サジニセニハラ ステージ5

サジです。本名は今はいいや。隣でタバコを吸いながら物憂げに空を見上げているのはセニハラ。本名は今はいいや。
「どうしたセニハラ、いつもみたいに何か話せよ」
「……胸が痛い」
「大丈夫か? 看護婦呼んでこようか?」
「ううん、この痛みは誰にも癒せない、心の痛み…」
「やっぱり看護婦呼んでくる」
「ちげぇよ、別に頭が狂ったわけじゃない」
「頭が狂った以外の何物でもないだろ今のは」
「世の女子中高生が好きそうな恋愛系のポエムあるじゃん、あれやりたい」
「いやキツいわ、さっきのでもう虫酸が全力疾走したもん」
「…全力疾走すると息が切れる。シャワーを浴びると身体が濡れる…そんな当たり前と同じように、私は君が好き」
「マジでやめろ、僕の言葉を引用してポエムを作るな」
「サジもやろう。BGKPが高かった方の勝ちな」
「まずBGKPってなんだよ、そういうオリジナルの略語とか生み出すとこまで女子中高生になりきらなくて良い」
「バカなガールがキュンとするポイント、略してBGKP」
「審査員がいないと成り立たないじゃん。あとツッコミもいないと僕らのガンの手術痕より痛々しい事になるぞ」
「ポエマーと審査員交互にやっていこう」
「めちゃくちゃ嫌だ」
「……真っ白な私の人生を色付けてくれた君。恋が終わっても、君のくれた色はまだ消せないまま」
「初っ端からあんまり飛ばすな。キツ過ぎて僕の頭が真っ白になったわ」
「何BGKP?」
「100点満点で付けたら良いの?」
「……100点の君と50点の私。釣り合うか不安だったけど。君が25点分けてくれたから、一緒になれたよ」
「お前マジで殺すぞ。二度と僕の言葉を引用してポエム作るな」
「何ポイント?」
「二つで合計40ポイントかな」
「なかなか厳しいな」
「最初だからこんなもんだろ」
「M-1の一組目みたいだな、じゃあ次、サジの番」
「えー……忘れられない想い出がある人は、きっと失敗しない」
「80ポイント、お前才能あるな」
「どこがだよ」
「中身があるようで根拠も何もない短くまとまった文章。思いを想いと書いてるのもポイント高い」
「めっちゃ分析するじゃん」
「……君との恋を分析したとき、私は」
「殺すぞ」
「ごめん」
「次、セニハラの番だぞ」
「ねえ、ずっと君のこと考えてたよ? 君はどれくらい私のこと考えてくれてるだろうって、考えてた」
「片想いの切ない感じが良いね、語りかけてる風なのも良い。65ポイント」
「よっしゃあ!」
「そんなに喜ぶことでもないだろ。お前こそSNSとかでそういうアカウントでも作ったら良いじゃん」
「サジ知らんのか? いまSNSがどんどんサービス終了してってるんだぜ」
「そうなのか」
「地球滅亡のデマっぽい内容が拡散されててなー、虚偽の情報で国民がパニクらないように、一時的に閉鎖してるんだとさ」
「へえ、地球滅亡でポエム作ってみてよ」
「慥かに地球が滅ぶその日も貴方は私の傍には居らず、莫迦な女と何処へ向かふか、この眼に映る総てに固唾を呑む」
「急に椎名林檎みたいになるじゃん」
「椎名林檎に謝れよ」
「ごめん。よく分からないオシャレさがあった。75ポイント」
「よっしゃあ!」
「なんでそんなに喜べるん?」
「俺からもリクエストするわ。『ガン』でひとつ作って」
「……もし私がガンになったとしても、君は隣で笑っていてくれるって確信が持てる。だから君のことが好き」
「…おい、サジ」
「なんだよ」
「それ、お前の本心か?」
「そんなわけないだろ、女子中高生が好きそうなポエムを言っただけだ」
「50000ポイントだな」
「本心じゃないっつってるだろ」
「出て行った君が置いていった、一本残ったタバコ。その火と一緒に、私の初恋も消えた」
「タバコがなくなったことまでいちいちポエムにするな」


地球滅亡まであと四ヶ月。

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