【読感】人間の性はなぜ奇妙に進化したのか

ジャレド・ダイヤモンド1997年著の邦訳の文庫本で読みました。

面白かったです。人間の性、例えば、女性の排卵の隠蔽や閉経が他の動物と比較して特異的、男性は家族にとって役に立っているのか?など進化生物学的に、遺伝子を残す生存戦略から、検討しています。

26年は経っているので、どこまで今も通用する学説なのかは、わかりませんが、人間や動物の性について、ここまでまとめて進化生物学的に解説した本は知りません。ただ、人間では実験できないので、謎はなかなか解決じせん。奥が深いですね。

特に面白かったのは、『男は何の役に立っているのか?』ですね。狩猟採集社会で男は狩に出かけるが獲物は少なく、家族の生存のための経済的には役に立っていない。にもかかわらず地位が女性より高い。現代社会でも、ロクでもない男が多いので、女性がシングルマザーになったりして苦労していますね。合理的に説明できません。

狩の話では、可能性として家族を養うカロリー摂取には役に立っていないですが、部族のみんなに獲物を平等に分け与えるので、部族社会の団結を強める役に立っているのかもしれません。また、獲物を狩る能力の高い男性が、女性から選ばれるという遺伝子生存戦略にからんでいる?

関連して、部族社会は贈与経済だという論があります。前に紹介した小川さやかさんの現代アフリカのインフォーマルな零細自営業の人々の社会的なネットワークの研究で少し紹介されていたのですが。
実は部族社会の狩の男性集団でも、狩が上手い男性は、他の男性が引け目を感じないように、成果をわざと下げるようなこともしていると紹介されていました。
これはアフリカ零細自営業者社会の研究で、贈与が相手に負担にならないような仕組みと似た社会として取り上げたもので、遺伝子生存戦略とはまた違いますね。やはり社会的な団結の維持の方が強いのかもしれません。まあ、これは結論は簡単には出ないですね。

もう一つ、人間の女性だけが閉経した後も長生きするのか?これはどこかでおばあちゃん仮説とかって聞いたことがあります。
ジャレド・ダイヤモンドは、年老いて子供を産むリスク(出産で死ぬリスクが人間は高い)より、孫の面倒を見ることや、食べ物を集める能力で自分の遺伝子をもつ一族の生存可能性を高めるというのは納得できますね。

また、文字ができて5千年ぐらいで、それまでは口伝えでしか生き残りの知恵が伝わらなかった。そこに長老の記憶が役に立った。ある部族はサイクロンによる飢饉の危機を乗り越えたのは、過去5,60年前の似たサイクロンによる危機に、どのような食べ物を食べて生き延びたかの女性の長老の記憶が役に立ったエピソードは印象的です(沖縄県でも過去の飢饉のときに、毒のあるソテツを加工して食べて生き延びたソテツ地獄というのがあります)。

結論として、読む価値のある本ですね。

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