月一連載を目指すとか言ってた世界史連載ですが、もう９月になってしまいました。もう夏が終わったなんて。やっぱり３ヶ月に１回ペースくらいが無難かな。書きたいものはどんどん溜まっていくんですけどね…。

　前回から随分時間が経ってしまったので改めて説明すると「今は戦前の状態によく似ているらしい」という話をテーマに、自分なりに歴史を振り返りながら書いている自己満足シリーズです。前回、前々回は日清戦争に絡めて下記のような記事を書かせていただきました。

　1895年、日本は日清戦争で清から奪った領土を、ロシアに「返してあげなよ」と言われてしぶしぶ返すことになった。それだけでもムカついているのに、ロシアがその交渉の見返りに清から満州を横断する鉄道の敷設権をもらったことを知る。更にその３年後、ロシアは中国分割でよりによって日本が清に返した旅順と大連を租借する。「そこは本来俺のものになるはずだったのに！！」と日本は怒る(いや、君のものでもないからな)。

　こうやって書き出してみると、本当にケーキを取り合う子どもの喧嘩みたいだから切ない。あえてこの風刺画をもう一度載せとこう。

　一方、こんな状況なので清国内では「外国人出てけ」勢力が力を増していた。そうして起こったのが1900年の義和団事件。

　外国人排斥運動がきっかけになったという意味では日清戦争と同じだけど、今回違ったのは、清政府もあえてその流れに止めずに一緒に外国人を追い出そうとした点。それを感じ取った8カ国（日本・ロシア・イギリス・フランス・アメリカ・ドイツ・イタリア・オーストリア＝ハンガリー帝国）は連合軍を作って清に乗り込んだ。名目はもうすっかりお馴染み「自国民の安全確保」。共通の敵さえいれば一緒に手を組めたんだね、あなたたち…っていう顔ぶれですね（苦笑）
　結果、義和団は鎮圧。清はますます連合諸国からむしり取られることに。

　ロシアは暴動鎮圧後もそのまま満州に居座ったので、日本は更に怒り心頭。そこで「同盟組もうぜ！」と持ちかけてきたのが、同じくロシアを疎ましく思っていたイギリス。義和団事件での日本軍の活躍を見て、利用価値があると踏んだという説もあります。

不良ぼっちと引きこもり

　見出し、ただの悪口になっちゃってますが、まぁ、19世紀後半のイギリスが「光栄ある孤立」を主張してたのは事実ですし（友達がいないんじゃない、友達を作らないだけだ的な）、日本は長らく鎖国してたし…。そんな２国が手を組んだ日英同盟は世界を驚かせました。

　やっぱり島国同士通じるところが多いんでしょうか。当時の日本は、同じく資源も国土面積も少ないイギリスが世界中に植民地を従えて大英帝国として君臨しているのを見て大いなる夢を抱いてしまったのかもしれません。夢って言うと聞こえはいいんですが…。

　少し遡りますが、初代総理大臣として知られる伊藤博文は、その前はテロリスト（尊皇攘夷派）としてイギリス公使館の焼き討ちにも加わってた人物でした。でも一転して開国派になりイギリスへ留学。そこで会得した英語力を駆使して総理大臣に就任したことを考えると、やはり開国の時点から東洋のイギリスを目指す道は定まっていたということなのかもしれません。

　ただ、興味深いのは、その伊藤博文は日英同盟の締結に消極的だったという話。むしろロシアと交渉する「日露協商」派だったということで、微妙な時期にロシアを訪問してイギリスを焦らせたと言われています。
　詳細はここでは省略しますが、結果的に日本はイギリスの手を取り、彼らを後ろ盾に日露戦争に突入、勝利することになりました。

ラッパのマークの正露丸

　日露戦争といえば、最初にこれをイメージする人も多いんじゃないでしょうか。

　あのラッパの音も幻聴のように聞こえてくる（元々は食事時を知らせるラッパ）。調べたらごく最近（2021年）発売停止になったんですね！びっくり。時代が知らない間に進んでいる…。

　元々は日清戦争で感染症などに悩まされた経験を活かして研究されたものでしたが、飲んだことある人は分かる通り、強烈な匂いを放つのであまり浸透しなかったとのこと。

　この例、当時の日本の状況をうまく表しているなと思います。誰かが意図的に作り出したトレンドに流されて、陛下が言うならとか、これがあったから勝てたらしいという噂を信じて、一見民主主義的に常識として世間に受け入れられていった感じがじんわり怖い。まぁ、正露丸の場合は本当に効いたから良かったんだろうけど、集団心理はいつだって民衆を狂わせる。

