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車のデザインとは

【はじめに】

車のデザインは車を選ぶときに一番はじめに入ってくる情報です。

車を気に入るか気に入らないかは、デザインが大きな要素を占めています。


【デザインという言葉の意味】

デザインという言葉の意味ですが、

「物事を良い方向に進めるための計画もしくは方法」

です。

本来の意味的に日本語で言うと「設計」といったほうがしっくり来ます。

しかし、一般的には日本語で言うと「意匠(いしょう)」の事を指すことが多いです。

意匠は意匠法という法律に定義があります。

特許庁によると法的には

「物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」

とあります。

出典:意匠とは 特許庁
https://www.jpo.go.jp/seido/s_ishou/chizai05.htm


【デザインという言葉の捉え方】

例えば車を見ていて

「良いデザインだな」

と言った時、その意図は人によって大きく異なります。


〈意匠〉

よくあるのは魅力的な内外装の車を指すことです。

すなわち意匠のことを指しています。


〈機能〉

もっと考えを進めると、その車の構成に不自然さがなく、機能的であることです。

すなわち良い設計であることを指します。

外観のみのことだとしても、車は早く移動する大きな物体のため、空力性能という重要な要素を表します。

外観からわかる機能への期待にはタイヤ位置があります。
タイヤが四隅に踏ん張る姿は車体の安定性=運動性の高さを物語ります。


〈ライフスタイル提案〉

さらに進めると、その車がある生活を思い浮かべ、良いライフスタイルが思い浮かべられることです。

車がどのような使われ方をするのかをよく考えられた車が該当します。


〈社会適合性、持続可能性〉

さらに進めると、この車が存在することで、使用者とその周りの社会環境にどんな良い変化が現れ、良い効果が得られるのか?を問う車です。

エコカーやシェアリング、シナジーが得られる、持続可能なもしくは持続可能性を感じさせる車のことです。

あまり思想を進めるとコンセプトが先行してしまい、ノーベル平和賞並みに絵に描いた餅になってしまうので、個人的には地に足の着いた落としどころの感じられる提案が良いです。


【複雑なデザインvs簡素なデザイン】

シンプルであってもデザインだし、複雑であってもデザインです。

近年はアップル製品に代表されるような要素を削ぎ落とした「less is more」なデザインがウケていますが、甲殻類の裏側に代表されるような複雑な要素を矛盾することなく整理したデザインもまたデザインです。


【車のデザインと生命体】

人や動植物などの生命体は進化により、必要な機能を作り出し、不要な機能を退化させる方式を取ってきました。

美術家・芸術家のなかには生命体をモデルにした表現をする人も数多くいます(ガウディなど)

車はライトが左右に二つあったり口に相当するグリルがあったりして、人や動物の顔との類似性があります。

また、4つの車輪が4本足の動物を想起させます。


【お金の問題】

車の開発や生産はとてもお金がかかります。

車には安全や環境問題でがんじがらめになった規制があり、しかも刻々とハードルは上がっていきます。

しかし車は人生でも屈指の高価な買い物です。

贅を尽くしたような高級車にはそのお金に見合った見た目であることを求めます。

安い車であってもそのまま安っぽさをユーザーに見せてはそっぽを向かれます。


【生産技術がデザインを進歩させる】

自動車の生産技術がデザインに与える影響は大きいです。

どんなに素晴らしい設計をしても生産能力が見合わなければ実現できません。

人が運べる重さでなければうまくラインが組めなかったり、ラインの大きさが車の大きさの制約になり、デザインの制約になったりします。

例えばボンネットやドアの隙間は目立たないようにデザインされていますが、生産技術が高くなってくると、逆に差別化のために目立たせるようなことをしたりします。


【スタイリングの流行り】

〈ホイールベース〉

時代を追うごとにホイールベースは伸びていきます。

前述の通り運動性能を想起させるだけでなく、乗員室や荷室のスペースを広げるためにも全長中のホイールベースの割合は増えていくことは必然です。
特に小さい車では顕著で、軽自動車はほとんどオーバーハングがない車が多いです。

メカニズム的にはホイールベースは乗員のためのスペースで構造物を組み込むことが難しいので剛性を確保するのが難しく、おいそれと伸ばすことは出来ませんが、それゆえ技術力の現われにもなっています。


〈トレッド〉

技術的な難しさはホイールベース程ではないです。

しかし、時代を追うごとにトレッドも広がっています。

ひとつには安全性能の要求水準の上昇、もうひとつは走行性能水準の上昇、そしてデザイン上の安定感です。


〈フロント〉

この部分は形状的にはあまり機能性を重視していないと思われます。

近年は押し出し感と個性を重視した作りが多く、グリルも旧来の空気を取り込むための穴が大きくは空いておらず、見せかけだけのグリルになっているものが多いです。

技術の進歩よりは歴史やアイデンティティを重視する傾向が強いです。

フロントには灯火類があり、光るものも人の興味を引くため光物は凝った演出がされます。

ヘッドライトはデザイン的に人の目の部分に相当するため、非常に凝った作りが多く、自動車部品の中でも比較的高いコストがかけられています。


〈テール〉

この部分もあまり機能性を重視していないと思われます。

しかしボンネットに比べると開閉頻度の高いトランクやハッチバックは開閉方法は工夫を要します。

テールのデザインはフロントに比べて写真で見ることは少ないですが、路上で目の前に来るとまじまじと見る時間が長いので、テールのデザインに気を使わないメーカーは路上でのドライバーへのアピールに失敗し、損をします。


〈ウィンドウグラフィック〉

主にサイドガラスの形状が形作る表情をウィンドウグラフィックといいます。

ガラス部分の大きさは視界の良さに繋がり、視界は安全性に繋がるので、その会社の内規が強く影響します。

また、ガラスはボディ強度的にはあまり寄与しないし重いので、機能的には少なくした方が良いです。

車を真横から見る際は遠くから見ることがあまりないので、気にしない人が多いですがガラス部分を横長にしたり後ろに向かって持ち上がるようにすると全高の高さを低めに見える効果があります。

センターピラー部をブラックアウトして一体感を出し、長く見えるように演出されるものが多いです。

全高を低めに見せると重心の低さ=安定性=運動性能の良さを連想させることが出来ます。


〈後部ガラス〉

色んなボディタイプでもなだらかにしてクーペ的な外観をするものが増えてきていると思います。

クーペに近いと運動性能の良さを連想させます。


〈ホイール〉

扁平度が高いタイヤが使われ、ホイールの径はどんどん大きくなっています。

ホイールの大きさは性能的な要求とはほとんど関係がなく、見栄えが主な要素になります。

ファッション的にはホイールの大きさは女性のハイヒールの高さに近いものがあります。

モーターショーでも市販車に装着しないような大きなホイールを履いている車が多いです。


【あとがき】

デザインは車が売れるか売れないかの大きな要素を占めています。

デザインはとてもシンプルに購入者に訴えかけます。

色んな方向性があって良いのですが、個人的には機能的ではないことが外見から見て分かると残念なデザインだと思います。

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