
自動車のメカニズム(電子制御ブレーキ編)
【はじめに】
ブレーキに限らず、電子制御は車に欠かせないものになっています。
自動車メーカーも家電のショーに出る時代です。
特にブレーキは安全に直結する機能なので信頼性を第一に少しずつ少しずつ地道に実用化されてきた歴史があります。
ブレーキの基本的な構造は下記のノートにまとめてますので見てみてください。
【電子制御ブレーキ】
ブレーキの電子制御は以下のものがあります。
・ABS
・TRC
・ESC
・ブレーキバイワイヤ
・プリクラッシュブレーキ
ブレーキの制御は油圧をコントロールすることで行います。
【油圧制御回路】
油圧のコントロールにはATでも用いられるバルブボディとソレノイドバルブを用います。
バルブボディは金属の塊に深い迷路のような溝が彫られています。
バルブボディにはソレノイドバルブが刺さっています。
ソレノイドバルブは電磁力で中のピストンが動き、油の通り道を変化させるのに用います。
画像には載せてませんが、能動的に油圧を発生させるためのポンプが装備され、ポンプを動かすための大きなモーターが備え付けられています。
【ABS】
Antilock Brake Systemの略で、ロック防止ブレーキです。
航空機のブレーキ技術からの転用です。
ブレーキ中に車輪のロックを防止します。
ロックするとタイヤが偏摩耗する他、進路を変えることが出来なくなります。
このため、車輪のロックを検出したら油圧を解放するという単純なロジックで実現しています。
ABSの無かった時代のF1レーサーは自前でABSもどきをやっていましたが、機械で実現するその速さはミリ秒単位です。
一時期のF1でレース中のタイヤ交換が実質出来ないレギュレーションだった事がありました。
その時スピンをした車のタイヤに偏摩耗が起き、タイヤを交換していない状態で走行を続けていました。
偏摩耗が原因で振動が起こり、振動が原因でサスペンションアームが粉砕したという出来事がありました。
タイヤはワイヤーで車体に繋がれていたのでドライバーにぶつかることはありませんでしたが、衝撃的な映像でした。
今の車はABSのお陰で円周方向に偏摩耗することははないでしょうが、偏摩耗したらタイヤを交換してください。
制動距離に関してはロックした方が短いです。
【TRC】
TRaction Controlの略です。
タイヤのグリップ限界を超えるのはブレーキの時だけでなく、アクセルの時もあります。
TRCはタイヤが回りすぎないようにブレーキをかけたり、エンジンの出力をコントロールする仕組みです。
このときユーザーはブレーキを踏んでいないので、ブレーキを踏まなくても油圧をかける仕組みが必要です。
このため油圧制御回路内にポンプ(モーター)を持っています。
【ESC】
Electronic Stability Controlの略で、横滑り防止装置と呼ばれるモノです。
これの制御に欠かせないのがヨーレートです。
ヨーというのはハンドルを切って変位させる車の向きのことです。
角度変位を検出するセンサーはスマホやタブレットにも付いているものと仕組みは同じです。
このセンサーを車に取り付け、車の向きが想定通りかどうかをチェックして想定と違った時に姿勢を戻すようなブレーキのかけ方をします。
目標ヨーレートよりもセンサー値の方が低ければ前輪滑り状態と判断し、内側の後輪にブレーキをかけて曲げる方向(ヨーを増やす方向)に修正します。
反対に目標ヨーレートよりもセンサー値の方が高ければ後輪横滑り状態と判断し、外側の前輪にブレーキをかけて曲げない方向(ヨーを減らす方向)に修正します。
メーカーのHPを見ると安易にアンダーステアやオーバーステアという表記がされていることが多いですが厳密に言うと違います。
各社各様に呼び名をつけて混乱していました。
特にトヨタのVSCが有名でしたが、部品メーカー共同でESCに統一しています。
【ブレーキバイワイヤ】
ブレーキをペダルから物理的に切り離す仕組みです。
ブレーキペダルにはセンサーが付いていて操作量を検出し、ブレーキ装置の制動を油圧や電動で制御します。
エンジン停止時でも動作する必要があり、摩擦ブレーキと回生ブレーキのミックスが必要なハイブリッドカーで主に使われます。
バイワイヤについてはこちら
【プリクラッシュブレーキ】
上記までは自車の状態をみてブレーキをかける仕組みでした。
このブレーキは車外の状況を監視してブレーキを掛けます。
監視用のレーダー・ソナー・カメラを使ってぶつかりそうな時だと判断した場合に、ブレーキをかけます。
ブレーキを能動的にかける仕組みはESCの機構です。
詳しくは下記のノートを参照ください。
【あとがき】
電子制御ブレーキは安全に寄与するものばかりなので、一旦実用化すると普及・標準化・義務化が早いです。
自動運転時代を迎え電子制御ブレーキの果たす役割はますます重要になってきています。
自動ブレーキもそのうち標準化するでしょう。
しかし過信は禁物です。