第０次世界大戦

　ロシア国内では日露戦争を機に民衆の不満が爆発し、第一革命に繋がりました。戦いを続けられなくなり和平交渉を受け入れますが、「負けてはいない。だって日本も続ける力残ってないでしょ？」と強気だったため、結局日本は多くの人命と費用を投じた割に賠償金をもらうことができなかった。それで今度は怒った一部の日本国民が日比谷公園で暴徒化することになったといいます（日比谷焼打ち事件）。

　結局借金は膨らんでるし、内政は荒れるし、やっぱり戦争って勝ったとしてもメリットが少なすぎじゃないだろうか。結局資源とか領土とか、もっともらしい理由をつけてはいるけど、元を辿ると単に引っ込みつかなくなっただけっぽい気がする。そんな理由で国民の命を犠牲にするんじゃねぇ！むしろ勝ったら勝者に●億円とか、なんでも願い事をひとつ叶えてやるとか言われてデスゲームをする方がまだ理解できます（それでも参加したくないけど）。

　もうひとつ注目すべきはこの時、日本とロシアの間を取り持ったのがアメリカだったことだと思ってます（ポーツマス条約）。アメリカはそれまでは割とアジアで存在感が薄かったけど、この辺りからじわじわ極東に干渉してくるようになった気がする。この功績でノーベル平和賞を受賞したセオドア・ルーズベルト大統領は、親日派だったからこの難役を買ってでたという美談がありますが、極東に自国の存在をアピールする意味もあったんじゃないかな、と。

　ちなみに、日露戦争のことを第０次世界大戦と呼んでいる歴史学者たちもいるそうです。日本とロシア、２国の戦いのようでいて実は他の国も水面下で繋がっており、それが第一次世界大戦で表に引きずり出されていったということなのかもしれません。

負の連鎖は回避できる？

　そうして歴史を振り返ってから改めて現代を見つめ直してみるとゾっとする。

　2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻を開始してからもう1年半が過ぎようとしています。何が一番怖いってもはや侵攻してるロシア側にもほぼメリットがないところ。プーチンの主張も二転三転している。だからこそ多くの専門家も困惑しているように思います。

　ただ、もうこの段階では勝って成果はなくても、負けたらどうなるかは予想できる気もします。おそらく日露戦争時のように革命が始まるんじゃないだろうか。だからプーチンは民衆に弱腰だと思われたら終わりだと更に意固地になっている印象。そもそも戦争が長引くと大体革命が起きて政府が転覆して指導者がひどい目に遭う国なのに、なぜ始めてしまったのか(日露は日本が始めましたけど)。自分は過去の指導者たちのようにはならないと思ったんだろうか。

　でも大体人も問題を起こそうとして起こすというよりは、精神的に追い詰められてそれしかもう道がないと思い込むのが原因ですもんね。国もそうやって自ら退路を絶って戦争へ突き進んでいくのかもしれない。我々人間社会でも大きな事件が起こると、大体加害者の悲惨な家庭環境とか歪むきっかけになった人間関係とかがニュースで散々取り沙汰されますが、じゃあ具体的に誰が、どの段階で、どのような言葉をかけてあげられていたらその人の心が解けて犯罪の道を選ぶのを止められたんだろうと毎回悩みます。もちろん対話が大事なのはそうなんだけど、もう話が通じないところまで行ってしまった相手をどう収めるかって本当に難しい。

　今、水面下で何が起こっているのか見えない部分が多いけど、各国もロシアが内部から崩壊するのを待ってる感じがします。刻一刻と人命は失われているのだけど、他国が干渉しすぎるとかえって被害が拡大してしまうから悩ましい。2023年6月にプリゴジンがモスクワに進軍したと聞いた時はついに来たかと思いましたが、なんだかよく分からないままに終わり、プリゴジンは国外逃亡。それでも一応プーチンの権力が弱まっているってことかなと思ったところで、自家用機が爆発してプリゴジンの死亡が確認されました。プーチン勢力はまだまだ健在ということなんでしょうか。また終わりが見えなくなってしまいました。

