大学入試が高校と大学の接続を阻んでいる件。

千葉逸人准教授(九州大学)のツイートが、塾・予備校関係者と受験生の中で話題になった。
https://twitter.com/HayatoChiba/status/1100729592048799744
『【悲報】駿台、代ゼミ、北予備も同じ間違いで全滅。理系数学5番の軌跡Cを求めるとこ(結果はあってるが証明になってない)。我々数学者は変な計算テクニックや結果の暗記ではなく、ロジックの組み立て方を見てるので、そのように教えてくださいね。』

2019年・九州大学・理系学部・数学の入試問題についての話。最初は
https://twitter.com/HayatoChiba/status/1100374881705684992
『河合塾の入試解答速報(九大数学)間違っとるやんけ。他の予備校はちゃんとしてね。』
という言及。これを見て各予備校は解答速報を作り直した。
どういう「間違い」なのかは(数学の心得がある方だけ)前後のツイートを読んでください。大雑把にいうと「十分性」です。

ほとんどの大学入試は、解答例も採点基準も出題の意図も公開されません。
塾・予備校講師たちがあーだこーだ言いながら解釈したものが「解答例」として世の中に出回ります。
その解答が、出題者側の意図した解答と異なることは少なくないでしょう。
そんなとき、出題者である大学側はどう思っているんでしょうか。
「こういうことじゃないんだよなあ、こっちが求めてるものは…」

数学に関していえば、「大学受験の数学」と「大学で学ぶ学問としての数学」は乖離していると思います。
入試問題の中には高等数学の知識を背景としたものもありますが、その背景が大学からメッセージとして語られることはありません。試験が終わればそれは単なる「入試の過去問」になってしまい、その続きを大学の中で学ぶことはありません。
…それってもったいなくないですか?っていうか、そういう状況で「高大接続」って難しくないですか?入試と大学とが接続していない段階で。

入学試験は、できることならば、その解答例や採点基準とともに「この出題にこめた受験生への願い」も公表してほしいものです。
そうすれば受験生は、要求どおりにきちんと勉強して入試に臨むはずです。
そしてその学んできたことを入学後に直結させられるのが理想です。

現在は、出題者側の狙いを解読し、受験生に伝達するのが塾・予備校講師の仕事になっています。
出題の意図が明らかになり、入試の内容が入学後と確実に接続するようになれば、塾や予備校は要らなくなるでしょう。そのほうが、入試問題に余計な解釈が加わることもなく健全かと思います。
(それで僕の仕事が無くなったら…まあ仕方ないですね。)


追記:自分語り
僕は東大理Iから理学部に進学しましたが、自分の興味のもてる分野ではないと感じて「転学部」という制度を利用しました。
理学部の担当教授(当時は准教授)に
「いまは大学で学ぶよりも塾で受験数学を教えるほうが楽しい」
などと正直に話したところ
「そういったものはここ(東大理学部)では追究できないだろう」
という意見をいただきました。
けっきょく理学部を3年次で中退し、文学部の3年次に転入学しました。
必修単位の少ない文学部では塾のアルバイトばかりしていました。
…あの東大の入試の数学問題を究めたかったら、東大の中のどの場所に行けばいいんでしょうか。理学部でもなければ教育学部でも教養学部でもなかったようです。たぶん東大の中にはそんな場所は無いのでしょう。

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