か、という記事をポストしました。 一方、申請してもなかなか採択されなかったり、申請自体の難易度のため諦めてしまう零細企業も少なくありません。 弊社は今まで多くの補助金に申請してきましたが、幸いにも9割以上の確率で採択されております。 補助金によっても異なりますが、公表されている採択率が2~5割程度であることを考えると、小さな企業の割にはなかなか奮闘しているのではないでしょうか。 なお、コンサルタントや行政書士に頼

    • 補助金を使わない地方零細企業は大損している

      零細企業にとって補助金や助成金は心強い制度です。 補助金だけで生き残るゾンビのような企業を生んでしまうというデメリットもありますが、基本的には新しい挑戦をしたい企業の背中を押してくれるというメリットが大きいと思っています。 ところが、零細企業、特に地方の企業は補助金を活用していないケースが往々にしてあります。 私も独立したての頃は補助金や助成金などまったく頭にありませんでしたが、今思えばかなり勿体無いことをしました。 今では毎年並行して複数の補助金を活用していますが、

      • 地方は人口減少の抑制に時間を使っている場合ではない

        人口減少は地方自治体の課題として挙げられることが多い問題です。 最新の国勢調査によると、82.4%もの自治体で人口が減少しているそうです。 弊社の拠点である山形県酒田市も毎年1〜1.5%ほど減り続けています。 しかも、その内訳を見てみると、高齢者の減りが緩やかなのに対し、生産年齢人口が急激に減少していることがわかります。 これは酒田市に限らず、人口減少に苦しむ自治体の多くに当てはまることです。 人口流出の抑制はするべきなのか先日、酒田市長との意見公開会に招かれたので

        • アウトサイダーが地方を強くする

          地方創生の鍵は「地域資源」の活用にあることはいうまでもありません。 地域資源とは何か。Wikipediaでは下記のように説明されています。 地方創生とまではいきませんが、弊社も野菜やフルーツといった地域資源を積極的に消費者にアピールしているおかげか、ここ3年で売上は3倍近くまで成長しました。 一方、豊富な地域資源に恵まれているにも関わらず、それらがうまく活用されている地域はそう多くありません。 当たり前だからこそ見えない価値地域資源が活用できていない最大の原因は、地域

        補助金はストーリーで勝ち取れ① 〜採択される事業計画とは〜

          地方に蔓延する、異常なまでの値上げアレルギー

          私は地方(山形県酒田市)の会社を経営していますが普段は東京にいるので、地方の現場にいる時は極力地元の人と話して地域の情報をアップデートするように心がけています。 ここ最近興味を持って聞いているのは、地元企業の値上げについてです。 原油高、円安等による原材料価格の高騰が始まって久しいですが、弊社のコンシューマー向け商品の販売価格は最大で1.5倍程度まで値上げしました。 一方、企業物価は事実として大きく伸びているものの、酒田市にある一般消費者向けのお店を見ても、そこまで値上

          地方に蔓延する、異常なまでの値上げアレルギー

          当たり前のことすらできない、地方の零細企業

          歯止めがかからない人口減少と経済の衰退により、地方の零細企業は生き残りをかけた変化を求められています。 そして、コロナ禍を経て急速に加速したのがEC化です。 弊社もECに注力し、今では売上の半分以上を占めるまでに成長しました。 周りを見渡してみると、庄内地方でもここ2、3年でECを始めた事業者が増えました。 BASEやSTORESのように、初期投資がほぼ必要なく簡単にECを立ち上げられるサービスが盛り上がってきたこともあり、雨後の筍のようにポコポコECが増えていった印

          当たり前のことすらできない、地方の零細企業

          「DX補助金」を紙の申請書でしか受け付けない、地方行政の罪

          地方は小規模事業者が利用できる補助金・助成金が意外に多くあります。 小規模事業者にとって、少額であっても事業投資に利用できる補助金があるのは非常に助かります。 一方で、行政の補助事業に対する姿勢には、疑念を抱いてしまうことがあります。 DX補助金を紙で申請させる地方行政先日、山形県の補助事業であるDX補助金というものに申請しました。 DXの定義にはご存知の通り、デジタル技術を活用した業務プロセスの改善が含まれます。 にもかかわらず、山形県のDX補助金は書類の郵送をも

          「DX補助金」を紙の申請書でしか受け付けない、地方行政の罪

          安売りが、地方経済を破滅へと導く

          首都圏に比べて、地方はほんとうに「安い」です。 売り手も買い手も、安いことが当たり前になってしまっています。 例えば、弊社のロールケーキは税込1,520円で、1,000円前後が一般的な庄内地域ではかなり高価だと認識されています。 一方、催事などで首都圏に出店すると、安いと言われることが多々あります。 東京では最低でも15,000円以上するような寿司が、弊社がある酒田では6,000円程度で食べることができます。(東京が高いのもありますが) この価格感の違いは、山形県に