違う未来は来るのか

　もうひとつ、現代でこの頃を彷彿とさせる出来事といえば、日本とイギリスの急接近。特に2023年1月に締結された互いの国への軍配備を可能にする円滑化協定(RAA)は「日英同盟の復活」と各メディアで取り上げられていました。

　そういえばイギリスは太平洋の国でもないのにTPP（環太平洋経済連携協定）にも入りたがってたよなぁと思って調べたら、7月に正式に加入してた。いつの間に。当時は唐突に思えたけど、TPPの元々の加盟国11カ国中6カ国は、かつてのイギリスの植民地なんですね。やはり過去と現代は何かしら繋がっているんだな。

　『仲良きことは美しきかな』なんですが、まぁ過去を知っているとちょっと…どころか結構不安ではある…。相性は悪くないだろうと思うからこそ。TPPは今後台湾も参加を申請しているので、もし承認されたら中国と真っ向対立になるだろうし。加えてプーチンは10月に中国を訪問予定。どんどん対立構造があからさまになってきているのはきっと気のせいじゃない。

まぁ派閥を作り合うのはもうしょうがないことなのかもしれませんが…仲良くなれないならせめて静かに睨み合うだけに留まってくれないだろうか…。

日本は何ができるのか

　少し話は変わって、2023年5月には広島でG7サミットが行われました。日本人としてもすごく印象に残る瞬間だったと思います。私は特にホワイトハウスのアカウントから原爆ドームの姿を確認した時、色々な思いが巡りました。今のこの局面で各国の首脳が被爆地を訪れるのは非常に意味があることだと感じました。

　そこに突如ウクライナのゼレンスキー大統領が来ることになったのも大きな出来事でした。今回のサミットは世界に平和の大切さを訴えた一方で、ウクライナ側が各国へ武器調達などの協力を取り付ける機会にもなったのだろうから複雑です。

　でも日露戦争や日清戦争のように２国が第３の国で戦うケースは非難しまくれるけど(だからこそ巻き込まれた中国・韓国の怒りは凄まじいのですが)、ウクライナは防衛側なので、どんなに戦争をしたくなくても止められないですもんね。ロシアが撤退しない限り、武器を調達し続けざるをえない。ここが単純に「武器反対！」「軍隊反対！」って言えない難しさだと思います。攻めてくる人に対抗する武器やそれを扱う訓練はやはり必要だと思うから。

　でもじゃあ、我が国もどんどん武器を提供していくべきなのかというと、それもまた疑問が湧いてくる。今、日本からは「防衛装備移転３原則」により防弾チョッキやドローンなど殺傷力のない装備の輸出に留まっているけど、案の定、日本もそれを見直して、他国のようにミサイルやら戦闘機やらを提供していくべきではという意見をちらほら耳にするようになってきました。でも私はそこは絶対越えるべきではないと思う。やはり日本が戦争の加害も被害も経験した特殊な歴史的背景から「それだけは絶対にしません」と強い姿勢を取れる唯一の国だと思うから。

　ゼレンスキー大統領が広島で行ったスピーチで、私は特にこの部分が印象に残りました。

　日本には日本にしかできない支援がきっとある。本来ならかつての侵略者もかつての侵略された側にも寄り添えるポジションにいるんだから、もっとそれを利用すべきだと思います。しかも日本は独自のおもしろ技術や突飛なアイディアを生み出してきた国。そういう発想力やテクノロジーを欧米諸国と同じく武器に活かすのはもったいないですよ。どうしても武器を輸出したいなら「双方の人命を奪わない武器」を開発するぐらいの気概があってほしい。何言ってんのって思われるかもしれないけど、そもそも殺さなくても勝敗は決められるだろうって思うんですよね…。しかも戦争って憎しみに塗れた好戦的な人はごく一部で、大体は嫌々参加してる人たちじゃないですか。昔はまとめて殺す技術しかなかったんだろうけど、もういいかげんそうやって罪のない命まで巻き込むのやめませんか？ 戦争は絶対になくならないと言うのなら軍事技術はそっちに進化するべきなんじゃないかな、なんて最近考えます。

　毎度のことながら、何の結論も出ていない、ただ自分の思ったことを書いている世界史Noteですが、これ以上は長くなるので、この辺で終わっておきます。もちろん、私の意見が絶対正しいとも思いませんし、私の歴史の見方が正しいとも思いません。こういう見方もあるよ、と一意見として聞いていただければ幸いです。それではまた次回。次回はいよいよ第一次世界大戦についてかな。

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※第４回はこちらです。