見出し画像

カウンセリングの見立ての立て方

 カウンセリングをスムーズに進めていくためには、カウンセリング開始から10分程度で相談の全容とクライエントさんの人物像を把握した上で、問題に対する見立てを立てておかなければなりません。言わばカウンセリングの設計図のようなものです。

【カウンセリング中の流れ】
①傾聴(受容共感しながら相談の意図及び人物像を把握する
②主訴を確認
③不明点の確認
④理解の共有
⑤新たな視点の明示
⑥解決に向けた選択肢を提案
⑦クライエントさんの選択を力強く支援

前回ご紹介した上記の流れに沿ってご説明すると、①の時点で⑤~⑦の設計図がほぼできており、②~④は精度を上げる確認作業と考えてください。

この設計図がカウンセラーの理性を導いてくれます。以前ご説明した通り、カウンセラーは、目の前のクライエントさんに全心で寄り添いながら、頭の後ろの方でせっせと設計図を組立て、それを基にカウンセリングをハンドリングしていくという作業を同時に行っていきます。見立て無しでカウンセリングを進めるのは、地図を持たずに見知らぬ土地で迷子になるようなものです。1人ぼっちで迷子になる不安感と恐怖を想像してみてください。カウンセリング中に迷子になったカウンセラーは不安と恐怖で動揺し、その狼狽はクライエントさんに如実に伝わります。

◎見立てが無いままカウンセリングをすると……
悩みを抱え自己肯定感が下がったクライエントさん

カウンセラーの動揺を見て、傷付いた自尊心を補償するため無意識にマウントを取るスイッチが入る

カウンセラーを虐げることで一時的に気持ちを慰められる場所として、カウンセリングの間違った認識が刷り込まれる

依存関係に陥り、悩みの解決はおろか、状況悪化を招く可能性も

……というように、カウンセリングにおいて見立てが不可欠なものであることがお分かりいただけたかと思います。
それでは実際に、どのように見立てを立てていくかをご説明します。

【見立ての立て方】
①主訴を明確にする
②人物像を的確に捉える
③問題の原因を考察
④状況を別の視点から検証
⑤解決に向けた選択肢を全て洗い出す
⑥人物像に合わせたアプローチを構築

この中で最も重要なのが②であると私は考えています。
主訴が正確に把握できており、論理的にアプローチが組み立てられていても、②が間違っていれば何の役にも立ちません。問題を抱える②があるからこそ苦しみが存在し、②に合わせた方法だから問題を乗り越えられるのです。②が中心となることで自然と全体が組み立てられていきます。やはりカウンセリングは人と人とが向き合い共に取り組む作業であることが分かりますよね。

 相談開始から10分間のインテーク中に見立てを立てるのは、なかなかのスキルを要します。聴くことに集中し過ぎると依存関係に陥り、見立てに気を取られていると共感ができずクライエントさんは置いてきぼりとなってしまいます。ロールプレイトレーニングの際などには、人物像の分析を意識しながらやってみてください。身近な人物をこっそり分析してみると、意外な面が分かっておもしろいかもしれません。相手を深く知ることでより良い関係を育むヒントが得られますので、普段の日常の中でも楽しみながら学びを深めていけるといいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?