          安売りが、地方経済を破滅へと導く

          零細企業の人件費削減は、破滅の第一歩

          零細企業を経営していると、同じく零細企業の経営者と話をする機会があります。 そんな中で、すごく大切なことに気付きました。 それは、業績が悪い時こそ人を雇わないと、窮地を脱せないということです。 零細企業の経営者は自分でやりすぎ零細企業あるあるですが、業績が悪くなると人件費を削減して、経営社自らが現場に立ってしまうことがあります。 これでは会社の舵取りをする者が不在になってしまいます。 私は3年前に株式譲渡を受けましたが、前オーナーは経営者でありながら、毎日店頭で販売

          零細企業の人件費削減は、破滅の第一歩

          地方の零細企業が採用に失敗する、たった一つの理由

          零細企業、特に地方にある企業にとって、採用は大きな経営課題です。 人は足りないけど、そこまで高い給料は払えない。でも、いろいろやってほしい。 そんな都合のいい人材、当然ながら来てくれません。 私が株式譲渡を受けた当時、従業員は2人しかおらず、事業の成長どころか存続すらも危うい状態でした。 特に、製造スタッフがいなければ生産量を増やせず売上のアッパーも決まってしまうため、すぐに募集を開始しました。 ですが、募集から1年たっても、採用はおろか応募もほとんどありませんでし

          地方の零細企業が採用に失敗する、たった一つの理由

          地方創生のバカバカしさ

          山形県で会社の経営を始めて3年が経ちました。 3年も地方で会社をやっていると、やはり少なからず地方創生というものに興味を持ち、自社が地域に対してできることなんかを考えるようになりました。 そんな中で、地方創生を取り上げたウェブメディアの記事や動画コンテンツも自然と目に入るようになりましたが、いつも違和感を感じています。 地方創生が大切なのは自明の理ですが、少子高齢化に直面する日本において、なんとなく地方経済の残滓を搾り取るための免罪符的な使われ方をしているように思えて仕

          地方創生のバカバカしさ

          ブランディングで売上が2倍になりました

          "ブランド"や"ブランディング"といった言葉をよく耳にするようになりました。 "ブランディング"というキーワードのGoogleの月間検索ボリュームを調べてみると、4年間で1.7倍程度になっていました。 爆増ではないですが、ジリジリ関心が深まっている感じですね。 私の会社でもブランディング(正確にはリブランディング)を実施して、直接的か間接的かはわかりませんが、ここ3年で売上が2倍以上に増えました。 実際ブランディングをやってみて感じたのは、小さな企業ほどブランディングに

          ブランディングで売上が2倍になりました

          文化への投資こそが日本が生き残る道である

          前回、資本集約的な事業ではいずれグローバルな競争に負けてしまい、日本が死んでしまうという記事を書きました。 私が考える日本がこの先グローバルなプレゼンスを保つために必要な戦略は、"競争する必要がない"事業をたくさん生み出すことです。 言い換えると、"日本にしかできない"事業への投資を強化するということです。 商品やサービスの品質といった機能的価値は大前提として満たしている必要はありますが、その上で"日本であること"を情緒的な価値として見出すことができる事業こそ、他国と競

          文化への投資こそが日本が生き残る道である

          "脱IT企業投資"できなければ日本の未来はない

          周知のとおり、この30年間世界中の国々が成長する中で我が国の経済は停滞し、グローバルな日本のプレゼンスはずいぶん低下してしまいました。 政府や企業も手をこまねいているわけではなく、ここ数年はIT分野のスタートアップへの投資額が増えており、業種別の投資額で見てもIT分野への投資割合は最も高くなっています。 国も自治体も経済界もIT企業への投資を加速させ、欧米や中国に負けじと数多くのサービスが生み出されています。 IT企業へのリソースの集中投資は日本のためにならないしかし、

          "脱IT企業投資"できなければ日本の未来はない

          お金も人脈もない人こそ、地方で挑戦すべき理由

          日本の経済成長が芳しくないのは周知の事実ですが、地方の経済はそれ以上にやばいと言わざるを得ません。 弊社が位置する酒田市は、毎年1%以上の人口減少が続いており、弊社が創業した2011年から比較すると、なんと13%近い人口が消失しています。 その内訳を見ると、高齢者が大幅に増加して40%近い構成比を占めるようになった反面、生産年齢人口、及び14歳以下の人口の絶対数と構成比は減少しています。 経済の主役である生産年齢人口にいたっては、10年前から実に絶対数で22%も減少して

          お金も人脈もない人こそ、地方で挑戦すべき理由

          コロナ禍の支援金・給付金により日本経済はさらに弱体化する

          日本がコロナ禍に陥ってから2年が経ちましたが、大幅な売上減少を乗り越えようと死に物狂いでやってきた企業・個人事業主の方はたくさんいらっしゃいます。 そんな中、国から差し伸べられた救いの手が、持続化給付金や事業復活支援金といった支援です。 店舗経営が主だった弊社もコロナが流行り始めた当初は大幅に売上が減少し、持続化給付金を給付していただきました。 給付金を従業員の賃金や家賃といったランニングコストに充填し、同時に個人資金で事業投資を行なった結果、なんとか会社を潰さずにすみ

          コロナ禍の支援金・給付金により日本経済はさらに弱体化する