ネット空間は画一化に向かう?

本来タイトルは【読感】ゲンロン12ですが、これではわかりにくいので、内容をタイトルとします。

クリス・アンダーソンの『フリー』を巡って、無料が世界をよくするのかを論じたものでしょうか。

東浩紀さんは、座談会で、フリーを提唱したハッカー文化が、インターネットに期待した自由と多様性の世界は、コンテンツの画一化に向かっているとの危惧を述べています。ロングテールは収益化しないなど。

確かにフェイクニュースやTwitterでの程度の低い言い争いなど、ネット社会には幻滅することも多いです。一時、ブロックチェーンが国家を超えて、直接民主主義を実現するとか盛り上がっていましたが、最近は聞きませんね。

しかし、私個人の経験では、ロングテールは役に立っていて、例えば音楽のサブスクですね。これで、今までテレビやラジオなどで取り上げられるメジャーにいる音楽家やCD購入など初期費用がかかって、出会えなかった音楽人に、簡単に出会えるようになりました。これで好きになった音楽家が数多くできて、昨年知ったクラムボンは私の大事な音楽経験の宝物となりました。ほかodol、SCLL、角銅真実、青葉市子などなど。

音楽サブスクには音楽家からCDが売れなくなったと批判もありますが、アメリカのVulfpeckというバンドはレーベルもなくSNSなどで全て自前で宣伝したりと、低コストの運営でメジャーに登り詰めたバンドで、低コストだとサブスクでも収益があがることを示しています。クラムボンも途中から自らマイナーになって自前の事務所で、CDもライブで手売りするなど似たような試みしていますね。添春編のライブ映像化をクラウドファウンディングで実現しました。

音楽以外にも本で知った地衣類の存在に驚愕して、たまたまFacebookで地衣類ネットワークのコミュニティーに出会って、山本好和先生を中心に同好のマニアックな方達と、勉強会を開いています。これもネットのコミュニティが無ければ、一人本を読んで静かに知識が広がったな程度で終わったでしょう。

クラムボンと地衣類は昨年、出会ったものですが、私の生活を大きく変えました。クラムボンのライブに飛行機で遠征したり、アナログレコードを買ったり、地衣類の1人観察会をやって、地衣類ハンターになったりと。

なので、好奇心があってアンテナを広げれば、それに応えてくれるものがネット空間にはありそうです。

ここまで書きましたが、そういえば東さんは無料空間のことを言っていて、サブスクは違うのかな。いや、でも、サブスクは利用者は低額なのでフリーに近いと思うんですよね。

経済学者の飯田さんが、ネットで生き残るには、無料の世界で広告で収益を得るスケールが大きい大企業が有利で画一化に進み、小さな世界で多様性を維持するには有料の会員制という2つの方向性を示していたので、この点は合ってるのかも。フリーの世界で情報を得て、有料の会員制のクラブで情報を得たり活動をする。この組み合わせですね。

音楽でいえば、フリーに近いサブスクでロングテールにいる音楽家と出会い、その後はライブに行ったり、わざわざアナログレコードを買ったりして推し活をする。音楽家にとって収益になるのは会員制クラブのようなライブや配信、現物が大切なアナログ盤の販売とか。飯田さんの話は合っている気がします。

他にも、
座談会では、最近私が読んで感銘した柄谷行人の『世界史の構造』で、贈与経済の高度な復活の交換様式の話をどう読むかとか、別に寄稿している小川さやかさんの反自動化経済論など、面白かったですね。

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