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都合のいい女。

婚期を逃した。
ずっと好きな人がいた。
Tくん。高校時代の後輩。
長いこと、付き合っていた。
初体験の人だったし、Tくんが上京して遠距離になっても、
私が東京に行ったり、Tくんが里帰りしたときは、
間違いなく独り占めしていた。
でもね、いや、確かに、交際を申し込まれてはいないし、
私から「付き合ってください」とも言ってなかった。
ある日、Tくんがぽつんと呟いた。
「こんなの付き合ってるとは言えないでしょ」
その前後の会話は思い出せない。
「こんなの」ってなんだ。
年に数回しか会えないことか?
ちゃんとお付き合いしましょう宣言してなかったことか。
その答えは聞けてない。

その後、何人かの男性と恋愛はした。
結婚を意識した男性とは向こうの親の反対があり別れた。
そんなこんなでアラサー時代は、
オトコより親友のKちゃんと過ごすことが多くて、
Kちゃんにオトコができるとひとりで過ごした。
ただ、そんなときに限って、Tくんから連絡が来て、
私はいそいそと誘われるままにデートを重ねていた。
「それ、都合のいい女やん」とは、後にお付き合いした人の言葉。
いまでも都合のいい女扱いされていたとは信じられないけれど、
客観的に見れば確かにそうとしか考えられないは理解している。

Tくんが結婚したのを知ったのは、
都会の旅行代理店の前にあった新婚旅行を報告した写真だった。
Kちゃんが偶然見つけてくれてすぐに連絡、
急遽、待ち合わせしていっしょに確かめに行った。
共通の友人に確かめたところ、
Tくんが結婚したことを誰も知らされてなかった。
ショックというより、
「そういえばここ半年、連絡は来てなかったな」
なんてことをぼんやりと考えていたのを覚えている。

都合のいい女。
たまに彼女のように振る舞い、たまにセックスをして、
お返しはないけれど誕生日にはプレゼントを贈った。
連絡がないときはKちゃんや増えていく姪っ子たちと遊んだり。
いや、そもそも、群れるのは好きじゃないし、
自分にはひとりの時間も必要だ。
束縛はするのもされるのも好まない。
だからそれでよかった。

ふと、都合のいい女って、自分にとっても都合がいいんだなと思った。
いや、負けん気は強くないはずだけど。

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